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エンドレスフール   作者: 和銅修一
6/21

現れた敵

「二人とも準備出来たみたいだね」

 翌日の午前十時頃、三人は支度を終えて一つの出口の前まで来ていた。

 先頭は経験者である祐。その後ろに実、千景といった具合だ。

「それでは行きますよ」

 出口は三キロほどあり、外に出るのには思ったより時間がかかった。

「なんか久しぶりだな〜。そして人っ子一人いない」

 この世界の特徴ともいえる静けさは逆に二人の不安を掻き立てた。

「ここからスーパーまでは十分弱かかるのでアラルがいないことを確認しながら行きましょう」

「監視カメラがあるから安全は確保できるじゃなかったの?」

「全てというわけではないさ。多すぎるとアラルたちに気づかれてしまうし、実際幾つか壊れている」

 ここに来る前に渡されて耳にはめた小型のインカムから聞こえた情報が真実かどうか周りを見渡して確かめてみると所々に壊された監視カメラの残骸があった。

「そうみたいだね〜。見つけ次第壊されたって感じ〜」

 上手く隠れているカメラは無傷なので他のカメラは敵にもうないという思わせる為の犠牲になって貰ったと考えれば儲け物だ。

「俺が研究所から指示をする。勝手な行動はするなよ。特に新人の変態。お前、昨日の夜中に女の階にいたよな」

「な、なぜぇそれを?」

 目の前に相手がいないというのに両腕で顔を隠してあからさまなリアクションをとる。

「研究所にも監視カメラはしっかり設置してあるからな。お前の行動など筒抜けだ。防犯として監視カメラに顔認証しておいた。これで女の階に篠春 実が足を踏み入ったらブザーが鳴る」

 顔認証ってデジカメとかにあるあの顔認証?監視カメラにもあるだ〜。最近のはすごいね〜。

「それなら安心ですね」

「女は少ないから窮屈な生活になるだろうからな。これぐらいは当然だ。ストレスで任務に支障がでたら困るしな」

「待ってよ。それだとお忍び〜とか覗きが出来ないじゃないか?」

 一人だけ必死に反論するものがいるが、三対一で却下され、女性の部屋の安全が決定的なものとなった。

「では、スーパーに行きましょうか」

「無視?人の意見は聞かなきゃいけないって親に教わらなかったの」

「変な人と関わってはいけないと教わりました」

「うひょ〜、ご両親に挨拶する時は大変そうだ」

「なんで先輩と私の両親が会うことになるんですか?それにここから出なきゃ親に会えませんよ」

 ループを抜け出したとはいえ、現状はまったく変わっていない。四月一日のままだ。

 まずはここで生き残る為に食料を調達をしに外に出たるのだ。




「スーパーまであと一キロぐらいまで来ました」

「そうか。そのまま慎重に進んで行ってくれ」

 細かく報告をしながらゆっくりとスーパーへと近づいて行くが慎重なので普通よりも何倍もの時間がかかっている。

「なんだか飽きちゃうな〜。敵のアジトに潜入して陰謀を暴くみたいのならテンション上がるんだけどな〜」

 実がこの世界に来る前にやった戦略諜報アクションゲームと比べるてしまうと、やっぱり食料諜報は地味すぎる。

「敵のアジトなんてありませんよ。アラルは基本単独行動ですから」

「私たちみたいに固まって行動しないんですね。でもそれだと色々と不便そうですね」

 こんなところに迷い込んだ二人が生活出来ているのは研究所の皆が助けてくれたからだ。それがなかったらどうなっていたか分からない。

「アラルは食事とか必要ありませんし、自分の能力を知られたくないということがあるんです」

「アラルは仲間意識がないんですか?」

「そもそも自分が何者か分かっているかどうか……。まだアラルについては分かっていることが少ないようですから断言は出来ないのですがボクたちでなくて同じアラルも警戒しているんでしょうね」

 敵かどうかも分からないのに手を組む者などいないのだという。

「だがアラルもほぼ人間と変わらない。弱い奴は同じ弱い奴を見つけて手を組むし、仲のいいものと行動を共にしていることだってある。まあ、これは他国の報告によるものだがな」

