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自称女神の付き人探し。  作者: あきしぃ
第一章【幼女と出会ったアルバイター】
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謎の幼女、襲来。

呆然と、目の前で口の端を吊り上げてドヤ顔を浮かべている幼女を観察する。観察すると言うか、むしろそれしか出来なかった。大声を上げるわけでもなく、恐怖で動けないわけでもなく、ただただ疑問符が浮かんでしまい動けなかったから。仕方なく、彼女を見ていた。


身長は恐らく中学生……、小学生くらいだろうか。最近の小学生は発育の良い子も多いと言うし、よくわからん。いわゆるぺったんこ、平らな胸を筆頭に凹凸の少ないボディ。腰に両手を携えてこちらを見下している顔はそれはもう美少女だった。


……だが、どこか抜けていると言うか。


眉を逆ハの字にして、若干のツリ目は両目とも綺麗な赤色。吸い込まれそうなその瞳から少し上に視線をずらせば飛び込んでくる髪。金髪だ、すっげー綺麗な金髪。それをいわゆるツインテールにして腰よりも下に伸ばしている。あれ、毛先が地味に赤い。目の色と同じで赤い。


そんな彼女が着ているのは白いワンピース。膝上あたりまであるタンクトップ型だ。────寒くないのかなぁ。


と、返事も返さず観察されているのに気づいたのか。彼女は不機嫌を隠そうとせずに、顔をしかめ腰を曲げてこちらに顔をよせた。あ、なんか良い匂いが。


「もしもーし、聞いてますか? あ、もしかしてわたしが可愛くて驚きで声も出ませんか! いやぁ仕方ありません、天界でも随一の美少女ですから! その気持ちはわかりますとも、えぇ!」


怒ったと思ったらすでに笑っている。そりゃもう楽し気に。


その姿を見ていた俺は若干冷静さを取り戻して、身体を起こす。

そして、いまだ此方を見ている彼女に向かい合わせになる様に座り直しては ”はぁ” と軽い深呼吸と共に姿勢を正す。


言いたい事、聞きたい事は色々あった。


帰り道で感じた嫌な予感の正体は君か、ドアの前で声をかけて来たのは君か、どこから入って来て、何時の間に俺の前に現れたのか、そして……さっきの言葉の意味は何か。


それを察したのだろう、彼女は嬉々とした表情のまま言った。


「おやおや、言いたい事がありそうですね。どうぞどうぞ何でも言って下さい!可愛い可愛いこのわたしが、どんな質問でもお答えいたしましょう!」


と。


ならばと、こちらも質問を投げかけることにしよう。

色々と言いたい事はあるけど、どれから聞くかな……。


「不法侵入って言葉、知ってる?」


しかし、人間と言うのは面白く出来ている。

疑問や不満を解消するより、保身や現状を打破する事を優先してしまうのだ。

事実、俺自身も俺の言葉に驚いている。それは彼女も同様だった様で、ぽかん。と言う擬音が似合う様な、この場合鳩が豆鉄砲くらった様な顔をしている。


暫くして、彼女は明らかに動揺した様に目を泳がせて口をぱくぱくさせ始めた。

人差し指同士を、つんつん。と合わせて明後日の方向を向いたままぼそぼそと呟いた。


「いや、あの……もっとこう、聞くべき事とかあるんじゃないですか? どうやって入ったの、とか。君は誰? みたいな、……そういうのが。」


「じゃあ聞くけど。どうやって入ったの? ここ、俺の部屋。君、赤の他人。知らない人が自分の部屋に居たらどう思う? めっちゃ怖いよね、俺今その状況なんだけど。」


間髪入れずに口が動いていた。

それを聞いた彼女は冷や汗までかき始めた。どうやら罪悪感とか、自分がやっちゃいけない事をやっていると言う自覚はあるらしい。根はいい子なのかも知れない。


でも、それはそれ、これはこれ。

俺はその場に立ち上がって床を指さして言い放った。


「正座。」


「……はい。」


もう一度言うが人間と言うのは面白く出来ている。

自分が優位に立った時、これまでの立ち位置と言うのは一気に入れ替わってしまう。

先程までのドヤ顔はどこへやら。借りてきた猫の様に大人しくその場に正座して泣きそうになっている幼女にこっちが罪悪感を感じてしまうほどの錯覚を起こしつつ、話を進めていくことにする。



はてさて、何から聞いていこうか。

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