アルバイターの憂鬱。
皆さん初めまして。
俺はしがないアルバイターの日々谷将吾!24歳です!(独身童貞フリーター)
高校を卒業し一人暮らしを初め、大学の奨学金を返済するためにアルバイトをこなしつつ、卒業後今のレストランでフロアリーダーを任されやめるに辞められなくなってしまった哀れな男です。
週休ランダム、時給850円のファミリーレストラン・シャンデリアで働いてます。
あ、シャンデリアって言っても豪華な船とか屋敷とかにある伝統的な明かりとしての役割を果たしている灯火を支持するための2本以上の腕木を有し、天井からつり下げられた照明器具みたいな煌びやかな装飾ではなく。普通の一般的なただのレストランです、庶民的です。
スパゲティやピザが400円以下で食べられます、是非ご来店下さい!……と、宣伝も終了した所で一つご報告があります。
俺はこの度、自称女神様の付き人候補に選ばれてしまいました。
え?なんの事かって?大丈夫です、俺にも分かりません。
事の発端はそう、いつもの様にバイトを終えた帰り道でした……。
季節は冬。
2月中旬、まだまだ冷えるこの時期。皆様いかがお過ごしでしょうか。
昼間から深夜まで働いていたレストランでのアルバイトを終えた俺は他の従業員に適当な挨拶をした後、さっさと着替えて店を出る事に。
はぁ、と息を吐けば白い煙となって胡散する様を見つつ寒空の中帰路を歩く。一応車の免許は持っているものの、家から歩いて数分のこの店に使うほどでは無い。
途中、24時間光を照らし続けてくれているコンビニへと足を運んでは暖かいコーヒーと小腹が空いたのもあり、おでんをいくつか購入。退店すれば即、かしゅっ。音を立ててプルタブをあけて一口飲み込む。
「はぁ……あったけぇ。」
喉を通り身体を温めてくれる味に、思わず口から漏れるのは至高の一言。改めて帰路についた俺は、そこである違和感を感じる。
”誰かに見られている気がする”
あくまで気のせいだろうと思い込みつつも、妙な感覚を覚えて早足になってしまう。
家まで残り数十メートル、高校を卒業した後ずっとお世話になっているアパートは綺麗とは言えないもののしっかりと家の役割を果たしてくれる。そこに入ってしまえば問題無い、大丈夫。ストーカーされるような覚えは全くないし、霊を感じ取れるほど霊感が有る訳でも無い。つまり、本当に気のせい。大丈夫。時間が深夜だから、ちょっとした雰囲気に気圧されているだけだ。きっとそうだ。
そんな考えで抱いた妙な感覚を振り払いつつ、アパートの入口までやってきた。
しかし、その考えは甘かった。
───── 「お前に、決めたぞ。」
やっとの思いで家の扉、鍵を差し込んだドアの前まで到着した俺の耳を横切ったのは……恐ろしい悪霊の怨念の声でも無く、ましてストーカーなどのおどろおどろしい声でも無く。
忘れもしない。可愛らしい、女の子の声だった。
「……どなたでしょうか?」
想像していた恐怖よりもランクは下だったものの、暗がりで急に声をかけられた俺にしてはよく言葉が出せたと思う。
しかし返答は無く、恐る恐る振り返ってみても人の姿はそこには無かった。
未だ疑問や疑念は残るもののこのまま外に居ては気も紛れない。そう判断した俺はそそくさと鍵を開けて自宅へとようやく帰宅する。
「はぁ……ただいま、っと。」
安心出来る場所へ着いたという安心感からか、ため息を吐きながら誰もいない部屋への挨拶を済ませては靴を脱いで明かりを点ける。
部屋は狭いながらもくつろげるほどの広さは保っている、中央に置かれた机の上に買ってきたおでんの袋を置いて俺は床に寝転んだ。
そこでどうしても考えてしまうのは先程の女の子の声。
誰もいない、音もしない、そんな中でも恐らく直接俺に言われた言葉。
──── お前に、決めたぞ。
考えても考えても答えは出ない。
何せ俺は普通のフリーターだからだ。
収入も多くない、顔も……悪いわけでは無いけど良いわけでもない、勉強も一応は出来るものの、どちらかと言えば謎解きとか推理とか、そっちの方が得意だ。昔からスポーツは割と得意だったから体力はある、けど特出したもの何て持ってない。
駄目だ、いくら考えても決められる意味が解らない。
もしかして死神とかで、俺はもうすぐ死ぬとか?
いやいや、それこそ……。ないとは言い切れないか。
「わっかんねぇ、けど気のせいかも知れねーし忘れるかぁ。」
どれだけ考えても解らないなら、考えなければ良い。
そうだ、何せ気のせいっていう選択肢が一番正しい。
そうだそうだ、気にしなくて良いんだ。
明日もバイトはあるし、早めに ──────
「切り替えが早いのは良い事かもしれませんが、もっと現実味を持った方がいいと思いますよ。何せ貴方は、わたしが見定めた男なんですから!」
何時の間に、どうやって、どこから。
寝転がっている俺の目の前には、こちらを見下す……幼女が居た。