コミュニケーション不足と化け物
「駄目だ。それは出来ない」
貴子には特に何らかのリアクションは起こさず、ただ、瞳に落胆の色を浮かべた。
「小宮山さん……そうですね、ご迷惑ですね」
ごめんなさいと言わんばかりに貴子は頭を下げた。
そんな態度をとられるとこちらが申し訳ないような気持ちになる。
かと言って、今更、やっぱり泊まっていけなんて言えるはずもなかった。
「迷惑って言うか……そういうの、拙いだろ、やっぱり」
「そう……ですか?」
「そうですかって……そりゃ、そうだろ。俺が同性だったなら……とも、かく?」
何かが頭に引っかかった。
「小宮山さん?」
同性……?
「あ、そうか。貴子、学校で友達は出来たか?」
と、口にしてなんだか間抜けな気がした。
要は学校の友達で寮以外に住んでいる友達に泊めてもらえばいいと思った。
しかし、転校初日でいきなりそんな……
「はい、出来ました。同級生の友達が」
出来たんかい!?
「そ、そうか、その子は女の子か?」
化け物か、こいつは。
「はい」
そう、コミュニケーション能力の化け物。
「その子は寮以外で暮らしてるか?」
俺にはとても出来ないそんな真似は……
「この街で生まれ育ったって言っていたのでそうかと」
……出来るはずがない。
「よし、じゃあ、その子の家に泊めてもらおう」
俺には友人がいないみたいだから。
「えっ」
一週間程の記憶しかないが、俺に友人という人間は一人もいなかった。
「俺の部屋に泊るよりは問題はないはずだ、世間的に」
所謂、対人スキルというものが致命的に低いのだろう。
「いや、でも、そんな……」
だから、貴子がいなければ消えていた。
「そうするしかないと思うんだが……それとも寮に帰るか?」
言わば、貴子は恩人だ。
「……すみません、我が儘ばかり言って」
恩人だからこそ、大切に慎重に扱わなければならない。




