2話「魔族集落」
疲れず読める感じで綴りました。
夕焼けはどんどん色を落とし薄暗くなっていき、視界の悪くなった森の中をキュロに案内されて進む
今通っている道は多くの魔族が行き交っているのか草が踏み固められてさっきまで通ってきた森よりも
進みやすい。
「明かりがあれば夜も安心なんだけどね、私ランプ持ってないんだ」
「ランプか、ところでこの土地って電気は通ってないのか?」
俺の質問にキュロはムム??と首を捻った。
「街にならあるかもね、私たちのところは火を起こしてランプや松明に明かりを灯すけど何で?」
「いや、聞いてみただけだ(地上は恵まれてんな」
昇吾は軽くカルチャーショックを感じたが、恐らくこの先はこれの比ではない程驚きの連続だろう。
ある程度歩くと木々が切り倒されていたり、太い枝にロープが括られてランプが吊るされているところに入った
ここら辺りから魔族のフィールドのようだ。
「もう着くよ」
明かりが見えてきて家がいくつも集まった場所でキュロは立ち止まった。
家の構造はまばらで木を組んだものとテントのようになっているものが混じって建っている。
外に出ている人は少ないが確かに住人は昇吾とは違う見た目をしている。
キュロはスゥっと息を吸うと叫ぶくらいの大きな声を上げた。
「みんな~。地上の人連れてきたけど悪い人じゃなさそうだから攻撃しないでねー」
キュロの報告に他の住人たちは「分かった分かった」と耳を抑えながら頷いた。
「じゃあ族長のとこ行こっか!」
「お、おう」
キュロはやったぜという顔で昇吾に振り返って親指を立てた、彼女にしてみれば大成功のようだ。
実際、勢いに押されたようで他の魔族たちも昇吾のことをあまり気にしていないようだ。
案内されたテント状の家に入ると全身に体毛を生やした小猿のような老人が座っていた
老人は昇吾を見るとホウホウと頷き座るように手招きをした。
「失礼します」
礼儀は大切だから挨拶をして爺さん族長の前に座った、初対面で悪いが小猿みてぇだ
「キュロが騒いでいたからお主が何者かは分かるよ、わしはこの集落の族長ボルテ。えらい遠くからよう来たの」
「来たというか連れてこられた感じで」
昇吾はボルテ族長にここに連れてこられる前の話をした。
族長は話の中で天空人が昇吾にしたことに心当たりがあるようで説明を付け加えてくれた。
「俺の体が急に動かなくなったのって何なんですか?」
「おそらく加護じゃな」
「「加護?」」
キュロも加護ってのを知らないってことはそんなに知れ渡ってる知識じゃないのか?
「天界には不思議な力を授けてくれる泉がいくつもあり、その不思議な力は加護と呼ばれておる」
「(不思議な力・・・漫画とかでよくある特殊能力に似てるものか?)」
「それ私も知らない」
「昔はこっちの地域にもあったらしいがもうほとんど枯れちまって、噂では天空人たちの城に残っていると聞く」
「まぁ今となっちゃ加護も昔話の類じゃし知っている者も少ないが、噂は本当のようじゃな」
ボルテ族長はポリポリと頭を掻くと昇吾に尋ねた。
「さて昇吾くん、急にこちらへ連れてこられて大変じゃろうし今日はここで休んでいくといい」
「あまりわしらに驚かないのなら別に1日2日ぐらい過ごしても平気じゃろ?」
「ありがとうございます」
族長の提案に昇吾は深く頭を下げた。
「ほう、地上の人はみんなこんな感じなのかい?」
「うーん、人によりますが俺の住んでる地域は大体同じようにすると思います」
普通に礼もちゃんと出来ない奴とかいるけど、大体はこんな感じだろう。
そんなわけで今日はここの集落で眠れることになった、明日からどうやって帰るか探さなきゃいけねぇな。
次回はもうちょっと話が進みます。