土の魔王
よたよたと歩きながら、冒険者で大混雑している魔法陣へと向かった。魔法陣の前にはたくさんのTRTのメンバーが押し寄せていた。彼らが口々に話している情報で色々なことを知ることができた。TRTの統括は、炎の魔王のところへ行き、ヨシワラたちは、土の魔王はこちらへ向かっているということだった。
彼らが談笑している横をすり抜けて、誰も使っていない魔法陣の中央へとゆっくりと向かって行った。時折TRTメンバーにぶつかりながらも、気づかれずに魔法陣に乗って魔法を唱えた。彼らを中心に光の粒子で包まれると、直ぐに魔王の扉が目の前に現れた。
マントの中から二人がでてくると、荻原は認識祖語の帽子を外した。
「さぁ、いくか。
おれは、ここでやつらをみはってるよ」
「あぁ、わかった。無理しないでね。
死ぬなよ、おっくん」
「はは、誰に言ってるだよ!
俺が他の奴らを近づけさせないって」
「そうだね、任せたよ」
ヒビキとリイナは、礼を述べると荻原はまた認識祖語の帽子をかぶり直しダンジョンに潜んでいった。姿が見えなくなった親友をおいて、ヒビキは魔王への扉を開いた。そこは、大きな大きな部屋の中に3階建ての建物よりも大きなロックゴーレムが佇んでいた。二人は、ゆっくりと近づいていくと野太い声が聞こえてきた。
「さぁ、冒険者よ、我を倒せ!そして勇気を見せよ
さすれば、金銀財宝思いのままだ!!」
「魔王様、僕らは、金銀財宝は不要です!
神様に向かう印が欲しいのです。
どうしても神様に会わないといけないのです!」
「さぁ、冒険者よ、我を倒せ!そして勇気を見せよ
さすれば、金銀財宝おもいのままだ!!」
ヒビキの言葉にはこたえてくれず、返答は変わらず同じ言葉を繰り返すだけだった。
「駄目なようね、ヒビキ。
さぁ、いくわよ!」
「しょうがないね」
リイナは、いつものように杖を前に出すと必殺の魔法を繰り出した。どんな魔法であれ弱点属性になるリイナの前では相手の魔法の耐性などなんの意味などなかった。
「火玉」
リイナが放った魔法は、ロックゴーレムの頭を含めた鎖骨部分は燃え尽き全てが灰へと変わった。リイナの魔法と共に前に出たヒビキは、両腿に対しVの字のように切り込んだ。
「王佐流 飛鳥翼横断斬!」
ヒビキの黒赤剣の当たらなくてもダメージを与えるスキルによって、ロックゴーレムは物理的にあたっていなかったにもかかわらず、その斬撃により腿と体が離れその場に崩れ落ちた。
だが、ロックゴーレムは、徐々に頭と足を直していき少し経つと完全に元の形状に戻ってていった。
ヒビキは、その様子を見ると、リイナの元へと戻って行った。
「超回復をもってるようだよ、リイナ」
「ふふ、任しといて!
最後だけヒビキに任すわ」
「判った、信じてる」
リイナが、魔法本を開くと、土と風に欄にあった魔法を唱えた。
「砂竜巻」
その魔法は、砂塵を巻き込むトルネードを起こすとのその場にいた何物も削り取り後には何も残らなかった。 ロックゴーレムの体は徐々に削られその姿は徐々に四角になっていった。さらに削られていくと大きな真っ赤な魔玉のみ空中に浮かび上がっいていた。リイナの魔法が終わり魔玉を中心にロックゴーレムが復活し始めると、ヒビキはその魔玉に向かって一撃を入れるのだった。
「スズネ突撃壱!」
最初に覚えた技を突発的に繰り出すと、黒赤剣で魔玉の真ん中を突き破り魔玉は砕け散った。
その後、絶望的な高い甲高い声がフロア中に響き渡った。
「あー、せっかく作った最強のロックゴーレムなのに、
なんてことするんだい!」
その声の先には、シルキィによく似たさらに小さな男の子が立っていた。二人は、ゴーレムに気を取られ部屋の奥にいた彼に気が付かなかったのだ。
「もう、君たちは、何なんだよ、高魔法耐性、高物理耐性、高回復をもってるのに、簡単に……
チートすぎるよ!」
彼の剣幕におされたヒビキは、頭を掻いて謝った。
「え、あ、ごめん。
ところで、君は?」
「へへん、よくぞ聞いてくれた、僕こそがこの大陸を統べる魔王!
その名も、ニーク・サイジングだ!」
「で、あんたを倒せばいいの?」
リイナが、真面目な顔で魔法の杖を彼に向けると、彼は真っ青な顔になり怯えたのだった。
「ひぃ」
「もう、止めなよ、そんな小さい子に」
「ちいさくなんてないやい」
彼が必死に否定したところに、再度魔法の杖を彼の鼻先に近づけた。
「じゃ、いいんだよね」
「そ、それは、困る。
そ、そうだ。神様に会いに行けるようにしてあげる。
僕と一緒なら、印一個でもいけるから」
「すでに、三個もってるから、あんたを倒せばいいんだよね」
「ひぃ、お願いたおさないでぇ~」
「倒さないよ、じゃ、印頂戴。
それに、神様までの道を案内してほしいんだ」
「それで、僕を退治しない?
僕は戦闘むきじゃないんだ」
「そんな気がしてたわ。
ここのダンジョンは凝ってるし、ボスも強いしね」
「へへへ、褒めてくれてありがとう。
僕はね……」
ヒビキは、話が長くなりそうなところを止めると、神様への道を案内してくれるようにお願いした。