聖徒会 双子の能力者
神島 蓮 と、女神 希は買い物から帰宅する所だった。
夕方のタイムセールに二人は何とか勝利を掴んだのだ。
「ふう......、何とか目当ての物は買えたな。」
「はい。
蓮君が頑張ってくれたお陰ですよ。」
「いや、希も中々のものだったと思うけど......」
蓮が人混みの中で混乱している間、希は目にも留まらぬ速さで次々と目当ての品物をカゴへと入れていた。
「さあ、帰って夕飯にしましょう。」
「そうだな。」
「カヤ!大丈夫ですか!?」
「うう、痛い......。」
そんな時二人は道端でうずくまる二人の女の子を見付けた。
「だから走ると危ないって言ったのに......。」
「うう、ごめんなさい〜......。」
するともう一人の子はポケットからハンカチを取り出し、カヤという女の子の膝に巻き付けた。
「さ、おぶってあげますから!
早く家へ帰って消毒しましょう!」
「うん......」
と、女の子はカヤをおぶってあげようとした。
「重い......。」
「重いって、そんな......!」
「カヤ、太りましたね?」
「そ、そんな事!!」
「知ってますよ?
最近、甘い物の食べすぎじゃないんですか〜?」
「うう......!」
それでも何とか歩こうとする二人。
見兼ねた蓮と希が声をかける。
「ちょっと二人共大丈夫?」
二人の元へ駆け付ける。
「へ、平気です.......!
でも、やっぱり重いです.......!」
「家は近くなの?
なら、俺がおぶってやるから。」
「そうですね、蓮君お願いします。」
「で、でも......。」
「いいからいいから。
困ってる子を放っとけないよ。」
「あ、ありがとうございます!!
カヤをよろしくお願いします!」
そして蓮はカヤと呼ばれる女の子をおぶってあげた。
「うう、まさかカヨにバレていたなんて......!」
「とにかく家まで案内してくれるかな?」
「はい!」
そして、四人はカヨとカヤの家まで歩いた。
しばらく歩いたのち、四人は大きなお屋敷の門の前に着いた。
「ここが......君達の家?」
「はい!」
そして、カヤは門を開けると蓮と希を中は招き入れた。
「さあ、入ってください!」
「う、うん。」
「お邪魔します。」
家の中に入ると二人で住むには広すぎるくらいの部屋があった。
シャンデリアや、絵画、家具、どれも見るからに高級そうだ。
「すごい......。」
「蓮君、見とれるのは後にしてカヤちゃんの手当てをしましょう。」
「あ、ごめん。」
カヤが救急箱を取ってきた。
カヤの膝の擦り傷に消毒液をかけ、傷当てパッドを貼る。
「はい、これでもう大丈夫ですよ。」
カヤは安堵の表情を見せた。
その後、カヨとカヤは二人に紅茶を淹れてくれた。
「さっきは本当にありがとうございました!!」
二人揃って頭を下げる。
「気にしないで。
困ってた人が居たら助けるのが当然だし。」
「お大事になさってくださいね。」
蓮と希も安堵したようだった。
と、そろそろ帰ろうとしたその時
突如、雷雨が鳴り響き外は嵐となった.....。
「......。」
二人は呆然となっていた。
「あの!」
と、カヨとカヤが声をかけた。
「お二人さえよろしければ、一晩泊まっていきませんか?」
「なんか、ごめんね......。
お世話になっちゃって。」
「お世話になります。」
蓮と希は二人が作ってくれた夕食を食べていた。
「これはさっきのほんのお礼です!
だから遠慮なくくつろいで下さい!」
「そうですよ!
