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妹と妹?と性別不明

駅に着くと僕は学校に向かって歩き出した。

……あの人に会えるだろうか?


何故か、明石兄妹に挟まれ、俺が真ん中の状態で帰路についていた。

俺は安請け合いした事を激しく後悔していた。

明石…明石翼の見た目が見た目だけに端から見れば両手に花とも見えなくもないが、冗談じゃないと言おう。

会話が全くなく、大変気まずい。

その明石翼が目でチラチラと合図を送っているが、こんな空気の中で出来るものか。

「何か用があるんじゃないの?小宮山先輩まで連れて来てさ」

明石渚の口調は若干、苛ついていた。

「え、や……その……な……こ、こみ」

そんな目で見ないでほしい…

「私は翼!アンタに聞いてんの!」

「え……えっとな」

妹が相手で強気に出られないのだろうか?

いや、出られないから、俺に頼んだのか……

「第三者として判断して欲しいって言われたんだ」

え、と言った顔で明石翼は俺を見た。

「……どういう事ですか、先輩?」

「兄を呼び捨てにする妹はどうなのか、ってさ」

まぁ、間違った事は言ってないだろう、多分。

「え、そんな事……ですか?」

そんな事と言われても、明石翼はそうは思ってないから俺が呼ばれのだ。

「実際どうなんだい?」

「……年の近い兄弟では少なくないと思いますが」

「君自身もそう思うのかな?」

明石渚がこちらを見た……『君』はまずかっただろうか?

「違和感はあります。でも……」

明石渚はチラっと明石翼を見た。

「それ以前の問題です」

「へ?」

我ながら間抜けな声が出た。

「小宮山先輩だって知ってるでしょう?いや、知らないでしょう?」

「何を、かな?」

「決まってるじゃないですか!」

明石渚は明石翼を指差した。

「わ、ワイ?」

「翼、あんたはどっちなの!男か!女か!」

明石翼は身体をビクリと震わせた。そして、俺は言葉を失った。

「両親と本人しか知らないのにどうやって呼べばいいのよ!それがアンタの超能力だか何だか知らないけどそれさえ分かれば何とでも呼んであげるわよ!このエセ関西弁!」

なんなんだ、この展開は……ていうか口調のこともツッコむんだ……

「て、え?超能力?」

「あれ言うてへんかったっけ?ワイ、超能力者で男にも女にもなれんねん。

まぁ、今更驚くようなことでもないやろ」

「…………」

普通ならおかしいだろうというところだが、俺は既に幽霊やロボット、魔法使いやらが教室……いやこの街に当たり前のようにいる事を知っている。

異常というならこの街そのものが異常だ。

「そんなのどうだっていいわよ!」

「せ、せやったら、お兄ちゃんと呼んでや」

「……男なの?アンタ」

「そ、それは言われへんけど、取りあえず、な?」

「……日替わりで女子と男子の制服ローテするの辞めたら考えてあげる。女の時にそう呼んだら私に変態の兄がいるみたいじゃない」

「堪忍してや……どちらかのイメージに固定したら色々まずいねん」

「じゃあ、なんで兄と呼ばせようとしたのよ」

「いや、そっちのほうがポイント高いんちゃうかな…って」

なんのポイントだよ……

「は?」

なにかが、切れる音が確かに聞こえた。

「……そんな理由で?」

冷たい声だった。

明石翼は俺の背中に隠れた。

「こ、小宮山君、助けてや!」

俺は目を伏せ、明石翼を見た。

「……明石、お前が悪いよ」

半ば死刑宣告だった、明石翼がなおも俺に縋りつこうとするのを明石渚が押さえた。

「帰って、お話、しようか、翼」

「あ……う」

俺は明石を見捨て、一人で帰ろうと二人に背を向けた。

「な、渚……さん」

「なに?」

「せめて一回ぐらいはお兄ちゃんて言ってや、それで諦めるから」

「まだ言うか!」

「おにいちゃん?」

そう言ったのは明石渚でも明石翼でもなければ、もちろん俺でもなかった。

俺は声のしたほう、俯きがちだった視線の前を見上げた。

俺の目の前にいたのは大きな旅行カバンを持ったワンピースの少女だった。

少女は俺を見つめていた。俺は頭の中がぐるぐる回る錯覚に陥った。

少女は俺に旅行カバンを引きずりそうになりながら歩み寄るとにっこりと笑った。

「やっぱり、おにい…小宮山さんだ!」

口の中が異常に乾く、声が出せない。

「僕、貴子です!後藤(ごとう)貴子(たかこ)です!」

一人称が『ワイ』の奴がすぐそこにいるのだ、今更僕っ娘に驚きはしない。

タカコ……ゴトウタカコ……と頭の中で反芻(はんすう)してみた。結果は変わらなかった。

「小宮山さん?どうしたんですか?顔色悪いですよ?」

少女はさらに俺に歩み寄った。

言ってはいけない言葉だろう、だが言わすにはおれなかった。

「君は……誰だ?」

少女の旅行カバンがドサリと落ちた。


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