【3日目】 A型のアンラッキーカラー:ピンク
映画も行きたいです。
最悪。
ほんとなら、映画館で本編前に流れる、近日作品の予告でも鑑ているころなのに。
あたしときたら、ベッドにころがりながら漫画アプリをはしごしてる。
約束もない休日に、一樹のやつに連絡いれてやるのもしゃくだと思ってたけど。こんなふうに意地をはっていても、しょうがない。しびれをきらせて、あたしのほうからメッセージを送ってやる。
映画は、もうつぎの機会にするとしても、ランチくらいいっしょにしようよ。
ところがだ。
あたしのほうから、折れてやったというのに。
彼からかえってきた返信メッセージは、そっけないをこえて、つきはなすようなものだった。
【ごめん。きょうは逢えない。
また、あしたちゃんと話すから。メッセージもできないけど、ゆるしてほしい】
は?
なに、それ??
もしかして、なにかたいへんな事故でもあったって言うの?!
できることなら、今すぐ電話をかけてたしかめたいところだけど。メッセージさえできない事態だと言うのだから、それは無理だ。
どんな状況かわからないまま、嫌な想像だけを頭のなかに描きはじめようとしてしまいそうになる、その寸前。
あたしは、ふと思いついて例の血液型占いをひらいてみる。
そこで、あたしが手に入れたものは。
彼のO型が、きょうの運勢最悪の血液型じゃあないことを確認した安心と——そして、もうひとつ。
あたしのA型こそが、きょうの運勢最悪の血液型なことを知った絶望だった。
そのふたつを同時に味あわされて。あたしは脳みそが、かたっぼに寄っちゃったみたいな気分になったんだ。できあがったすきまで、この事実がぐわんぐわん響いてる。
占いを信じるなら、彼は無事だ。それはほんとうによかったと思う。
でも、あたしのほうは?
彼の安全とひきかえに、あたしの最悪の運勢は、どんな不幸を運んでくると言うのだろう?
冷たい汗が、すっぴんのほおをつたうのを感じながら。あたしは、さっき一樹から届いたメッセージを読み返す。
これか! これこそが、あたしの最悪な運勢の切れはしか!
メッセージの返事がそっけないことや、用事ができて返信できないことなんて、いくらでもある。そんなことはわかってるもん。
だから、これはほんの切れはし。
切れめがつながる、そのさきをさがせば。もっとおおきな、本体である悲しいできごとにつづくのだ。
なんで? なんで、あたしたちこうなっちゃったの??
彼からのメッセージが、ほんとのところ、なにを意味するのか? そこんところは、なにひとつわからないままだけど。なんにせよ、きょうの運勢は最悪なのだ。ろくなことを、意味していないのはたしかだろう。
なにが悪かったのか、きのうまでのことを思いめぐらす。
まさか、きのうゲームで、あたしがタップして手に入れたアイテムが気に入らなかったから、なんてことはないわよね。
血液型占いなんて、おしつけたのがよくなかったのかなぁ?
そこまで考えて。
あたしは、もうひとつの事実を思い出して。確認のために、ふたたび血液型占いをひらいた。
一樹のO型ラッキーカラーは紫で。
やっぱり、あたしのA型の運勢は最悪。ラッキーカラーは赤。そしてアンラッキーカラーは——記憶どおりのピンク!
あたしのスマホケースとおなじ色だ。
あたしは無言で、スマホからケースをはずすと。顔を枕におしつけるようにして、ベッドにつっぷした。すっぴんだから、涙目でも枕を汚すこともない。
スマホのケースをいまさらはずしたことで、運勢が好転することなんてありっこないと思いながらも。彼からの来るはずのないメッセージを期待して、スマホを手にとるあたしは、ほんと馬鹿だ。
さっきまで、顔を埋めていた枕のカバーもピンクだと気づくには、もうちょっと時間がかかった。
ほんと馬鹿。
ていうか、買ったDVD鑑なきゃ(汗)