ゆっくりしていって下さい!」
カヨとカヤは嬉しそうだった。
夕食を食べ終えると、カヨとカヤが食器を下げてくれた。
「はい、お茶です。」
カヨがお茶を淹れてくれた。
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」
淹れてくれたお茶を飲む。
すると、カヤが来て
「お風呂の用意が出来ました。
ゆっくり温まってください。」
「希、先に入りなよ。」
「では、お言葉に甘えて。」
と、希は席を立った。
希が湯船に浸かっている間、蓮は二人に聞きたかった事を訪ねてみた。
「あのさ、君達のご両親は?」
「親は昔からいません。」
私達二人はずっとここに住んでいるんです。」
「え......?」
「私とカヤはずっと前からお互いを支え合って生きてきました。」
「辛い事があっても二人で乗り越えて来たんです。」
「そうなんだ......。」
蓮は聞かない方がよかったかな、と、思いそれ以上尋ねるのをやめた。
その後、希がお風呂から上がり、蓮の番となった。
豪華な湯船に浸かる。
「それにしてもあの二人、何があったんだろう......。」
それだけが気になっていた。
お風呂から上がるとカヨとカヤは寝室へと案内してくれた。
大きな部屋に大きなベッドが一つだけ置いてあった。
雷は止んだものの、雨はまだ降り続いている。
「今夜はゆっくりお休みになってください!」
すると、カヤが
「さ、カヨ。
絵本を読んであげる時間ですよ。」
「あ、そうでした!」
と、本棚へと走って行った。
本棚にはぎっしりとたくさんの絵本がしまってあった。
「さあ、今日はどの絵本にするんですか?」
「うーん......。」
カヨは迷った挙げ句、
「これと、これと、あとこれも!」
と、何冊もの絵本を選んだ。
「こらこら、そんなに読める訳ないでしょう?
一冊にしなさい。」
「うう〜......。」
それを見ていた希は
「良かったら、私が読んであげましょうか?」
と、言い出した。
「本当ですか!?」
カヨは目を輝かせた。
「こらこら、カヨ。
女神さんは疲れてるんですから、休ませてあげないとでしょう?」
希は微笑みながら、
「大丈夫ですよ、
今日のお礼にぜひ、読ませて下さい。」
「わーい!」
カヨはこの上なく嬉しそうだった。
希、カヨ、カヤの三人はそれぞれ希の左右に座り、絵本を読んでもらっていた。
何だか、お母さんと娘みたいだ。
蓮はそう思った。
何冊か絵本を読み終えると、二人はウトウトし始めていた。
「そろそろ、寝ましょうか。」
「そうだね。」
と、蓮はふと思った。
「えーと、もしかして俺もこのベッドで寝るの?」
「そうみたいですね。」
「......。」
家では別々の布団で寝ていた蓮は、何故か顔を赤面させた。
「ふふ、私は蓮君と一緒で嬉しいですよ?」
希は笑った。
蓮の左側に希、右側にはカヨが。
そして、希の横にはカヤが寝る事になった。
「それでは、皆さん、お休みなさい。」
「お休みなさい!」
「お、お休み......。」
早く寝てしまおうと蓮は目を瞑った。
しかし
「!?」
突如、カヨが腕に抱きついてきたのだ。
「あの、カヨちゃん......?」
「えへへ!」
嬉しそうに抱きついているカヨ。
「カヨは抱き枕がないと寝れないんです。」
「あらあら。」
希は何故か笑っている。
「......。」
すると、
「え!?」
何と希まで蓮の腕に抱きついてきたのだ。
「カヨちゃんばかりずるいですよ?
私も蓮君に甘えさせてください。」
「ずるいです!
だったら私も!」
と、カヤは希の腕に抱きついてきた。
「!!」
心臓の鼓動が激しくなっている。
その後、蓮は三人が寝た後も全く眠る事が出来なかった。
翌日、よく寝た三人も全く眠れなかった蓮も二人が作ってくれた朝食を頂いた。
雨はすっかり止んでいた。
「お世話になったね、どうもありがとう。」
「お世話になりました。」
頭を下げる蓮と希。
「ぜひまた遊びに来てください!!」
「また絵本一緒に読みましょう!」
大きく手を振り見送るカヨとカヤ。
蓮と希も手を振る。
「とても良い子達でしたね。」
「うん......。」
希は蓮の様子がおかしい事に気付く。
「どうしたんですか?」
「いや、あの二人の事がどうも気になってさ......。」
「カヨちゃんとカヤちゃんの事ですか?」
「うん、昨日話したんだけどあの二人、親がいないって言ってたんだ。
それで、二人で辛い事も悲しい事も乗り越えてきたって言ってて、何か事情でもあったのかなあってさ。」
「そうだったんですか......。」
「だから、俺達で出来る事があったら力になってあげたいんだ。」
それを聞いた希は
「分かりました。
だったら、また二人の家に行きましょう。」
「え?」
「時々遊びに行って、二人を助けてあげるんです。
カヨちゃんとカヤちゃん、私達が来てくれた時はとても嬉しそうでしたから。
だから、私と蓮君で二人を精一杯楽しませてあげましょう。」
その言葉に蓮は頷いた。
しばらく経ったある日、二人はケーキの入った箱を手に下げてカヨとカヤの家を訪ねた。
門の前に立つと、希が庭にいる二人を見つけた。
二人のそばには子猫がいた。
しかし、どうやら足を怪我しているらしい。
するとカヨは子猫の足に手をかざす。
すると、カヤの手が光出し、瞬時に子猫の足の怪我を治していった。
「はい!
