衣服
なかなかに不恰好な文章で………
俺は奴隷と一緒に家に着く。
屋敷の中央にある玄関の前に立ったとき奴隷は感嘆の声を漏らした。1人で住むには少し――どころかかなり大きい屋敷は小さい子どもにはより大きく見えるのだろう。
1人で住んでいた時も部屋を余らせていたので奴隷が住んでも問題はないだろう。むしろそれでも余るくらいだ。
俺は奴隷に屋敷に入るのを促し、自分も屋敷の中に入る。
屋敷の中に入った奴隷は口を開けて呆けている。屋敷の玄関もそれなりの大きさがあるので驚いているのだろう。
それだけでなく、そこそこ豪華な作りだ。床には細かい刺繍がほどこされた絨毯、目の前にある大きな階段、天井にはこの大きな玄関全体を照らせるほど大きい照明具が吊るされている。
「こっちにこい」
と、俺が先に歩き始め奴隷はそれを追いかけるようについてくる。
まず衣装部屋に行く。玄関の階段から二階にあがり右手に行って三番目の部屋が衣装部屋だ。
衣装部屋の扉を開けると俺の服だけでなく、老若男女問わず様々な服が置いてある。
なぜ、使いもしない服がこんなにあるかというと、とある腐れ縁のやつが「こんなのみつけてきたー」などとぬかしながらこの衣装部屋においていくからだ。
「この中から好きな服を選んで着ろ。子ども用の服は左の列の奥だ」
三列ある服の列の左奥を指して言う。
奴隷はおろおろとして戸惑っていたが、俺のさっさとしろという視線に気づいたのか、左奥に駆けていく。
しばらくして、着替え終わって奴隷が出てきた。
ワンピース型のポケットが二つのついているだけの、茶色の服に白の靴下をはいているだけ。
まぁ、家事を頼むのだからそこまで派手なのをという訳にもいかんのだろうが……
「そんなのでいいのか?」
動きやすいものでももっとましなものがあっただろうに。
「は…はい…………。私はこれで…………」
なにかに怯えるように目をそらしながら話す。
自分がそれでいいのならいいんだが………。
「次はこっちだ」
俺は衣装部屋をあとにして、次は靴部屋に行く。
とある腐れ縁のやつが次々といろんなものを持ってくるため数が多くなり、収納できるスペースが限られてきたので、余っている部屋にそれぞれ専用の部屋を作ったのだ。部屋は余ってるからいいのだがあいつに無駄な労力を使わされるのが気に入らない。
衣装部屋のさらに三部屋向こうにある靴部屋につくと俺は奴隷に
「子ども用は右手中央の上から二段目だ」
左右に向かい合って並んでいる四段の棚の中央を指す。
それだけ言うと奴隷は中央に向かって歩いていく。
ふと手前の棚にある靴に目がいく。棚には何十種類の靴がおかれていた。一般的な皮の靴や奇抜な形をしたデザインのもの、ガラスの靴に藁で編まれた靴、なんのためについているのか知らないが車輪がついた靴まである。よくもまぁ、こんだけの衣服や靴を集めてくるものだ、と呆れ混じりに感心(?)した。
それにしても靴を選ぶだけで時間がかかりすぎではないか?
中央にいる奴隷の方を向くと、棚の前で困惑しているようだった。
「どうした」
と、奴隷の方に近づくと
「っ!……………ご………ごめんなさい………」
なぜか謝る。
棚に目を向けると、なるほど奴隷の背丈では上から二段目の棚には手が届かないらしい。
「すまなかったな、配慮が足りなかった。」
「いっ!いえっ!!……………ごめんなさい………」
「いや…………しかし、声をかければよかったのに」
「ご、ごめんなさい…………………」
「謝らなくてもいいのだが…………」
あまりにも謝るのでこっちが戸惑う。
「どれが欲しい?とってやる」
「あっ………えっと、その、それで………」
奴隷は俺の一番近い靴を指差す。俺はその靴をとる。
「これか?」
奴隷は小さく頷いた。
格好はこんなものでいいか。
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