イフトリガー
「ふふん、ついにこの時がきた。ライダーさん。最速の名は僕がもらいますよ」
「なにいうとんねん。アマチュアの兄ちゃんがわいに勝てるんけないやないか」
「甘いですね。僕がこれまでに何もして来なかったとでも?」
「ま、まさか……この短期間であの技を会得したというんか」
「そのまさかです。僕はあのギルティターンドライブを師匠から授かってきた。たとえライダーさんでもこれで負ける気はしない」
「ば、馬鹿な……。あいつがお前に教えたんか?つまりあいつが認めたいうこと。おもしくなってきたやないか」
「おい、中二病。そろそろ準備しろよ。今回の敵はふざけてたら命もってかれるやつだ」
バイクに乗った実とバイクを注意したのはアメリカなバイクの後ろに鎮座している仁だ。
もちろん場所は外。誰もいないから暴走しても迷惑はかからない。
「今回の作戦はまず逃げることが大事なんだぞ。お前たちはそれが分かっているのか?」
日本刀かよ!とツッコミたくなるほど鋭い言葉だ。
「もちのろんだよ。僕たちがジンジンを乗せながら逃げてその内にジンジンは力を溜めるんでしょジンジン」
「お前、ジンジンって言いたいだけだろ。まあ、間違ってはいないだかな」
勝てる自信がないのでここはどんな手を使っても勝とうと思った結果、一番強い?と思われる仁を敵と当たらせることにしたが溜めが長いということでこの二台で時間を稼ぐことになった。
「はぁ〜、僕はこんな作戦やりたくないんだけどね」
「やり方なんて選んでなんていられる立場じゃないんだから黙って運転してろ」
「いや、そうじゃなくてここには可愛い子がいない!」
空に向けて両手を広げて悲しい現実を示す。
「は?」
「だって咲さんは研究所の守りでしょ。千景ちゃんは祐たんと待機……。これじゃあやる気なんて出ないよ」
「そういった割り当てなんだ。文句を言っても仕方ないだろ」
決めたのは玄馬だが、これを変えている時間などもうない。
「でもさ〜、なんで僕が男を乗せなきゃいけないのかな〜。それに役目なんか地味だしさ〜」
「素人がでしゃばろうとするな。まだまともに戦ったことなんてねーだろ」
ライダーとはほとんど戦っていない。ただ追いかけて後ろから不意打ちをしただけで本当の戦いを知らないのだが、少しモヤモヤする。
「それはいいよ。喧嘩なんて一回もしたこともない僕がでしゃばる事じゃないってことは分かってるけどさ、リブルっていうやつの事も良く知らないのに戦うっていうのもなんか嫌なんだよね〜」
「何を言ってる。辻斬りのリブルだぞ。奴はどちらに属さないからアラルとか人間とか関係なく切り刻まれるぞ」
その点においては人間を殺しにかかってくるアラルなんかよりもよっぽどたちが悪い。
「そんなのただ噂を聞いただけでしょ。リブルが日本に来るのは初めてなんだからジンジンはリブルと話したり、戦ったりなんてしたことないんだから。それに僕はなんでライダーさんがそれを知っていたかと、逃げてる理由だね〜」
玄馬から聞いてきたのだが、リブルが日本に来た形跡はない。それにここの戦闘員が国から出て行くことなど全体の数的にありえない。
「わいを信じれへんのは百も承知や。それでもリブルには仲間がやられとる。敵討ちしたいと思うんは心あるもんにとっては当たり前のことやろ」
アラルに性格があるということは心があるということだ。
「心があるのはリブルっていうやつもでしょ」
「なんだお前、どうしてそんなに敵に荷担する」
さっきからリブルのことを肯定するようなことばかり言ってくるのは少しおかしい。
「荷担してるつもりじゃないよ。ただ殺すのだけはやめてくれかな?玄馬さんも捕まえたいって言ってたじゃん」
「そうだな。各地を回ってるリブルなら俺たちが知らない情報とか持ってそうだからな。ただ無傷では無理だ。そこんところは勘弁してくれよ」
仁だって無駄な殺傷はしたくないし、できるkとなら誰も傷つけたくないのだ。