これでもう大丈夫ですよ。」
子猫はにゃあーと鳴いた。
すると、カヤがこちらの方に気付いた。
「あ!
神島さん、女神さん!」
二人は蓮と希の方へ駆け寄った。
「お久し振りです。
カヨちゃん、カヤちゃん。」
「また来てくれたんですね!」
「元気だった?
二人とも。」
「はい!
元気一杯です!」
と、お互い笑い合う。
「あのさ、今の子猫を治したのって......。」
「あ、見られちゃいましたか......。」
「私とカヤは二人とも能力者なんです。」
「そうだったんだ.....。」
「私達の能力は相手の傷を癒す能力です。
だけど、自分の傷や、何故か私とカヤのお互いの傷を治すことも出来ないんです。」
「能力に目覚めたのはいつ頃なんですか?」
希が尋ねる。
「うんと小さい頃から私達にはこの能力が備わっていました。」
「そうですか.....。」
「あの、やっぱり不気味ですよね......?
私達が能力者なんて......。」
「いいえ、変な事ではありませんよ?」
「実は俺と希も能力者なんだ。」
「え......?」
そう言うと蓮は指先に炎をともらせ、希は風を吹かせた。
「俺は炎を操る、それで希は風を操られるんだ。」
「!!」
「俺も最初はこの力を恐れていたんだ。
だけど、希に励まされてこの力を人の役にたてようって思うようになったんだ。
だから、カヨちゃんもカヤちゃんも決してその力を不気味なんて思う事なんてないんだ。
人の傷や癒してあげる......。
とても素敵な能力だと思うよ。」
「神島さん......。」
「お二人の能力はきっと誰かの役に立つはずです。
信じてあげてください。」
それを聞いた二人は大きく頷いた。
「神島さん、女神さん
ありがとうございます。
私達、もっとこの力を人の役に立てたいと思います。」
蓮と希も頷いた。
その日の晩、再び夕食をご馳走になっていた。
「そうだ。」
と、蓮がある事を思い付く。
「明日、皆んなでどこか遊びに行かない?」
「そうですね!
カヨちゃんとカヤちゃんはいかがですか?」
すると二人は顔を輝かせた。
「本当ですか!?
だったら遊園地に行きたいです!」
「私も行きたいです!!」
嬉しそうにはしゃぐカヨとカヤ。
「じゃあ、遊園地に決まりですね。」
「わーい!!」
二人は嬉しさで一杯だった。
その光景を見た蓮と希も嬉しそうに笑った。
翌日、四人は遊園地に来ていた。
「おおお.....!!」
「ここが遊園地.....!!」
二人は目を輝かせた。
「さあ、好きなだけ楽しんでくださいね!」
「わーい!!」
二人は走りだす。
「カヤ!見てください!
あれあれ!!」
「こらこらカヨ、はしゃぎ過ぎですよ?」
「良いじゃないですかあ〜!
カヤだった本当ははしゃぎたいんでしょう?」
「ムムム......!」
それを見ていた蓮と希は笑う。
四人が初めて乗ったアトラクションはジェットコースターだった。
「うう、ドキドキします......。」
「ワクワク......!」
坂を登りきったコースターは一気に急降下した。
絶叫するカヨとカヤ。
二人とも目がクラクラになっていた。
「あう〜......」
「クラクラ〜.......」
「2二人とも、大丈夫?」
「少し休みましょうか。」
ベンチに座り、カヨとカヤにバニラ味と、ストロベリー味のソフトクリームを買ってあげる。
「美味し〜い!」
二人は美味しそうにソフトクリームを舐めた。
「カヨのバニラ......美味しそう。」
「そう言うカヤのストロベリーも美味しそう!」
そして、お互いに一口ずつ舐めるが、
「あー、カヤ!
たくさん舐めた!!」
「カヨだってたくさん舐めたでしょう。」
「うう〜。」
その後も四人は次々とアトラクションを楽しんだ。
初めての体験のせいか、カヨとカヤは楽しさで一杯という感じだった。
時間はあっという間に過ぎて行き、最後に四人で観覧車に乗った。
「わあ〜!
とっても綺麗!!」
「凄く高いです!!」
二人は夕焼けの景色を満喫していた。
「カヨちゃん、カヤちゃん、今日は楽しんでもらえましたか?」
「はい!
