変な友人と妹論
僕は、電車に揺られながら写真を眺めていた。
写真を鞄に直すと、僕は腕時計に目をやった。
目的地に着くまで後、2時間程だろうか。
僕はそれまで、窓から景色を眺める事にした。
昼休みに入ると、俺は今朝コンビニで買ったカレーパンを出した。
言うまでもなく、俺の昼食である。
袋を開け、かじりつこうとした時、明石に声をかけられた。
「小宮山君!ちょっと話聞いてくれへんか?」
「え?えーと、飯食いながらでいいなら…」
「助かるわ!ワイも昼飯もってくるよって、待っといてんか!」
「あ、うん」
そう言いつつも、俺は無意識にパンに齧りついていた。
俺が一口目を咀嚼しているうちに明石は弁当を持って、俺の前の席(元々、そこにいた生徒はすでに食堂に向かっていた)をこちら側に向けて座った。
「いただきます」
俺は自分もいただきますを言い忘れていた事に気付き、明石に続いた。
明石は弁当を一口食べたところで、俺に向き直った。
「なぁ、小宮山君」
「うん?」
「よくさ、妹おらん奴が妹欲しいとか、姉おらん奴が姉欲しいとか言いよるやろ?」
俺自身にはあまり記憶になかったが、特に否定はせず曖昧に頷いた。
「あれさ、どう思う?」
「え?さ、さぁ?特に何とも思わないな。何となくそうなんだってなる」
「さよか……でも、よう言うやろ?そんなん姉や妹おらんからそんな事言えるねんって」
「ああ……実際にいる人間はよくそう言うよな」
「せや。それでそう奴はアニメや漫画におる姉、妹キャラはありえへんとかいうやろ」
「うん」
「でも、ワイはこう思う。なに寝ぼけた事言うとんねん!って」
「あ、明石?」
「お前らは、実際におるもんや思ってアニメや漫画見とんのか!って」
「そ、そうだな……」
「そういうのに出てきよるのは大抵理想の姉、妹やねんから、現実と違うのは当たり前やろ!」
明石ってこういう奴だったんだ、とその時気付いた。
「一番アホかと思うんは、姉おって妹おらん奴が妹欲しい、妹おって姉おらん奴が姉欲しいって奴や」
「ああ、それはなんとなく分かる」
「やろ?姉が自分より年下やったら、妹や。妹が自分より年上やったら姉や。
多少立場は変わるやろけど、根本的なもんは変わらん。
自分と同じ両親から生まれんねんから分かるやろ。
姉やから甘えれる訳でもなかったら、妹やから“お兄ちゃん”と呼んでくれる訳やない!
呼んでくれる訳やないんや……」
俺は急に語気が弱くなった明石を見た。
「明石……?」
「そうやねん、小宮山君。ワイの妹…お兄ちゃんて呼んでくれへんねん…」
「そ……そうか、というか……」
「せやからな、小宮山君!協力してくれへんか?」
「協力って……何を?」
「説得や!ワイの妹説得してくれ!ワイを“お兄ちゃん”て呼ぶように」
「……俺が?なんで?」
「小宮山君、理詰め得意そうやん」
「いや、イメージで言われても」
「せやから、放課後頼むで!」
「あ、おい!」
明石は俺の制止も聞かず席を立った、弁当はいつの間にか食べ終わっていたようだ。
俺はというと二、三口しかカレーパンを食べておらず、思わず溜息が出た。
「というか……あいつ男だったんだ」




