表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/56

名付けとルール

「という訳デ反対1・未回答3・賛成その他全員デ、小宮山の名前が(なな)()に決定しましタ」

教壇の前で、クラス委員の杉内(すぎうち)がそう宣言するとまばらに拍手が起こった。

「よかったやん、小宮山君」

「よくねえよ……」

俺はかろうじて声を絞り出していた。

「どうしタ?何か不満があるのカ、七志」

杉内が教壇の前から話しかけてきた。

「さっそく、使ってんじゃねえよ……その反対1票が俺と分かってて言ってるのか?」

「ああ、そうなノ?」

杉内はわざとらしくとぼけた。

「……ネーミングもそうだけど、それ以前になんでクラスが俺の名前決めてるんだ?!」

杉内の反応に苛ついて、声が一段大きくなった。

「ン?そりゃあ……なんだったケ、斎藤(さいとう)

「そこでぼくに振るの?えーっと……まぁ、便宜上名前がないと不便だからね」

「別に名字だけでなんともなるだろ?このクラスには俺と同じ名字はいなかったはずだ」

「まぁ、僕らからすればそうかも知れないけど」

斎藤は苦笑した。

「なら、こんな事をする必要があるのか?」

「あるんだロ」

杉内は気のない言葉で断言した。

「いや、なんでだよ!俺の話聞いていたのか!?」

「ダって、この議題を持ちこんだ奴がどうしても必要ダって」

「……だったら、初めにそいつに振れよ。誰なんだ?」

「誰だっタっけ?」

俺はいますぐに杉内に殴りかかっていいか真剣に悩んだ。

「は、はい……」

幽霊の女子、今江(いまえ)が遠慮がちに手を上げた。

「あ、そうだっタそうだっタ。幽璃(ゆうり)が昨日提案したんだっタ」

「本当か、今江?」

「う、うん」

「俺の名前を決めなきゃいけない必要性ってなんなんだ?」

今江は俺の目を真っすぐ見て言った。

「名前は存在を繋ぎとめるのに強い力を持っているから」

「……はい?」

「勿論、なくても何とかなるけど、名字だけだと弱いから。それに……」

「ま、待て待て、何を言ってるのかさっぱりわからない。」

「あ、受け売りそのままで話したから、分かりづらいよね、ごめん。えっとつまり、名前があったほうが消えにくいって事だよ」

幽霊というより電波じゃないかと思ったが、口には出さないほうがいいだろう。

「えっと、言い方の問題じゃなくて、言ってる事自体が分からないんだが」

俺の言葉を聞いた今江は、口を半開きにして唖然としていた。

「え……え?『ルール説明』受けなったの?ちゃんと聞かなかった?」

「『ルール説明』?なんだ、それ?俺は記憶を失くす前の事は何も憶えてないぞ」

「違うよ!その後の話……え、まさか……」

今江は急に口をつぐみ、何かを考え始めた。

「今江?どうしたんだ、急に」

「隠してる訳でもとぼけている訳でも……ないんだよね?」

「あ、ああ…俺は何も隠してない。何も分からない。だから」

口にしたら、戻れないような気がした。

でも、戻る方法なんて最初からなかったと思う。

「……教えてくれ」

「七志くん、君は……」

躊躇うかのように今江はそこで言葉を切った。

一瞬だけ、俺の目をみて吐き出すように言った。

「死んでるんだよ、1週間前に。今の君は幽璃と同じ幽霊ななんだよ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