 アラルは何も日本だけに存在しているものではない。このループから抜け出た世界ならば何処にでもいるのだ。今の情報はその中で一つの国から他の国全体に伝えられたデータで世界各地の国の責任者が情報交換を強いられている。

 しかし、ここで取れた情報は大したことはない。平和と考えればいいのだがそのせいで戦闘員が少ないのが否めない。

「アラルも人もそれぞれってことか〜。でもアラルと人との区別ってどうつけるの〜」

 人間とあまり変わらないのなら戦う時に間違ってこっちに来た人間を攻撃してしまったら目も当てられない。

「その点については大丈夫だ。他の国の者は絶対に来ないからうちの研究所の者たちの顔を覚えてそれ以外の顔を敵だと思えばいい」

「なんかザックリしてますね」

 しかし単純なほど分かり易い。

「そうだね。だから戦う時は派手にやっちゃっていいから。ほら、行くよ」

 周りにはなんの姿もなく安全なタイミングを見計らってさらにスーパーとの距離を詰める。続けて進もうとしたがインカムから響いた声がその足を止めた。

「待て!隠れるだ」

 玄馬にしては珍しく、感情のこもった怒鳴りを発して三人を驚かせた。

「うわぉ。どしたの?いきなり。結構順調に来てたのに〜。それにスーパーまであともうちょっとだよ」

 スーパーは目視出来るし、大きく感じられる。

「監視カメラが壊された。そこからあまり遠くない場所だ。これだと帰る時に鉢合わせになるかもな」

 そんなもの壊すものなどアラルしかいない。だからこそ迂闊に動けないのだ。

「でも、そんなのたまたま見つけられたから壊されたんでしょ。僕たちに気づいてないんだから先にスーパー行って研究所までは他の入り口からにすればいいじゃん」

 まだギミックを完全使いこなせていない実は無駄な戦いは避けたい。それは祐も同じだ。

「そうですね。ボク一人なら何とかなるかもですけど、今回は戦闘が目的じゃないんですから」

「だよね〜。僕もそんな無茶したないから祐たんに参戦だな〜。それでは責任者様は指示を」

「わたしには聞かないんですね」

 頬を膨らませてムッとするのら話にでなかった千景。

「わざとだよわ、ざ、と。僕は千景ちゃんが何を考えているかが手に取るようにわかるんだ。それとも千景ちゃんはアラルと戦ってみたかっかのかな~」

「そんなことありません。私は常人なのでそいった奇抜な発想は持ち余していません」

「やっぱりね~。これで僕と千景ちゃんの心はつながっていると証明できたね」

「なに嘘言ってるんですか。ただ私の性格からしてどう行動するか予測しただけじゃないですか」

 千景の考えることはごく一般てきなことだ。

 今であればアラルには会いたくないな~とか、やっぱこの先輩めんどくさいな~とかである。実でなくとも大抵の人なら予想がつく。

「おい、新人がしゃべっている間にもう二つやられた」

「それがどうしたんですか?たまたまでしょ~」

 相手は一人を好む非人間だ。なにをしてくるかは知れたものだはないが襲いに来ているわけではないのであまり危機感というものない。

「呑気なことを言ってる場合か!今残っているのはうまく隠してあるカメラだけだ。それが連続で、しかもこの短時間で合計三つも壊されたんだぞ」

 インカム越しでも険しい顔をしているのがみてとれる。

「それってなんかやばかったりする?」

「当たり前だ。監視カメラは俺たちの目だ。それが潰されるとなると今後の作戦ができなくなる場合がある。そうなったら地球をもとに戻すことが困難になる」

 核爆弾のスイッチが押されそうだとか派手な危険ではないのでやはり危機感はあまりない。

「で、その監視カメラを壊して回ってるアラルは今どの辺にいるの?」

 先ほどここら辺のいると言っていたので場所は監視カメラが破壊された場所と次に壊されたカメラの位置、それまでにかかった時間を合わせて考えればおのずとわかってくはずだ。玄馬はその計算を驚くべき速さで済まして敵の位置を割り出してみせた。

