序章
よろしくお願いします
つたない文章ですが…………(照)
暗い道。昼間だというのにそこら辺にある蝋燭の火を消せば真っ暗な闇がすべてを包み込むだろうほど暗い。
鼻には甘ったるい香水の匂いや煙草、酒の匂いが突き抜ける。
微かに聞こえる男の話し声とどこからか聞こえる女のかわいた嗤い声、暗い道を駆け回る鼠の鳴き声、それに足音。それだけがこの場に音をもたらす。
目の前には黒一色のスーツを着て、黒いグラサンをかけ、やる気のない顔でポケットに両手をいれながらコツコツと歩く細みで背丈や手足が長めの男。
その男の後ろを黒いナイトローブを着て歩く。
黒スーツの男は木の扉の前につくとこちらを振り返り
「……どうぞ」
と、小さな声で言った。
俺は黒スーツの男の横を通り、扉を開ける。
中に入ると獣臭や死臭が漂ってくる。
薄暗いがさきほどの道よりは明るく、中の様子をある程度照らしている。蝋燭の明かりが照らすのは無数にある檻、その中の生物、怪しげな道具。そして、部屋の中央に立つ背は低めだがぽっちゃりとした体型で、黒い燕尾服のような格好をして、神経が逆撫でされるような笑みを浮かべ
「んん~~?よぉ~こそいらっしゃいましたぁ!きょぉ~はどんなご用件でぇ?」
と挨拶をする不気味な男。
俺は
「今日は奴隷を」
と簡潔に要件を言う。
「はぁ~いはいぃ、奴隷でございますねぇぇ?ご注文や値段設定などはございますでぇ~しょ~かぁ?」
「家事が得意なやつを頼む。値段は高すぎなければなんでも」
「わぁ~かりました!ではこちらへぇ!」
燕尾服の商人は右側にあるカーテンの奥に案内する。
カーテンの奥は手前の部屋同様、たくさんの檻がおいてあり、人が入っている。そのほとんどが女で、男もいなくはないが数は少ない。家事向きのをと注文をしたためであるとは思うが。
「さぁ~てぇ?どれになさぁ~いましょぉ~かぁ?」
俺は檻の中を順番に見ていく。
申し訳程度に身に付けている布地、怯えた表情や憎しみの表情、歳は成人から幼い少女までいる。
先ほど人とは称してたが、純粋に人と呼べるものはすくない。
人の形をしていながら、うさぎや猫、犬などの耳や尾をつけているものや、ワニか蛇らしき鱗が顔におるものもいる。
そういう混血が奴隷として売りに出されることが多い。
特にピンとくるものがなくどうしようか悩んでいると、目の端に檻が一つ。
ただでさえ暗い部屋の明かりが届かない場所に置いてあるその檻を指して
「あれは?」
と聞く。
「ん~?あれでございまぁすかぁ~?」
奴隷商は檻を明かりの届く範囲まで持ってくる。
「これはあまりオォススメでぇきませんねぇ?家事の能力はそこそこしかできなぁいあげくにぃ、しょぉ~しょう病気持ちでぇございまぁしてぇ~」
「家事が苦手なのか?」
「ほかのぉに比べるとぉ劣ってるぅというだけでぇ、苦手というほどではぁ~」
「病気というのは?」
「すこぉしやっかいなびょぉ~きでぇ~してぇ~人にはうつりませんがぁ~?高い薬でないとぉなぉらないのでぇ~すよぉ。熱がでぇるとぉ数日の間ぁ寝込んでぇ仕事にぃならないのぉ~でぇ~すよぉ」
俺は顎に手を当て檻を覗き混む。
中には十代半ばの白髪の少女がいた。混血にしては珍しく、耳は無いが尾はあるタイプらしい。尾は猫のものだ。
俺がじっとみていると少女はケホケホと咳き込み目を閉じ俯いていた顔を上げた。
目は吸い込まれそうなほど綺麗な薄い緋色をしている。少し不安げにこちらをじっと見つめる二つの緋色の目。
俺は数秒間、彼女をみたあと檻から顔を離し
「この子を貰おう」
と、奴隷商に言った。
「いぃのでぇ~?値段は安いですがぁ結構やっかいなぁしょぉ~ひんでぇすよぉ?」
「あぁ、問題ない。いくらだ?」
「1万クロウでござぁいます!」
俺はポケットから金貨の入った袋を取り出し、金貨を10枚奴隷商に渡した。
「まぁぁいどぉぉぉ!!ちょぉぉ~~どぉ!いたぁだきますぅ!」
奴隷商は不気味な笑みをこぼすとポケットに金貨をしまい鍵を取り出した。少女の入った檻を開けて少女を外に出す。
「でわぁ、印をつけますのぉでぇこちらにぃ~」
そういうと一番最初に入った部屋に少女を連れて戻っていく。
奴隷商は印をつける筆のような道具を用意し
「では、血を少々いただきます」
と、なぜか先ほどまでの不気味なしゃべり方を止めて真面目なトーンで喋ってきた。
俺が少し不思議に思い奴隷商をじっと見ていると
「印をつけることは儀式のようなものですので、私もちゃんとするのですよ」
そういうものか。
どうでもいいと思い、置いてあった小さなナイフで指を切る。
血が出てきて、落ちそうになったところを奴隷商が筆で受けとめる。
「では………」
と、奴隷商は少女の着ている布を少し引っ張り、少女のうなじの少し下あたりに筆をつける。
すると、筆をつけた部分が赤く光奴隷の印となる模様が浮かび上がる。
光がおさまると
「こぉぉれでぇおしまぁいぃ、です!」
と、元の口調で終わりを告げた。
俺は少女の手をとりこの場をあとにした。
暗いもときた道を少女と歩いていると少女が
「あ、あの…………」
「ん?なんだ」
「いえ………あの……あなたが、私のご、ご主人様ですか?」
「んー………あー……………まぁ、そうだが……………ご主人様は気に入らないな」
「え?」
「違う呼び方にしろ」
「え、えっと……なんて呼べば……?」
「そうだな………………………………………………………………ロウとでも呼べ」
「ロウ?」
「ロウ、それが俺の名前だ」
「ロウ……………」
「なんだ、文句でもあるのか?」
「い、いえ!……な…ないです………」
「そうか」
思い付きで名前で呼ばせてみたが、むず痒い。
だがまぁ、ご主人様よりはましというものだ。
そこからは無言で家を目指す。
物語を書くって難しい………