花街の闇
後の世では「江戸末期」などと呼ばれし文久3年。季節は陽の光が燦燦と降り注ぐ文月。
京が誇る花街、島原の一画に、他の揚屋とは少々趣の異なる揚屋がございました。
名を、「縁屋」。絢爛豪華な料理や見目でもてなす揚屋が多い中、この揚屋は比較的質素にして地味と言う印象を抱かせる場。
ですが、見目の質素さとは裏腹に、揚屋の出すものは、酒も料理も最上級。無論呼べる芸妓達も、美しく洗練された者達ばかり故、この揚屋は「知る人ぞ知る名店」と呼ばれておりました。
その縁屋の一室。体躯の良い、年若い男性が1人、ある芸妓を呼び、満月に1つ足りぬ月を眺めながら酒を呷っておりました。
「っくぅぅぅ。やっぱりここの酒は美味いよなぁ。五臓六腑に染み渡る。綺麗な月を眺めながら見る水菊さんの舞も綺麗だしな」
「そない誉めてくれはるのん、永倉はんだけどすえ。お世辞でも嬉しいわぁ」
「お世辞じゃないって。本当に綺麗なんだよ。揚屋の雰囲気は地味って言うか、他よりもちょっと質素な感じがするけど、そこがまた良い。芸妓のお姉さん達の美しさが際立つね」
早速酔いでもまわったのでしょうか。永倉と呼ばれた男の目元がほんのりと朱に染まり、口の端には柔和な笑みが浮いております。しかしその柔和さとは裏腹に、脇に置かれているのは刀、そして後ろに置かれているのは浅葱色に染められた「誠」の文字を背負う羽織。
京の民からは「壬生狼」と呼ばれ恐れられる集団、「壬生浪士組」の1人である証でございます。
一方で水菊と呼ばれた芸妓は、空いた彼の杯に酒を注ぎ、微笑の浮いた綺麗な顔を永倉に向けておりました。
化粧の施された顔とは言え、幼さの残るその顔から、歳は20に届くか否かといったところ。幼い頃から島原の置屋で寝起きしているのか、美しく見える指には習い事で出来たらしき胼胝があり、浮かぶ笑みは慣れた者のそれでございます。
永倉もそれを分っているのでしょうか。胼胝などと言う野暮は指摘せず、彼女に優しげな視線を向けておりました。
「これで仕事でなければ、もっと楽しめたんだけどな」
「ふふ。せやったら、お酒は程々にしとかんと。お仕事に差し支えますさかい」
「水菊さん、厳しいなぁ。まだ言う程呑んでないし、酔ってもいないぜ?」
顔こそほんのりと赤らんではおりますが、その他に酔っている様な気配は見当たりません。恐らくは言葉の通り、見た目ほど酔ってはいないのでしょう。口元に不敵な笑みを浮かべ、眼光鋭くじっと外を見つめております。
浪士組の仕事は京の治安維持。
それが少々行きすぎて恐れられる事が多々ございますが、彼らはあくまでも「京の平和の為」に働いている身。そんな彼らが、揚屋で何の仕事をしているのかと申しますれば……
「辻斬りなんて怖いわぁ。それも、みぃんな、この島原で起こってますやろ?」
「……ああ。この辺に潜伏してるんじゃないかって噂もある。だから、こうやって怪しい奴がいないか張り込んでるんだけどな」
そう。この数日、島原では芸妓が殺されるという痛ましい事件が多発しておりました。
殺された者達に通ずる点は一切無く、金目のものも綺麗に残っている。殺害の現場を目撃した者はなく、下手人の特徴も動機も掴めぬとあって、島原の芸妓達は皆、次は自分ではなかろうかと、店に上がる事にすっかり怯えておりました。
しかし、真に恐ろしいのはその「無差別さ」ではございません。島原は情報が集る場所、芸妓達の間には既に「隠された本当の死因」の話が流れ、それ故に怯えていたのでございます。
「……水菊さんは、知ってるんだよな。この件が、ただの辻斬りじゃないって」
「へぇ。島原の者なら、みぃんな知ってますえ。…………殺された子ぉが、『斬られた』んやのぉて『引き裂かれた』て」
そう。「辻斬り」に殺された者は皆、刀で斬られていたのではございません。正確には「引きちぎられていた」のでございます。
如何ほどの豪の者とて、人を「引きちぎる」など、簡単に出来る事ではございません。永倉属する壬生浪士組では、下手人をかなりの大男と推定しておりました。
――とは言え、豪腕の大男など、目立つだろうに――
人間を引き裂くなど並大抵の腕力では不可能。となれば、考えられるのはかなり屈強かつ大柄な男だと考えるのが自然でございましょう。そんな人間がいるのであれば、の話ではございますが。
ハアと、溜息混じりに永倉が苦笑を浮かべた刹那。隣の部屋から、がしゃんと何かが壊れるような音と、芸妓の物と思しき悲鳴が聞こえたのでございます。
「まさか!?」
すわ、件の下手人か。
斯様な事を思い、永倉は刀を持って悲鳴の上がった部屋へと瞬時に踏み込み……そこで見たのは、派手に酔うて、嫌がる芸妓に伽を命じる不逞浪士の姿でございました。
