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⑴『天才たちの墓場』
⑴『天才たちの墓場』
㈠
俺はいつからか、死後、共同墓地に入りたいと思うようになったよ。もちろん、俺は死にたい訳じゃない、死にたいとも思わない、ただ、もしも死の刻が来たら、俺は共同墓地に入りたい。それも、火葬ではなく、土葬で入りたい。
㈡
無論、天才たちの墓場に入れるとは思ってもいない。ただ、こういう空想を巡らしていると、天才と凡人と狂人に、どういう差があるのだろうと、思い始めたのである。死を前にして、みな同じ死体じゃないか、と考えるのである。
㈢
自分が天才だとも思わない、世に出て、活躍している小説家だったら、天才のうちに入るのだろうか。分からないな、ただ、単純に、そんな風に思うんだ。少なくとも、天才たちの墓場、というものがあるなら、生きている間に、見て置きたいものだよ。