とっても楽しかったです!!」
「本当にありがとうございます!
神島さん!
女神さん!」
蓮と希は微笑む。
帰りの電車の中でカヨとカヤは遊び疲れたのかそれぞれ蓮と希の肩に寄り添うように眠っていた。
「楽しんでくれたみたいで、何よりです。」
「良かったな、喜んでくれたみたいで。」
駅に着くまで二人はぐっすりと眠っていた。
「それにしてもこの二人には何か事情がありそうですね......。」
「うん、どうもカヨちゃんとカヤちゃんはそれを隠している様な気がするんだ。
だけど、無理に聞き出すのも悪いだろうし、ここはもう少し様子を見ようかと思ってるんだ。」
「そうですね、時間をかけて接していきましょう。
そのうち、きっと明らかになるはずです。」
と、その時駅に電車が到着し、蓮と希は二人を起こし駅に降りた。
「お二人にお願いがあります。」
また別の日、カヨとカヤから話があると言われ、
蓮と希は聞く事にした。
「神島さんと女神さん、私達のご主人様とお嬢様になってくれませんか?」
「......え?」
一瞬、話が理解出来なかった。
「俺と希が、ご主人様とお嬢様に?」
「はい!
今までのお礼の意味も含めて、心からご奉仕させて頂きます!
だから、お願いします!!」
「お願いします!!」
二人は頭を下げた。
「ご奉仕って言われてもな.....。」
戸惑う蓮だったが、希は
「蓮君、お願いしましょう。」
と言った。
「え、でも......」
「せっかくこうして、カヨちゃんとカヤちゃんに出会えたんです。
私はもっと、二人と一緒に居たいですから、それにこうすればもっとお互いの仲を深められると思うんです。」
「まあ、希がそう言うなら。」
蓮と希は二人の方を向き、
「分かった。
ちょっと変な気分もするけど、今日から俺と希が二人のご主人とお嬢様になるよ。」
「カヨちゃん、カヤちゃん、改めてこれからよろしくお願いします。」
「お願いします。」
と、二人に向けて頭を下げた。
「ありがとうございます!!
精一杯、ご奉仕させていただきます!!」
「させていただきます!!」
カヨとカヤも頭を下げた。
翌日から二人のご奉仕が始まった。
朝、決まった時間になると
「ご主人様、お嬢様、朝ですよ〜。」
と、起こしてくれたり、食事の用意はもちろん、片付けに掃除まで、二人はこなしてくれた。
まさに、いたせりつくせりである。
「なんかご主人とかお嬢様って、いつもこんななのかな......?」
「何だか、二人に申し訳ないですね......」
身の回りの事をしてくれるのは有難いが、二人は暇になってしまった。
ついに蓮と希が切り出す。
「あのさ、何か手伝える事ないかな?」
しかし、カヨとカヤは
「大丈夫です!
二人はゆっくりしていてくださいね!」
「でも、二人だけだとこんな大きいお屋敷を掃除するのは大変だと思いますよ?」
「いつもやっている事ですから大丈夫です!
私達にお任せください!」
と、なかなか手伝わせてもらえなかった。
「......。」
「あのさ、希。」
「どうしたんですか?
蓮君。」
そこで蓮は思ってた事を希に話した。
「やっぱりあの二人に何があったのか訪ねてみようかなって思ってるんだ。
あの二人にはお世話になっているし、もし何か事情があるなら俺達で力になりたいんだ。」
それを聞いた希は
「実は私も気になっていたんです。
あの二人、何か隠してる事があるんじゃないかって、
思い切って聞いてみて、それで力になれるのであれば私達で力になってあげたいんです。」
「ああ。
後で聞いてみよう。」
その日の夕食の時間。
蓮は思い切って二人に尋ねた。
「あのさ、二人に聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「はい!
何でも聞いてください!」
「聞いてください!」
そして蓮は
「二人の過去についてなんだけど、もしかしたら何かあったのかなって思って、それで何かあったのなら聞かせてほしいんだ。」
「私からもお願いします。」
すると、二人の食事をする手が止まった。
そしてお互い顔を見合わせて......
