処女明晰夢
私は以前、身体障害を持つ児童たちが通う学園の絵の展覧会があったので訪れました。
創設者はかつて女優だったと聞きました。
児童の作品はストレートで、見ていると描かれた色に引きずり込まれて髪を食まれるような心地でした。
生徒の略歴も添えてあり涙しながら見てました。
奥に創設者のガラス細工の作品が砂浜のように並べてありました。
ガラスは照明を受けてピカピカ光るので
私は光り物に食いつくカラスとなって覗きました。
テーマ「恋」
黒い ガラスなのに黒い
奥が見えない闇のような黒
1つ、黒以外の存在として金の線が挟まれている
黒にも種類はあるのに
透明さとかけ離れた黒
恋って赤色だとばかり私は思っていました。
私の胸で脈打つ心臓を引き摺り出して
割れば溢れる鮮血と同じ赤でいいのに
そう願ってました。
流れる血は愛で満たされ温かいと信じてました。
恋はその清らかな温度を保つものと思っていました。
崇高で気高いものと結びついてるはずなのに
黒い。
その闇が
人の本能だったら
底知れぬ闇としての本能だったら
その黄金が
人の目が絡む欲を象徴する色であれば
性欲の神聖化が恋だとしたら
嫌だ
獣となんら変わらないなんて事は無いはずなのに
どうしよう
十何年も貴方のことが好きだったのに
性欲に変わってしまっていたとしたら
プラトニックが溶けました。
神聖で柔らかな感情だったはずなのに
むき出しの欲望が正体ならば
貴方は恐れ震えてしまうでしょう。
好きでもない者のそんな醜い感情など
貴方の心に傷をつけるでしょう。
私は自分に問いかけました。
自分は高潔さを根拠に想うのか
私はすぐにそうだと頷きたかったのに
体は動きません。
自分が本当にそうである証拠がありません。
美しい心で貴方を想うはずなのに
どんどん私は醜くなって行く
心が腐り、醜悪なものに変形して
私は人でいられない気がするのです。
性欲が悪いこととは思いませんが、
貴方には向けたくないし
でも貴方以外に人を好きになれる自信は
とてもありません。
ジレンマに苦しみ、何をしていてもそれを踠いていつでも上の空となってしまった私は
人として機能するのでしょうか。
私の、木偶の坊の、
手足が
あのガラスの闇のように
ペストのように
染まっていく
死んでもいいわという返事は
本当にあるのです。
青白い唇からこぼしていく
抱えきれない黒を吐く
慕う人に浴びせるから
なるべく綺麗に