4話「雷撃加護」
・・・知らない天井だ
再び飛んだ意識が戻ると部屋の天井が視界に入る、
気絶する前にいたのは外だったが今は室内に居るようだ。
まさか捕まったか?と想像する昇吾であったがラフが駆け寄ってきたのでその心配はなくなった。
「あ!大丈夫?そんなに強く攻撃したつもりはなかったんだけど気絶しちゃったから、僕の部屋に運んだんだ」
「お前の部屋?」
体を起こし室内を見渡すと家具が必要最低限置かれた部屋だとわかる、
同年代の部屋としては綺麗過ぎるぐらいだ。
「なんか質素っていうか、さみしいな」
「そうかな?僕はこれで落ち着くんだけど」
「なるほど」
天界にはあんまり物が溢れてないのか?それだけ綺麗とも考えられるが
まぁいいか、それよりもここを出ねえと
「そういえば君、結構重いんだね・・・ってどこ行くの?」
ラフが話かけた時には昇吾はベッドから降りて部屋から出ていこうとしていた。
「いや俺追いかけられてるし、あんま時間ないんだわ」
正直このラフも加護の力持ちなことも含めてめっちゃ強いし、
なるべく人と出会わずにさっさと出て行っちまいたいとこだな。
扉を開けると石造りの廊下が左右に伸びている、そして1つ気づいた。
「どこをどう行けば出られるんだ?」
マズイな城の中ってことはよ、
おそらくは袋小路になってたり、罠が張ってあるところもありそうだな。
「ねえねえ」
「ん?」
「僕が外まで案内してあげようか?ずっとここで暮らしてるしどこに何があるかはわかるよ!」
ラフはワクワクした表情で俺に助け舟を出してくれた、
一瞬罠かとも思ったがとても純粋な表情をさせていたので頼ることにした。
「ありがとよ、なるべく早く出られる道案内を頼むわ」
「うん!任せて」
ラフは俺の前に走り出し道案内を始めた、
道案内をする代わりにラフは俺に外の話をして欲しいと頼んできたので、
前に気をつけているならいいと答え話し始めた。
「俺のいたところはな、とにかく物や建物、人が多い」
「栄えてるんだね」
「夜も結構明るいな」
「松明も豊富か~」
「あとよく喧嘩ふっかけられるな」
「物騒だね、じゃあいつも気絶してるの?」
「いや、そこに不思議な力を使うやつは居ねえよ」
ポケットに手を突っ込みながら返す、
地上にそんな奴が溢れてたら今の文化レベル維持できねえよ。
ラフは少し黙ると何か思いついたようで振り返った。
「ねぇ、昇吾くん」
「あ?」
「不思議な力欲しくない?」
かなり進んだあと、通路の途中の壁に人が通れそうな穴が空いている
周りが綺麗に削られて侵入は容易だが穴の先は暗く中が見えない。
「ここか?」
「うん、ここが加護の泉への入口」
ボルテ族長が天空人の城にはまだ残ってるかもしれねえって言ってたが、本当にあったな。
ラフは先の見えない暗闇の中にズンズンと進んでいく、灯りもなしによく進めるな
「昇吾くん早く、ここは関係ある人ぐらいしか来ないけど、もしものこともあるから」
穴の先に繋がる通路は手を広げるとすぐに岩壁に当たるほど狭いが進むのには苦労しなかった、
5分ほど進むと光が見え出口が俺たちを迎える。
「ここが泉の間だよ」
泉の間の広さは学校の教室ぐらいの石の部屋で、
中央に噴水が鎮座しており弱々しく湧く水を受け皿に溜めている。
受け皿の端に木製のコップが1つ引っかかっており、これで普段水を集めているようだ。
「なんか神秘的だな」
「ここは大切な場所らしくて、限られた人しか知らないって聞いてる」
なら、ひとまずはここにいても大丈夫だろう、加護を受けてみるとするか。
俺は木製のコップを受け皿に沈めて、水をコップいっぱいに集めた。
「・・・」
少し躊躇ったが中身をグイっと一気に飲み干した
味は至って普通の水だ、井戸水に近いが鉄臭くない。
「この後、どれくらいかは個人差あるけど何かしら変化があったら加護をもらった証拠なんだって」
「僕の時は手の甲に盾が浮かびあがったよ」
「即効性ではないんだな、一応もう少しもらってくか」
部屋の隅にガラス瓶が並べられた薬品棚を見つけ、
小さめの容器をいただき受け皿の水を移してポケットに仕舞った。
ここでの用事は済んだので、早々に泉の間を後にし外への順路を辿ることにした。
急にラフが後ろ手でストップのサインをし俺を止めた。
「少し下がって、巡回兵が通るよ」
後ろへ下がると後から兵士が通りすぎた、危機一髪ってとこか
「なんかいつもより警戒してるぽかったし、昇吾くんのこと探してるのかな」
「十中八九そうだろうな、ラフ外まであとどれくらいだ?」
「あとちょっとだね」
ラフに通路を見てもらい兵士がいないのを確認すると、外にそのままつながる通路を走り出した。
このまま上手く脱出できればいいんだが・・・
「ふふ、やっぱりここで合ってたわね」
ちょうど外に出た瞬間俺の体が大きく横に跳ねた
蹴られたのは分かった、あとこのオカマっぽい話し方には覚えがある。
「昇吾くん!?」
「てめえ、ジェスク」
「あら、覚えててくれたなんて嬉しいわね」
なんでバレた、ラフか?