「私達は昔、前のご主人様に捨てられたんです。」
「え......。」
そして二人は詳しい事情を話してくれた。
元々、カヨとカヤはこの屋敷に住む主人のお世話係だった。
主人はとても優しく、二人を可愛がってくれた。
二人はそんな主人が大好きだった。
しかし、ある日を境に主人は姿を消した。
二人は帰りを待っていたが、とうとう主人は帰ってこなかった。
二人はそれが原因で心に大きな傷を負ってしまった。
それ以来、二人はお互いを支え合いながら生きてきたという。
能力に目覚めたのもその頃だった。
人の怪我を癒す能力。
だがそれは、自分自身には使えなかった。
「思うんです。
この力で傷だけじゃなくて、心の傷も癒せたならって......。」
「それにご主人様にはきっと何か事情があって居なくなったんだって、そう思いたいんです。」
「......。」
「だから、神島さんと女神さんを見ていると前のご主人様を思い出して、ご主人様が帰ってきてくれたみたいに思うんです。」
すると二人は頭を下げた。
「ごめんなさい。
今まで黙っていて......。」
「本当にごめんなさい......。」
それを聞いた二人は
「そうだったんだ......。
辛かったよな。」
「私達の方こそ、ごめんなさい。
全然力になってあげられなくて。」
「え?」
「もっと早く力になってあげればよかったのに、本当にごめん。」
「でももう大丈夫ですよ。
二人だけで背負いこむ事はありません。」
そして、蓮と希は二人に微笑みかける。
「俺達じゃ代わりになれるかは分からないけど、今日からはこれまで以上に甘えていいからね。」
「私と連関君で力になれる事があれば、構わず言ってくださいね。」
「神島さん、女神さん......。」
二人は頷く。
それを見たカヨとカヤは
「はい!!」
大きく頷いた。
その日の夜、二人は蓮と希に絵本を読ませてもらっていた。
二人は事情を話せたせいか、いつも以上に嬉しそうだった。
そして、カヨは蓮の腕に、希はもう片方の蓮の腕に、カヤは希の腕に抱きつきながら眠った。
相変わらず、こうなると寝れなくなる蓮だったが、さん人の寝顔を見てふと、微笑んだ。
とある日、四人は手分けをして屋敷の掃除をしていた。
蓮は昔の主人の部屋を掃除していた。
本棚の埃を取っていた蓮は棚からある一通の手紙を発見した。
「手紙?」
見ると、表には(カヨ、カヤへ)と記されてあった。
「これは......!」
蓮はすぐさま、みんなの元へ行った。
「ご主人様からのお手紙......?」
「うん、たまたま見つけたんだけどもしかしたら、何か分かるかもしれない。」
蓮は手紙をカヨに渡した。
意を決して、中に入っていた手紙を二人は読んだ。
手紙にはこう記されてあった。
(愛するカヨ、カヤへ。
僕の勝手な行動をどうか許してほしい。
君達がこの手紙を見付けて読んでいる頃には僕はもうこの世にはいないだろう。
僕はとある病に侵されもう長くはない。
こんな事をしても余計悲しませるだけだったろうが、君達に辛い思いをさせたくはなかったから、この事は言うに言えなかった。
本当に済まない事をした。
許してもらおうとは思っていない。
二人には大きな傷を残してしまうだろう。
それでも、僕がいなくても君達二人はお互いを支え合って生きてほしい。
心から愛してるよ。
僕は君達二人をいつで見守っている。」
手紙を読み終えたカヨとカヤの目には涙が浮かんでいた。
「ご主人様が病気だったなんて......!」
「そんな事、知らなかったです.....!」
それを聞いていた蓮と希は
「ご主人様はきっとご主人様なりに二人のことを思ってくれてたんだと思うよ。」
「二人には辛いところを見せたくなかったんだと思います。」
「ご主人様......!
もう一度お会いしたかったです......!!」
「ご主人様ぁ......!!」
二人は次の瞬間、大声で泣き叫んだ。
蓮と希は二人をそっと抱きしめた。
その後、二人は落ち着きを取り戻したみたいだった。
「でも、私達ご主人に捨てられた訳じゃ無かったんですね.....。」
「それが分かっただけでも嬉しかったです......。」
すると、蓮と希は
「ご主人は君達の事をとても愛していたんだよ。
見捨てる訳、無いさ。」
「ご主人様は二人の事、とても大切に思ってくれていたんだと思います。」
頷くカヨとカヤ。
「私達、これからも、ご主人様の言う通りお互い支え合って生きていきます。」
頷く蓮と希。
「でも、今度二人だけでじゃないよ?」
「え?」
「私達が付いています。
これからどんどん甘えてくださいね!」
蓮と希はカヨとカヤにそれぞれ微笑みかけた。
それを聞いた二人は次第に笑顔になっていき、大声で答えた。
「はい!
ご主人様!お嬢様!」
二人だけの家族に新たな家族が増えたのだった。
完