「ライダーさんもそれでいいですね。やつを無力化すればこれ以上お仲間が亡くなることはないんですから」
「もちろんあんさんらがそれでかまへんで。ただ命ほしさに頼みこんだことやからな。ほかの仲間が生きることにもつながるんやからな」
この場合は両方を指しているのだろう。共存を望んでいるのにどちらかが滅んでしまったら目も当てられない。
「なら今回は捕獲作戦に移行する。しかし、危険と思ったら無理をするな」
与えられたインカムで支持をするがそれを聞けるのは咲と祐だけだ。他の三人は受け取っていない。必要ないと玄馬が判断したのだろう。
「了解。そろそろターゲットがそちらに着く。準備をしておけ」
「もうそろそろ来るぞ」
前回同様、安全なところで指示をする玄馬の声で戦いが始まろうとしていを
「あ、もしかしてあれ?」
緊張感のかけらもない実が指差す先には顔と全身を覆うローブを羽織った人。ここが砂漠ならば間違っていないのだがここはビルとかマンションが立ち並ぶ道路だ。どう考えても水と油の関係だ。
「むしろあれ以外にないな。作戦を開始するぞ。距離は離れすぎず近すぎずだからな」
力を溜めるにはまず相手に嘘を付かなくてはいけない。実やライダーとの会話でそれをしても良かったのだがその場合はあまり強いエネルギーは期待出来ない。なぜなら彼を知っている者なのだからばれてしまう可能性は敵よりも高い。
嘘は相手を騙してこそ意味があるもの。気づかれていては力が半減してしまうが仁のものはそれとは関係なく少し特殊なものだ。
「このくらいかな〜」
時速二十キロから三十キロ。少し様子見だ。
「いや、もう少し上げておけ。距離を開けて置いてからあっちに合わせてスピードを落とせてやればいいだろ」
「それだとリブルに怪しまれるよ」
警戒をしているものを騙すのは困難なものだ。
「いいんだよ。俺の場合は」
なんかこれ以上言うと怒られそうなので速度をマックスまで上げたりしてちょうどいい時速六十キロというところで落ち着いた。
「ひぇ〜、めっちゃくちゃ早いね〜」
なんか壁を蹴って飛んだりしてあり得ないスピードでこちらに迫って来るのを鏡で確認するとあんなにスピードを抑えていたころが怖くなる。
「よし、そのスピードを忘れるな。徐々にこっちから近づいてみるぞ」
「「了解」」
バイクを近づけさせて右足は実るの乗ったバイク、左足はライダーの体の……まあ、同じところに置かれいる。
そんな不安定な足場で仁王立ちのような格好でリブルを見返うつ。
「もし、お前がこのバイクに追いつけたら相手をしてやる」
「もし、お前が噂通りの悪逆非道のやっだったら死ぬよりも苦しい生を体感させてやる。覚悟しておくんだな」
「もし、お前に事情があろうにも俺たちに協力してもらう」
「もし、お前が死のうとも誰も悲しまない」
「もし、お前がいくら攻撃しても俺らには当たらん」
「もし、お前の目的が俺の仲間なら容赦はしない」
「もし、俺が本気だしたらお前なんて相手にらん」
「もし、お前が俺より強くても仲間がどうにかしてくれる」
呪文のようにもしを病的に言い続ける。
「イフトリガー起動!」
高らかに技の名前を叫ぶと彼の両手が光だして球体が現れた。
その球体にはそれぞれ卓球ボールほどの大きさの四つの球体があり、それを繋げるように一本の線がぐるりと円を描いている。
「後は頼んだぞ」
まだスピードが落ちていないのに待ちきれないとばかりに道路に飛んで足でしっかり踏ん張ってリブルの前に立った。
「うわ〜今のいたそ〜」
カッいいーとか微塵も思わなかった。女性に対してならあるかもしれないが、男性にこれっぽっちの興味のない実はただ現実的なこたしか考えられなかった。
「せやな。それよかもうちょい離れようや。巻き添いくろうとら洒落にならへんからな」
敵の攻撃がどんなものかわからない以上、目に入るところにいるのは危険なのでバイクで距離をとった。
「よう、辻斬りのリブル。一度会いたいと思ってたぜ」
仁がバイクから飛び降りたのを確認したリブルは足を止めた。
