流刑姫のセカンドライフ
発作的に思い浮かんだ設定のまま書きました。続きが思い浮かべば、別に連載として投稿予定です。
晴れ渡る青空、流れる白い雲。静かな湖面に、新緑香る森。鳥たちの声色は軽やかに、地に生きる鼓動は穏やかに。煩わしいものなどなにもない。
「――ハッピー! おひとりさまライフ!!」
森に突如として拓けた空間、そしてそこに建つ七階建て+物見やぐら付きの楼から見えた景色にむかって私は歓喜の声をあげた。
パレスティル・リースイ・キルグ
それは、かつての私の名前。
とある国で王として在位54年、一つの国をまとめて外交をこなし、比較的よく治世を保っていたのではないかと自負している。
しかし家族には恵まれず、配偶者にも良き縁はなかった。
やれ、「金を貸してくれ」だと言ってくる愚弟に。
やれ、「嫁ぎ先が嫌だ」と度々帰ってきては居座る愚昧。
やれ、「めんどくさいのは嫌」だと引きこもる愚弟。
かと思えば、
幼女趣味の変態に、男色ナルシスト、バーサーカー、アーティファクトおたく。それからグルメ気取りの味覚音痴。
そんな配偶者ばかり。
政略結婚で各家から不良債権を押し付けられたといえなくもない男たち。
とりあえずそんな男どもは皆先に逝き、子どもたちはある程度マシな人格に育ったはず。もう、こんな人生は二度と嫌だと死に際に強く思った。
そして目が覚めたら新しい人の生が始まっていた。
そこでは王の第一子として誕生し、ムスディカの名が与えられた。
下には弟が二人に妹が一人。(……どこぞの関係を思い出すが)ここでも通常なら男女関係なく生まれ順に王位継承権が与えられる。
つまりは、また、王として政略結婚をし、ろくでもない男たちと生活をともにしなければならない現実があり得るかもしれない。
そんなのはいやだ!
あんな人生はもうコリゴリだ!
そんな決意を胸に頑張った。わたし、めっちゃ頑張った。
誰に何と言われようとも頑張ったのだ。
前世とは違い何かと目の仇にしてくる妹と、そのバック。そしてそんな妹の手のひらの上で転がされる弟たち。そんな妹の思惑を利用し、ついぞこの日がやってきた。
「――――お姉さま、貴方から王位継承権を剥奪いたします。流刑地にてどうぞ、余生をお過ごしください」
喜んで!! と、寸前まででかかっていた言葉を飲み込み。にやけそうになる表情筋を叱咤し、粛々と受け入れた。
そうして王位継承権を剥奪され、生まれた時から伸ばし続けていた髪を肩上3cmほどのところでバッサリと切られ、最低限の衣服や食べ物などだけ持たされ遥か遠くにある孤島へと送られた。
民衆らは妹たちが流した私の悪評(嘘八百。むしろしでかしたのは妹たちだ)を信じ、悪女排除に積極的。私がいなくなることで、ま、今の治世が多少なりとも団結力が強まるなら万々歳。ここで下手に抵抗でもしようものなら、民を巻き込んでの内戦一歩手前が勃発してしまう。王位などやりたいものがやればいい。
私が飛ばされた孤島、ヤシューム。
ここは人が恐れる獣たちが蔓延っている。
――――――だった、ハズなのに。
我も、我も、となぜかドラゴンやフェンリル、ペガサスにグリフォン、カーバンクルなど幻獣が押しかけてくる。トカゲか何かだと思った生物が、まさかのリヴァイアサンが小型化した姿だったなんて誰が思う!?
ちょ、あなたたち。人間は敵じゃなかったの!?
なんでアッサリ姿なんて見せちゃってるのよ!!
わたしは一人を満喫したいのに――――――!!!