ラフの方を見ると唐突のことでアワアワしており、ラフと繋がりがあるとは思えない。
「まあいいや、俺はこっから出ることだけ考えて動いてんだ、お前の相手をしても得はねえ」
俺は柵の低い場所めがけて走り出そうとした
「柵の低いほう、走ってく」
「了解よ」
少女の声がしたと思ったら俺の目の前にジェスクの拳が飛んできた、
咄嗟にガートしようとしたが早くて受け止めきれねえ
「軟壁!!」
ラフが俺とジェスクの拳の間に手を伸ばした、
拳は俺の体を捉えることなく柔らかいものを殴ったように跳ね返る。
さっきも見たラフの見えない壁の能力が俺を守ってくれたようだ。
「昇吾くん、大丈夫?」
「ああ、助かった」
「ラフ王子、なぜその男を庇うのです?」
「彼は僕の友人だ」
王子?ラフって王子なのか
まあ華奢だし、庶民離れしてるなぁとは思ってたが王子か
「なるほど、しかしあたしは地上からの客人を捕えろとの依頼を受けておりますゆえ、失礼」
ジェスクは俺たちの後ろに回り込むと俺だけを引き寄せ宙へ放り投げた
「ぐへぇ」
まもなく地面に叩きつけられた俺の周りには複数の兵士が集まってきた、
まぁ援軍ぐらい普通に呼ぶよな。
「これで依頼完了ね」
「おつかれさま」
兵士に囲まれる昇吾を少し離れた場所で見ているジェスクのそばに眼鏡をかけた少女が近づいてきた、
背中の辺りが異様に大きく膨らんでいる以外は聡明そうな子だなとラフは思った。
「あ、王子が兵士止めにかかろうとしてるので止めといてください」
「王子、失礼します」
「ぐ、離せ!」
「それはできません、彼はまだやることがありますので」
「昇吾くん!」
思い返すとここの連中みんな強いよなぁ、キュロもラフもジェスクも強ええや。
俺も加護受けたら強くなれんのかな?と思って泉の水飲んだけどまだもらったか分かんねえし
今複数の兵士に囲まれて絶体絶命じゃねえかよ。
お、でもなんかビリビリすんな、痺れてる感じがして電気が走ってる?
昇吾の腕を抑えようとした兵士は違和感を感じた、
掴んだ腕からバチっと痺れるような感覚を覚えたのだ
これはまるで雷に触れたようだと。
「・・・いいねぇ、痺れた」
ムクっと起き上がった昇吾を取り押さえようと兵士たちが覆いかぶさると、小さな閃光が肉体と肉体が重なった隙間から漏れ
兵士たちが動かなくなった。
「ふぅ、原理は分かんねえが雷を纏ってるかんじがするぜ」
人で出来た小さな山から昇吾が這い出てきた、服が電撃の影響で少し焦げている。
「あら、雷の加護持ちだったのね」
「雷の加護?これがそうなのか」
昇吾はポケットに手を突っ込んでいつも(地上で喧嘩する時)のようにジェスクを睨んだ。
強がっているが正直勝てる気がしない、
さっきも横に居る眼鏡幼女が俺の動きを教えてたようだし加護もらっても勝ち目なしだ
「(どうすっか)」
考える間もなくジェスクは俺に鋭い蹴りを放ってきた、
体中に電気が走っているおかげか今までよりも反応が速い
紙一重で避けることが出来た。
「あらいいじゃない、速さに特化したあたしの疾風の加護についてくるなんて素敵よ」
「いや、あんたに褒められても嬉しくねえんだけど」
「まぁそう言わず、に!」
続けざまに拳が放たれる、少し衝撃を受けるが拳を掴むことには成功した
次に電流を流すイメージをして電気を発生させる。
「ジェスク、そいつから離れて!」
「もう遅いわ、加護を得てすぐにこんなことができるなんて、ね」
ジェスクの髪の毛は逆立ち、地面に倒れた。
ひとまずは俺の勝ちだな
「あー、疲れた」
「昇吾くん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。ラフが初撃防いでくれなかったらやばかった」
周りにいた敵は全員片付けたが、追っ手の心配をし城の外に出た。
体に流れてる電気の影響で怪我しているところも痛みを感じていない、
まぁある程度したら痛んでくるだろうな、走れるうちに走らないと。
「昇吾くん、地上人なんだっけ?」
「ああ、天空人に連れてこられた」
「そう・・・」
「でもお前はもう俺の友達だ、助けてくれたしな」
「いいの!?」
「ああ、俺は優しくしてくれるやつは敵じゃないと思ってるからな、何考えたか知らねえが気にすんな」
「ありがとう!僕友達いなかったから嬉しいな」
王族ってなかなか友達作る機会なさそうだしな。
「また会えるかな?」
「多分会うだろ、そんときは地上の話をいっぱいしてやる。」
「うん!楽しみにしてる」
「おう、じゃあな!」
昇吾は森に続く方角へ走り去っていった。
ラフはそれを見送り、友達が初めて出来た喜びを感じると同時に
昇吾を地上から連れてきた天空人に関して疑問を抱くのだった。
格闘能力で敵わないのなら特殊攻撃を鍛えればなんとかなる感じでパワーバランスを軽く崩しました、次回はキュロメインの話になります。