「その呼び方、まだ続いてたんだ。なんか古臭いからやめてほしいだけど」
「つれねーな。それよりお前がここに来た理由はなんだ。こんなところには興味がないと思ってだがな」
「別に……。ただ探してるのがここにあるかもしれないから来ただけだから邪魔とかしないでくれる?」
腕のあるところのローブが微かに動いたのを見てそれに対抗する為に両手を少し前に出して構えた。
「残念だが、お前には聞きたいことが山ほどある。世界各地を回って来たんだろ。俺たちにそのことを教えてくれないか?特にお前たちのこと」
「……、無理ですね。なんのメリットもないことなどしたくありません」
「やっぱりそうなるか。あの野郎が望むようになってくれそうにないな」
らしくもない事をしたのは心の底で抑えていたものを誰かさんがつついてきたからだ。
「殺しはしません。ただ邪魔をしないでください」
腰に収めていた黒い刀。鞘のところが銀色で出来ていてローブで隠れていたそれを引き抜いた。
「もうそろそろ始まった頃でしょうか」
「うん。多分この感じはそうかもね」
リブルが現れた道路からそこそこ離れた場所で待機を命じられた二人は空気が変わったことを感じ取って居ても立っても居られなくなってきた。
「それにしても霧雨さん一人に任せて大丈夫なんでしょうか?」
「仁さんのギミックは少し変わってるけど強いんだよ」
「でも溜めるのが長いって咲さんが言ってたじゃないですか」
からかっている様でもあったが本人が否定しなかったのだから長いのだろうと確信している。
「確かにそうだけど結構溜めるのが簡単そうで羨ましいんですよ〜」
ギミックを使う人にとってはこれが本当にめんどくさい。体の中に核融合炉があってそこからエネルギーを取り出せたらな〜と思うほどだ。
「簡単な嘘のつき方なんてあるんですか?そんなのすぐばれてしまいそうですけど」
真実を言いながらタイミングを見計らって嘘をつくというのが一番気づかれないのだが、その嘘が簡単だとそこが浮いとしまいばれる可能性が跳ね上がってしまう。
「仁さんのは少し特別なんですよ。“もし”を話の中に入れるたけでいいんですよ」
「もし?そんな事だけで溜まるものなんですか」
「もしっていうのは不確定な言葉だから嘘と同んなじになるだよ。まあ、これは仁さんが見つけたことなんだけどね」
「え?あの人って何歳ですか」
見た目は大学生ぐらいの人だ年齢など聞いたことないし、聞けない。
「ん〜と、二十か二十二ぐらいだったかな〜。ここは時間が止まってるって玄馬さんが言ってたからそれから変わってないと思うよ」
「時間が止まってるって、そんなこと聞いてませんよ。太陽と月はちゃんと動いているじゃないですか」
登ったり、沈んだりでいつもと変わらず生活していたのでそういった自覚などない。
「玄馬さんが言うには時間軸止まってるけど空間は正常で太陽とか月とかに影響はないみたいですよ」
まあ、一言で済ませると時間だけが止まってるけどそれ以外は大丈夫ということなのだが試し様がないので困る。
「はぁ……でもなんの得もありませんよね」
寝なくても済むとかの役立つ力が手に入ったことは一切ない。
「そうなんですけど文句を言って変わるものではありませんからね」
「ですよね。それよりも作戦のこと考えましょう。先輩も待機になりましたけど私たちも近くに行って待機した方がいいですかね?」
ここでは何かあってもすぐには助けにいけない場所だ。
見つかる心配はないが、このままことが終わるまで待機ということになるのではと不安になってくる。
「ん〜、いいんじゃないんかな。実くんたちがいるし、仁さんなら簡単にはやられませんから」
勝ってくれると断言出来なかったのが彼らしいので何と無く落ち着く。
「そうですね。先輩もいますしね。それでも駄目だったら私たちでどうにかするだけですね」
戦力的には何も問題ないはず。ただ予想外のことが起きないことを願うばかりだ。