小さな変化
私の名前は小山内 茜。ヒロインになるべく日々精進しております。
前回は親友ちゃんをイケメン君に惚れさせる為に作戦を実行しましたが、見事に不発に終わってしまいました。しかし、私には落ち込んでいる暇はないのです!
早速次の作戦を実行し始めたのです!
季節は夏。蒸し暑い教室で私はイケメン君と親友ちゃん、そして仕方ないので当て馬君を集める。
「ねぇねぇ、今度みんなで海行かない?」
「海!いいね!楽しそう!」
親友ちゃんが楽しそうに言う。
それに続いて2人も頷く。
そう私は、4人でどこかへ出かけるイベントを作ったのだ。
ここで親友ちゃんとイケメン君の距離が縮まれば一気にラブコメに路線変更するはず!
当て馬が居るのはちょっと邪魔だが、今はこいつがいないとこの海イベントが発生しないと踏んで誘った。
まぁこいつは私がなんとか話しかけ続けてイケメン君に近寄らせないようにすれば大丈夫だろう。
私達はその後、海へ行く計画を話を続けたのだった。
いよいよ、当日。
私は、集合場所の駅に一番に着いた。
その後、徐々に人が増え、全員ちゃんと集合時間に間に合った。
電車に乗り込み、海を目指した。
みんな呑気に「海楽しみー」なんて言っていた。
私は海を楽しむなんて考えは微塵もなかったが、みんなに合わせて「楽しみだね」なんて言っていた。
そんなことを話しているとあっとゆう間に海に着いた。
海に着くなり私達はパラソルを立てる場所を探しし、みんなで組み立てた。
ちなみにここまでなんのイベントも起きていない。
しかし、海の醍醐味はここからだ。
私達はみんなで海に入る。
さぁ、なんかイベント起きろ!!!
しかしそこら小一時間、私の期待とは裏腹になにも起きることはなく、みんなで海を楽しむだけだった。
海にまで来たのになにも起きないとは.....。
私は落胆し、休憩の為に海を1度出たのだった。
私がパラソルの下で休憩していると、ふとみんなが戻ってきて、ご飯の話になった。
「そろそろお腹空いてきちゃったからなにか買ってくるけどみんなは何が欲しい?」
親友ちゃんが私達に聞いてくる。
「なら、僕も着いていくよ、1人じゃ持っていくの大変だろう?」
イケメン君が言う。
私はまさかの2人でご飯を買いに行く展開に驚く。
これは恋愛に発展するチャンスなのでは...!?
私はあくまで平常心を装ってお礼を言い。
2人を見送る。
これは、もしや物語が大きく変更させつつあるのでは!?これは大きな進歩だ、来て損はなかった。
私はいま、達成感で胸がいっぱいになっている。
「今日は、ありがとう」
そんな私を他所に当て馬君が話しかけてくる。
「?どうして急にお礼?」
「いや、僕恥ずかしい話、みんなで海に来たの初めてだから...嬉しくて...誘ってくれてありがとうって意味のお礼」
意外だな、海なんて友達と行く場所の定番だと思っていた。そんな人もいるなんて。
「へぇ〜、でも喜んでくれたのなら誘って良かったよ!」
「うん、すごく楽しいよ、小山内さんは楽しかった?」
私は心臓がズキンと傷んだ。私は今日、ずっとイベント発生の事しか頭になかった。ここに誘ったのだってそうだ。みんなと海を楽しむなんて微塵も考えていない。
こういう所なのかな、私がヒロインになれない理由って。純粋に何かを楽しんだり出来なくて、いつも自分がどう見えてるかとかばかり気にしてた。
目の前にいる、本当に楽しそうな当て馬君の顔を見ると私が惨めに感じる。
たまには純粋に何かを楽しんだりする事もいいかな.....。
自分のあるべき姿とか全部忘れて...。
「うん!でもまだまだこれからだよ!もっと楽しくなるからね!」
「うん!!あっ!2人が戻ってきた!」
そういい、イケメン君と親友ちゃんを指さす
「ほんとだ!おーい!」
私は2人に向かって手を振る。
ちなみに2人の関係に変化はなかったようだったが私は特に落ち込む事もなかった。
私達はその後、2人の買ってきてくれたご飯を楽しく食べた。
「ねっ!ご飯食べ終わったらさ、今度はビーチバレーしない?」
私がみんなに提案する。みんなはいいねーなんて言っている。
そうして私達はご飯を食べ終わった後はみんなでビーチバレーをしたり、水鉄砲で遊んだり、スイカ割りをしたりもした。
どれも初めてやった訳じゃないのに新鮮に感じて、楽しかった。ふとイケメン君が私に問いかける。
「今日はやけに元気だね?いい事あったの?」
「えっ?いつも元気だよ!どうして?」
「いや、変な意味じゃないけど今日はいつもより楽しそうな顔してるから...僕の気のせいかな」
.....そっか、イケメン君はなんとなく気付いてるんだ。
いつも私が、楽しそうな演技をしている事に.....。
「...もしかしたら、今日は特別に楽しからかな」
私は心の底からの笑顔で答えた。
楽しい時間はあっとゆう間に過ぎると言うが私は昔から迷信だと思っていた。しかし、今日は初めてそれを実感した。気が付けば、夕方になっていてもう帰る時間になっていた。
私達は、「そろそろ帰るか」というイケメン君の言葉でぞろぞろ身支度をすませて、電車に乗り込んだ。
私は電車に揺られ、ウトウトしているうちに目的の駅へ到着した。
目的地に着けば、そこからは別々の道で帰る。
イケメン君と当て馬君は家が近くなので2人で帰るそう。
「じゃあ、また学校で!」
イケメン君がそう言うと続いて当て馬君が、
「じゃあね、小山内さん、早坂さん」
「またねー」
私が2人にそう言うと親友ちゃんも続いてまたねと返す。
2人の姿が見えなくなった頃に親友ちゃんも、
「じゃあわたしもそろそろ!またね、あねちゃん!」
「うん!またねー!」
私がそう返すと、親友ちゃんは人波に消えていった。
!?!?!?
そう言えばさっき、当て馬君が早坂さんって呼んでたけど.....もしかしてあれって親友ちゃんの事!?
私でも知らなかった苗字をなんで知ってるの...?
この物語上、親友ちゃんは苗字が明かされて無い、どちらかと言えばモブキャラだったはず.....。
これって、親友ちゃんがこの物語のメインキャラになったってこと.....???
でもなんで!?何もしてないし、なにも起こってないんですけど!?
でもこれはこの物語が大きく変わってるって事だよね.....。
私が思っているよりも小さな変化でこの物語は変わるのか.....?
原因不明ではあるものの私は1歩だけ前進した。