「お前らの右側の五百メートル近くのところにいる。スーパー方面に向かっているな」

「そうか〜。スーパーらへんにいるなは厄介だね〜。食料を持ったらまともに戦えないだろうし、ここは先に三人で倒しに行った方がいいんじゃない?」

「でもボクたちの存在に気づいてないなら隠れながら食料を持って行けばいいだけの話だよ」

 やる気満々の実とは裏腹にこの任務で二人の保護者役になった祐は慎重を期していた。

「何を怖気ずいている。お前は目潰しを仕掛けて来たやつから逃げるつもりか?これ以上監視カメラが減るのはこちらとしては困る」

 ただでさえ監視カメラを取り付けるのには苦労したのだ。それが今、いとも簡単に壊され続けているのは無視できない。

「ですがそれでは二人が……」

 別行動をとるにしてもこの世界の外では常に危険がまとまりついてくるものだ。最近力をつけ始めて来た二人には厳しすぎる。

「その二人が心配ならそいつらの意思を聞いてみろ」

 インカムの声は三人同じものが聞こえるようになっている。

 渋々二人の顔を交互に見て、その答えを確認することした。

「え〜、玄馬さんはあんな事言ってたけど何も危険なことに足を突っ込む必要はないんだよ。敵の目的は監視カメラみたいだからそれがないところに身を隠せばいいだけの話だし……」

 どうしても巻き込みたくない祐はそんなことを口走ってしまった。ギミックを教えた弟子みたいな二人のことを心配しているのだがそれは逃げてもいいんだよと言っているだけに過ぎず、師匠としてはあまりにも情けない姿だ。

「祐さん。私たちは覚悟を決めてあるんです。その為にギミックの特訓を必死になってやりました。気を遣う必要はないんですよ」

「そ〜そ。千景ちゃんの言うとおり。僕らは祐たんと同じ戦闘員なんだから戦うことぐらいできるさ」

 その意思は迷い続けていた祐の思考を単純なことへと導いた。

「そうだね。玄馬さん。ボクは二人を信じてみることにします。敵の現在位置教えてください」

「お前らの近くにある公園に向かっているな。それもかなりのスピードで。気をつけてかかれよ」

 三人は指示通り、スーパー前にある公園へと走った。




「ここで様子を見ましょう」

 先に公園に着いた三人は出口付近に移動してジッと待つことにした。

 この公園の特徴は真ん中にある池でいつもは鴨が泳いでいたりするのだが、この世界は動物がいないのでその姿すらない殺風景になっている。

「誰もいない公園……。ちょっとドキドキするね♪」

 などと緊張感のない一言を発したのは説明する必要がないかもしれないが草木で身を隠している実だ。

「しませんよ。先輩はもっと緊張感を持ってください」

「大丈夫だよ。いざとなったら本気出して千景ちゃん守るから」

「言葉だけなら誰でも言えますよ。それに私はもう先輩には期待しないことにしましたから」

「そんな!あんなに愛し合っていたのに」

「やっぱりそういう関係だったんですか?」

 口元を抑えてビックリする祐。

「嘘に決まってじゃないですか。先輩のことは信用してはいけませんよ。なんたって変態の申し子ですから」

「ちょっと千景ちゃ〜ん。それは心外だな〜。僕だってやるときはやるよ〜。なんたって男だからね」

 ドヤ〜という擬音が聞こえてきそうなほどのドヤ顔を二人向ける。

「ボ、ボクも男ですよ〜。そんな意地悪する実さんなんて嫌いです」

 こちらもプイッという擬音が聞こきそうなほどに可愛らしくそっぽを向いた。

 しつこいようだが祐はこれでも男だ。

「そんな〜。でも僕はそんな祐たんも好きだよ〜」

「先輩は可愛かったらいいんですね」

「あれ?もしかして焼き餅焼いちゃった?」

「そんなことありません。それよりも気を引き締めてください。お見えになったようですよ」

 草木を影にしゃがんでいた千景がさらに下へと隠れるたので他の二人もそれに従って隠れて公園の入り口へと目を向けた。

 そこには全身黒タイツを着たバイク乗りがいた。バイクも黒でヘルメットも黒だ。

「あれがアラル……」

「少し普通のとは違いますがそうです。あれがボクたちの敵です」

 バイクのハンドルが回ってエンジン音が公園に響いた。

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