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自称女神の付き人探し。  作者: あきしぃ
第一章【幼女と出会ったアルバイター】
4/4

二人と異世界。

目が覚めると知らない天井だった。


何て事は無く、まだ朦朧とする意識と視覚がはっきりと認識を取り戻した時に俺が見たのは目を回して俺の隣で倒れている自称女神の幼女と。


一面に広がる、草原だった。


「……は?」


先程まで居た俺の部屋では無い事は直ぐに解る。

だが俺の疑問の声は部屋から移動した事に対するモノではない、その正体は……。

空を飛ぶ飛行機では無い飛行物体とか、目の前を走っていった何か良く解らない恐竜みたいな集団とか、取り敢えず現実的ではなさすぎる光景に対してのモノだった。


暫くその光景を前に呆然としていると隣で呻き声が聞こえた、幼女だ。


「んんー……、何が起こったんですかぁ……。」


頭を左右に振って意識を覚醒させるアテナ。そして俺と同様に辺りを見回し、状況を把握したのか”はぁ……。”と深くため息を吐いた。

状況を理解しているのは間違いなく彼女だけだろう、俺は起き上がってワンピースに付いた汚れを払う彼女に駆け寄れば肩を掴んで質問を投げかけた。


「なぁ女神様よ、ここがお前の言ってた天界か? 俺にはどう見てもそうとは思えないっていうか、どっちかって言うとファンタジーとかの世界だと思うんだが。」


自称女神は、「うーん……」と言う少し考えた様な素振りを見せた後、恐らく言葉を選び終わったのだろう。俺の方を確りと見据えてこう言った。


「取り敢えず天界ではないですねー。どっかの誰かさんが転送魔法の途中で術者の意識をかき乱す様な行動を取ってしまったので、座標が大幅にすれたみたいです。ここが何処なのか、今は解らないです。」


んぐ……耳に痛い事を平然と……。


にやにやと腹立つ顔を浮かべる彼女だが、今頼りになるのは彼女しかいない事も事実。

それに気になる事も聞けた。


「”今は”って事はその内解るって事か? って言うか、もう一回さっきの転送魔法? を使ってくれよ。お前が女神って事は認めるし、さっさと帰ろうぜ。」


なぜ気付かなかったのだろう、動転していたからだろうか。来る事が出来るのだから、帰る事も出来る筈だ。俺って賢い、名案だな。しかし、俺の考えとは裏腹に彼女は渋い顔を浮かべている。

そして今日の晩御飯を聞きに来る子供の様にあっさりと言った。


「いやぁ、それは無理ですね。」


無理、だと……?


「な、何でだよ。俺には細かい事は解らねぇけど、女神パワーとやらで何とか……。」


「ですから、その女神パワーが使えないんです。一応説明しますとですね、此処にはわたしを信仰する信者が居ません。女神はそれぞれ己を信仰する信者から送られる神聖な思いを力に変えています、ですが此処には違う女神が居るようです。わたし達が先程居た世界とは、別の女神が。」


少し困った様な顔を浮かべて女神はこう続けた。

「色々と説明しますね?」と言ってくれたので、黙って聞く事にする。


「わたし達が居た世界を、仮に正史世界と称しましょう。そして、こちらの世界を幻史世界と称します。まぁ簡単に言えば異世界とでも認識して下さい。貴方が先程まで居た世界とは、全く別の理で進む世界です。」


俺は既に混乱しているが、何とか意識を留めて彼女の話に着いていく。


「ぱっと見た感じですが、ここは恐らく”魔法”の存在する世界。そして恐らく、”モンスター”や人を襲う野盗なのが蔓延る世界でしょう。」


そこで一旦言葉を切り、自分達の後ろを振り向いてそちらに指を差した。

彼女の指差す方向を見る。そこに広がっていたのは、何か良くわからんモンスターと魔法とか武器で戦っている一行の姿だった。現実味が無さ過ぎて逆に理解出来てしまう程だ。

炎とか、氷とか、剣とか、杖とか。ゲームの世界かよって感想が正直しっくり来る。


彼女がこちらに振り返ったので、話の続きに待機する。


「正直、ただの素人である貴方と一緒に居るとモンスターに殺られそうですが。そこはわたしが女神パワー(自前)で何とかするので安心して下さい!」


……、俺の動揺のせいでこうなったのは理解しているから何も言わない。


それに今、彼女が唯一頼りになるのは事実だろう。

別に元の世界に未練何か一個も無いけど、死ぬよりマシだ。


そこで彼女はまた少し考える素振りをとる。

あれこれと考えて居たのだろう、少しだけ時間が経った後言った。


「そうですね……、まずは街や村に行くことにしましょう。あちらで戦っている人が居たと言うことは、少なくとも人は居ると言う事ですからね。それに、魔法が存在すると言う事はまだ望みはありますし。わたしだって、ここで野垂れ死ぬのなんかごめんですし!」


その意見には大いに賛成だ。

それにRPGなんかじゃ最初の町を探すのは鉄板だしな。


「解った。出会ったばっかでお互い何も知らねーけど、頼りにしてんぜ女神様。」


「ふふーん、わたしに任せて下さい! こうなった原因はわたしにもありますし、しっかり貴方をお家まで届けてみせますよ!」


俺たちはがっしりと握手して、お互いの意識を重ねる。


さて。これからどうなるか何て解んねーけど、生き残ってやりますとも。


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