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第2話 宮廷魔道士

 

 王宮の一室で男は悩んでいた。


「召喚の魔法を成功させるには、もうひとり力量が釣り合う者が必要か」


 王国を救うために異世界から勇者を召喚しろと命じられた男だったが、何度試しても失敗続きだった。


 過去に勇者を召喚して魔王の軍を撃退したと言うその召喚儀式に使われる魔方陣は、六芒星の形をしていた。


 彼の名は、ジョワル・ブロイ。

 クロエの祖父であるゲイツ・シャティヨンの後に宮廷魔道士になった男である。


「ゲイツ老の所在がわかれば…」


 異世界から勇者を召喚する魔方陣は、それぞれの角に立つ魔道士に寄って起動すると伝えられて居たが、召喚の儀式を行う力量を持った魔道士がひとり足りなかったのだ。


 不意に男が耳鳴りにも似た感覚を味わう。


「これはメッセージの魔法か?」


 それは遠く離れた者との会話を可能にする風に属する魔法で、使い道は多岐にわたってあり非常に便利な魔法なのだが、

 習得難易度はかなり高く、且つ、会話をする両方が使えなければ意味が無い事もあり、使い手は少なかった。


 ジョワルは、自分に発せられる魔法に対してメッセージの魔法を発動させる。


「ジョワルだ」

 魔法の先にいる者に呼びかけた。


「え? 誰?」

 若い女性の声が返ってきた。


(随分と声が若いが、この若さでメッセージの魔法を使えるのか)

 若干の驚きを抑えながら、ジョワルはその女性に問い掛ける。


「お前は誰だ? どうやって私を特定した?」


 メッセージの魔法には相手を特定する必要があったのだ。

 その為、ジョワルは最初自分の知り合いが連絡をして来たと思ったのだ。


「わ、私はクロエです。おじいちゃんが倒れて魔法でも治らなくて、精霊に助けれる人を探すように頼んだんです」


(精霊に…頼んだ?! 何を言ってるんだ、こいつは)


 それはジョワルの常識では考えられない事だった。契約に基づいて精霊の力を行使するのではなく、頼む…それは、魔法の発動の仕組みを無視した発言であった。


(頼む…などと言う言い方は、まるで精霊と話が出来る風じゃないか)


「おじいちゃんを助けて!凄く苦しそうなの!」


(助けろと言われても…)


 男は困った。

 彼は侍医では無いのだ。

 会話だけで助ける方法など知らなかった。


「祖父の名前はなんと言うのだ」


 特に深く考えて聞いた訳では無かった。


 少女らしきこの相手では状況が良くわからない。祖父の名を聞いて知っている家の者であれば、誰か人を送れるかもと思ったのだ。


「おじいちゃんの…名前?」

 少女は涙声になって聴き取りづらい。


「ゲイツ…ゲイツ・シャティヨンです」


「な、なんだと!ゲイツ老か!お、お前、今どこにいる!」

 男は椅子から立ち上がりながら怒鳴る。


「い、家です」


 声に驚いた様な少女の声が返ってくるが、家ではわからない。


(だから、子供は嫌いなんだ。要領を得ん)


「家じゃわからんだろ!それは何処にあるんだ!」


「うぅ…やだよぉ…」

 魔法の先で怒鳴られたからか、少女が泣き出してしまった。


 泣きながら祖父を呼ぶ声だけが聞こえて来る。


(何故、泣きながら魔法を使い続けれるんだ…いや、今はそんな場合では無い)


「怒鳴ったりして済まない…私はお前の祖父の知り合いなんだ。助けたくて焦ってしまったんだ」


「うぅ…ぐすっ…家は山の中に立ってる」


 少し落ち着いた少女が答えてくれるが、それでは全くわからなかった。


(えぇい、どうすればこいつの家の場所がわかるんだ)


「そうだ。お前、マッピングの魔法は使えないのか?」


「まっ、マッピング? 魔法の名前言われてもわかんないよ…」


(わ、わからないってどういう事だ?契約や習得するのに、魔法の名前は覚えるだろ?)


 魔法の習得には、その名前からかつて魔法を精霊と契約した魔法の祖となる者の名前、契約した精霊の名前、場所、時間そう言った知識を元に、自分の名前で契約を結び直す事に成功して初めて使えるようになる物だ。


 それなのに、その名前すら知らないと言うのは、習得していないのか?


 ジョワルは一瞬そう思ったが、メッセージの魔法に比べると、マッピングの魔法は簡単なのだ。


「マッピングは、あれだ。自分を中心に周りの地形とかを映し出す魔法だ。使えないのか?」


「自分の周りを映すって?」


(メッセージの魔法が使えるのにマッピングの魔法は使えないのか…)


 習得の難しさ的に納得出来ないものがあったが使えないなら仕方がないので、違う方法を考えようと思ったジョワルの耳に少女の声が聞こえてくる。


「え?これがマッピングなの? ここが私で…この人は、ここに居るのね」


(なんだ?誰と話しているんだ?ゲイツ老が回復したのか?)


「おい!ゲイツ老と話しているのか?」

「違うよ、精霊たちと話してるの」


(は、はぁ?!精霊と…精霊達とって言ったか?)


「えっと…そのお城から出て…え、伝えてくれるの?じゃ、お願い」


 少女の声が聞こえたと思ったら、ジョワルの目の前にマッピングの魔法を発動した状態の地図が浮かび上がる。


「ば、馬鹿な…」


 マッピングは自分を中心にしか使えない。

 それを他の相手に見せるなど、見た事も聞いたことも無かった。


 だが、少女の家の場所はわかった。

 城から東にある山の中腹だ。


 馬なら普通は1日…馬を潰してもいいなら半日といった距離だ。


「今からそっちに行く!1日…いや、半日くらいか。それまでゲイツ老を持たせてくれ」


「お願い!早く来て!」

 その声を最後にメッセージの魔法が切れた。


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