正しいラブコメの始まり?
私の名前は小山内 茜。
高校2年生。
そして、この世界がフィクションの物語だと分かっている。
どんなストーリーかまでは分からないけど私はきっとこの物語のヒロインポジションだと自負している。
それは今までの人生を振り返れば明らかだ。顔は凄く可愛いし、スタイルもバよく、どんなに食べても太る子はない。家はそこそこ裕福で勉強も運動も完璧。何やらせても人並み以上にできる。学校1のモテ女。でも女子の友達も多い上、虐められた事もない。考えてみたら上手く出来すぎていた。
きっとこの世界は誰かの創作の世界で、私はその物語の登場人物の一人。
私の予想だとこの物語はラブコメだ。
なぜなら、私には男の幼馴染がいる。しかもクラスでも人気のイケメン。
私のスペックに釣り合う男は彼しかいない。
きっと私はこのイケメンとべたな恋愛をするんだ----
「よっ!茜ちゃんおはよう!」
プロローグが終わったところで後ろから声をかけられた。
もちろんその相手は例のイケメン幼馴染雲野 大星。
爽やかで、誰にでも優しくいつも笑顔。幼稚園の頃からの幼馴染で顔のランクはもちろんS。完璧王子様だ。ちなみに私は今のところ特にこのイケメン君の事は好きでは無い。そのうち好きになる相手だ。
そんなイケメン君の後ろからひょっこり二人目の男が顔を出す。
「おはよう、小山内さん」
彼は、中学からの友達の涼本 紘人。通称、当て馬君。
イケメンのライバルになる予定の男。大人しくて真面目な男子。顔はまあこの世界だと普通くらい。
特にモテるわけじゃない。多分私の事が好き。だってイケメン君と一緒にいるといつも邪魔してくるし。
まあこれもラブコメのあるあるだ。なにもおかしなことはない。
「2人ともおはよう!」
私は可愛く首を傾げて、笑顔で2人に返事する。
その後は対して代わり映えのしない会話を繰り広げながら学校まで登校する。
その道中で周りの学生達から、美少女だのイケメンだのお似合いカップルだの口々に言われた。
「相変わらず2人は人気者だね、お似合いだって言われてるよ」
当て馬君が言う。
私は当然でしょと言う訳にも行かないので可愛く、
「大星君はともかく私はそんな事ないよ〜、それにただの幼馴染だし〜」と返す。
イケメン君も「そうだよ、茜ちゃんにも失礼だろ!」と返す。
このような会話もあるあるだ。当て馬君はきっと私達がお似合いカップルだと言われてるのが悔しいんだろう。
当て馬君はからかうようにイケメン君と話を続けている。私はそれを困ったような笑顔で見守る。
こんな感じの会話を繰り広げているとあっとゆう間に教室に辿り着く。その後は物語ではあまり出てこない授業を受けるシーンに入る。特に特別な事が起きる訳でもないので割愛される事が多い気がするのは私だけだろうか。
この物語は恋愛物だし、早くイケメン君と恋愛に発展して行かないと行けないから勉強してる場合じゃないしこちらも助かる。どうせ勉強しなくても頭いいし。
そんなことを考えている内に割愛され放課後にになった。
「あねちゃんいっしょに帰ろー」
私をあねちゃんと呼ぶこの子は親友のひまりちゃん。
この子は普通に可愛いが特別モテるでもない、平均的な女の子だ。
私はもちろん可愛く了承して下校することになった。
親友ちゃんと帰ろうと門を出た瞬間私のスマホが鳴る。相手はイケメン君からだ。
「少し大事な話がしたい。君にしか出来ない話なんだ。今から来てくれますか?」
これはきっと早すぎるとは思うが告白イベントだ。
もちろん行くに決まってる。
私はイケメン君に了承のメールを返した。
そして私は親友ちゃんに「ごめん!教室に忘れ物しちゃったから取りに行ってくるね」とだけ行って足早に指定された人気の少ない教室へと向かっていった。
指定された場所に着くとイケメン君が少し緊張したような表情で待っていた。
「ごめんね、急に呼び出したりして」
「全然大丈夫だよ、それより話って何?」
来た!絶対告白されるやつだ。私が少し身構えてイケメン君の言葉を待っていた。
「あっ、あのね、いきなりこんな事言われるなんて迷惑だと思うけど.....実は、僕、ずっと前から...」
絶対好きって言われるやつだ。
「涼本君の事が好きなんだ」
時間が止まったように感じた。
当て馬君の事が好き.....??
それってまさか.....ここはBLの世界ってこと...?
そしてヒロインは私ではなく当て馬だったの...?
じゃあ私はBLによくいる、主人公の隣にいる可愛い幼馴染で唯一主人公の思いを知っていて、恋の後押しをしたりするサポート役ってこと!?
あの最終的に自分も実は同性愛者で女とくっついたりするおまけ程度の百合枠なの!?
私はとにかく目の前のイケメンに何か言わないとと思い言葉を繰り出す。
「へぇー、大星くんって紘人くんの事が好きなんだ〜知らなかったな〜」
「...引かないの.....?」
イケメンが不安そうに聞いてくる。
「もっ、もちろんだよ!友達でしょ!」
私は必死で言葉を紡ぐ。
「よっ、良かった〜、僕、こんな気持ち初めてだったからどうしたらいいか分かんなくて...誰かに相談したくって.....」
「ぜ、全然引いたりなんかしないよ〜、私で良かったら全然相談に乗るしー」
何を言っているか自分でも分からない。
ぶっちゃけ引いたわーとか言えば状況は変わるのか...いや人間関係が悪化してしまうだけか.....。
私は目の前のイケメンの恋を応援する以外選択肢が無かった。
「ありがとう!!ほんとに茜ちゃんと幼馴染で良かった!!時間取らせちゃってごめんね、あっ!今からどこか行かない?お礼に奢るよ!」
「ごめんね、今日は早く帰る予定だからまた今度奢ってよ!」
本当は予定なんてないのが頭を冷やす時間が欲しくて断ることにした。
「そっ、そっかぁー、余計に時間取らせてごめんね、じゃあまた学校で!」
「うん、またねー」
私はいつもの笑顔でイケメンを見送る。
イケメンの姿が見えなくなった後私は膝から崩れ落ちた。
これから私はどのポジションでやっていけばいいの?私がヒロインになる事は不可能なの?
もう、端から2人を見守る事しか出来ないの?
もし、アクションを起こしたとしても私はヒロインになれないの.....?
...........いやまだチャンスはあるはず、この物語はただのBLものではない!
そんなの私が許さない!
私はヒロインである、私自身が大好きなんだ!
だからそのポジションが欲しい!!!
絶対可愛くて完璧な美少女ヒロインポジションになってやる!