夏休みの憂鬱
『重力、そして地上』
人生ゲームのルーレットが
ずっとずっと止まらずに
むしろどんどんと加速して
やがて自身の遠心力に耐えきれず
どこか彼方へ飛んでゆく
空気に呑まれて定まらず
大気に揉まれて更に飛ぶとぶ
ただいつかは地上に戻って
新たな指針を宛がうのだろう
風もいつかはやむのだし
質量はどうも分からないが
それは確かな重さを持っている
『数学的詩(2)』
・当たり前のことだが
平均値が中央値とは限らない
平均に入れば安心する人種も
実は一人ぼっちなのかもしれない
『茜色の懐古』
【茜色の懐古】とは────
例えば、最後の花火線香が落ちたところに拡がるあの一層の闇、あるいは「私ならどう登るだろう」と途方もなく考えたあの峰雲の白さ、そして異形の夏休みを過ごす私の青染む孤独に投与される、
────ただ一つの麻酔。
『蔓延Ⅷ』
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『2020,8,15』
鑢と薬を飲み違え
昨日はとっても美しい
ねえねえ後ろの正面だあれ!
撒き餌で鳩を誘き寄せ
明日もいかさま麗しい
さあさあ後ろの正面だあれ!
殺菌された人々は
今日をゆめゆめ疑わない
じゃあじゃあ後ろの正面だあれ?
かごめかごめ
籠の中の鳩はいついつ出やる
静かな日々に人が人を統べった
後ろの正面、ワタシたち。
【おまけ短歌】
*縁石を歩む子供の綱渡り高く聳えし峰雲を背に
*夜蝉鳴き独り寝床にただ横臥屈葬如き我が身は閑
こんにちは、汐月です。ユーザー名を『語り手』から変更させて頂きました。これからも、よろしくお願いいたします。