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掌編集

真っ直ぐ見つめる眼差しは

作者: 水瀬洸

 少女は高台に立っていた。

 焼け焦げたドレスを風になびかせて。

 手には一振りの剣を持って。


 眼下には焦土となった城と街がある。

 敵軍が、狼煙をあげている。


「姫様――」


 少女は頬を伝う涙を拳で拭った。

 そして唯一生き残った部下に言う。


「わたしはもう、姫ではない」


 国を亡くした。

 親を亡くした。

 兄を亡くした。


 少女に残されたものは、兄が残した一振りの剣のみ。


「わたしは騎士となる。――この恨みを、憎しみを、晴らすために」

「復讐からは何も生まれません」

「わかっている」


 わかっている。

 だけど――心が、哭いている。


 この心を治めるためには、道はひとつしか残されていないのだ。


「兄様の残した剣に誓う。わたしは――騎士となり、奴らを、討つ」


 切っ先を水平に構え、少女は――騎士は、誓う。

 復讐を。

 ただひとつの道を。


「わたしは姫ではない。女でもない。憎しみを抱えた亡霊となろう」


 誓う。

 亡くしたものを、者達の悲しみを、無に帰すために。

 復讐を。

 一振りの剣に、想いを込めて。

 騎士となった少女は、ただひたすらに、真っ直ぐに、眼差しを前に見据えた。

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