【2日目】 A型のラッキーカラー:オレンジ
無課金勢です。
※noteにも転載しております。
あしたは、祝日。
きょうこそ、映画にいく予定をたてるぞと、はりきっていたあたしだったけど。一樹は、やっぱり例のゲームに夢中なようで、スマホをいじっていた。
あたしがひょいと覗きこめば、きのうとおなじデイリーボーナスの画面に、カプセルがひとつ、ころがってくるところだった。
でも、ちがうのは。
ころがってきたカプセルの色。きのうは黒色だったカプセルが、きょうのはオレンジ色なのだ。
あれ? ひょっとして、この色がレア度と関係あるのかな?
尋ねようとしたあたしだったけど。一樹はカプセルをひらくためのタップもせずに、祈るような表情をしながら、なにやらぶつぶつ言っている。
「きのうのは、回復アイテムガチャだから黒で。
今日のは、素材アイテムガチャだから、色が違うんだ。
曜日ごとに、ガチャが変わるわけ」
あたしの視線にようやく気づいて、ありがたくもない説明をくれた彼だったが。まだ、カプセルをひらくためにタップする思い切りがつかないらしい。
そんなの早くおわらせて、映画にいく話をしようよ。
ため息をつくあたしだったけど、こんなときの一樹には、なにを言ってもムダだって、よく知ってる。
映画は、明日もおあずけかなって思いはじめたあたしだったけど。映画って言えば、あのアニメ!
あたしは思いついて、ピンクのケースのはまったスマホで、アプリをひらく。
原作漫画の公式アプリには、ヒロインの占い師による血液型占いのコーナーがあって。よっつの血液型にそれぞれのラッキーカラーと、その日いちばん運勢の悪い血液型だけに、警告の意味でアンラッキーカラーを教えてくれる。
そして、きょうのあたしと一樹のカラーは……よし!
「ねえ、一樹。
それ、あたしがタップしてみていい?」
突然のあたしの申し出に、難色を示すと思われた彼だったが。
「……べつに、いいけど。
なに? ゲームに興味あるの?」
自分でタップすることに、とくにこだわりはなかったよう。意外なほどかんたんに、あたしにそれを譲ってくれた。
さあ、あたるもはずれるも、なんとやらってやつだ。
でも、この場合のあたりはずれは、ガチャの話じゃあない。
漫画の公式アプリのなかのコーナー。その血液型占いのほうなんだ。
あたしのA型はラッキーカラーがオレンジ。
ガチャのカプセルとおなじ色。
血液型占いが、もしあたるなら。
一樹がタップするより、あたしがタップしたほうがいいアイテムがもらえるはず!
あたしのタップで、カプセルが割れて。
そこから出てきたものは——。
「……レア」
微妙な表情を浮かべながらも、彼のそれはけっして落胆ではないことを見て、あたしはひと安心。
まあ、はずしたとしても、それはあたしのせいではないんだけど。そしたら、悪いのは血液型占いだから。
まだ、難しい顔をしている彼に、この占いのことを話すと。腑に落ちたような、落ちていないような、さらに難しい顔になりながら。彼もあたしといっしょにダウンロードしていたのに、ほったらかしだった漫画の公式アプリ。じぶんもひらいて、血液型占いのコーナーをたしかめはじめた。
「ねえ、もういいでしょ。
それで、あしたの祝日なんだけど。これのアニメの映画——」
これで、やっと話がすすむと期待したあたしだったのに。
一樹は、またスマホをいじりながら、なにやら考えこんでしまっていた。
結局、この日は昼休みもこんな感じで。
あたしのほうに、かたづけなきゃなんないことが残ってたから、帰りがべつべつだったってのもあったし。
映画にいく約束は、またしてもできないまま。
あしたの祝日をむかえることになっちゃったんだ。
ほんと、むかつく!
せめて、広告はちゃんと流そうかな。