「ええい、金を出してやっていると言うのに、相手をせんとはどういう了見だ!?」
「嫌どす! うちは遊女やのぉて芸妓どす! 売るのは体やおまへん、芸だけどす! 勘違いせんといて!!」
「何を言う! 花街の女など、男に尽くしてこそであろうが!」
「馬鹿にせんといて下さい! うちは旦那はん以外は芸しか売りまへん!」
件の下手人でなかった事に少しだけ残念に思いつつも、永倉は不逞浪士の腕を捻り上げ、半べそのままに相手を睨みつけている芸妓から引き離し、一方で芸妓は水菊が抱き寄せるようにしながら、自身の袖で芸妓の目元に浮かぶ涙を拭うのでございました。
「おいおい。いくら酔っているとは言え、嫌がる女に無理強いは良くないぜ」
「何ぃ? 邪魔をするな貴様! 俺は護国忠臣の徒である! お国の為に働いておるのだ、女は我々に尽くして然るべきであろうがっ!」
「意味分らないから。大体、『お国の為』を謳ってんなら、民に迷惑をかけるような真似するな、みっともない」
言いながらも、永倉はギリギリと相手の腕を捻り上げつつ、絡まれていた芸妓に目で逃げるように指示をし、芸妓もそれに気付いてか永倉と水菊に頭を下げ、たったと逃げて行きました。
それを見送り、腕を掴まれている方の男は、今にも斬りかかりそうな凶悪な視線を永倉に送りますが、そんな物に動じる気配も無く、彼はあっと言う間に相手を床に押さえ込んだのでございます。
――全く。これじゃあ辻斬りの監視は無理だな。誰か屯所から応援でも頼むか――
1人で来た事を軽く後悔しつつ、永倉は男を押さえ込んだまま器用に筆を走らせ、浪士組の応援を請う文をしたためたのでございます。それを見て、水菊はにっこりと笑うとぽんぽんと軽く手を叩き……
「あやめちゃん、いてはる?」
「ここにいますぅ」
水菊の呼び声に応えるように、襖を開けて現れたのは10歳前後の幼女。切れ長の瞳は、将来ここにいる水菊よりも美しい芸妓になるのではないかと予感させるだけの意思の強さを感じられます。
彼女の名はあやめ。水菊に付き従う「禿」と呼ばれる芸妓の卵のような物でございます。
永倉も彼女とは顔見知りらしく、にこりと彼女に笑いかけます。そしてあやめもそれに返すように、にっこりと無邪気そうな笑みを返すのでございました。
「よ、あやめちゃん。相変わらず水菊さんにべったりだなぁ」
「それは違いますえ、永倉はん。うちがあやめちゃんにべったりなんよ」
「ははっ。水菊さんに大事にしてもらってるんだなぁ。時にあやめちゃん。悪いんだが、この文を浪士組の屯所まで持って行ってくれないか? 俺はほら……この状態だし」
言って、自身の下に組み敷く男を見下ろす永倉に、あやめは特に驚いた様子も見せず、こっくりと首を縦に振って差し出された文を受け取ります。
島原では斯様な事は日常茶飯事、とは流石に申せませんが、酒の席故に「よくある事」ではございました。
――こんな小さな子が、これを見ても驚いたり怯えたりしないって言うのは、やっぱ世知辛いよなぁ――
ズキリと永倉の心が痛みますが、彼には如何ともし難い事。島原に来た以上、彼女達は年季が明けるか借金を返す事でしか、この島原と言う異様な空間からは抜け出せないのでございます。
幼い頃から芸事を習い、客に呼ばれて己が磨いた芸で和ませる。
島原は花街とは言え、芸妓達が体を売るような事こそありませんが、それでも永倉の下でもがく男のような不逞の輩も少なくはございません。事と次第によっては無体も働かれる事でございましょう。
どうにかしてやりたいと思っても、永倉は彼女達を救うだけの金はない。
その事実に、永倉は眉根を寄せ、じっとあやめの顔を見つめさせてしまうのでございます。
「永倉はん? 額に溝ができてますえ?」
見られている事に何を思ったのでしょうか。あやめはそう言うと、小さな手で永倉の眉間に寄った皺に手を伸ばし、ぷにぷにと突くのでございました。
そこまでされてようやく自身があやめを凝視していた事に気付いたのでしょう。永倉は一瞬だけはっとしたように目を見開くと、すぐさま温和そうな笑みを浮かべるのでございました。
「ちょっと考え事をしてたんだ。大丈夫」
「ほならええけど。それじゃ、うちはこの文、届けてきますぅ」
「ありがとう。……だが、最近物騒だ。誰か男衆もついてもらった方が良いかもしれない」
「ほなら……ウチの銀彌について行かせますえ。あやめちゃん。前に銀彌がおるさかい、一緒に浪士組の屯所へ行ってくれる?」
水菊に言われ、あやめは小さく頷きを返すと、そのままとことこと愛らしい足音を立てて部屋から離れていったのでございます。
男衆と言うのは、芸妓や禿が寝起きする「置屋」と呼ばれる「家」のような場所に住まう、男性でございます。普段は芸妓達の着付けを手伝うのが彼らの仕事でございますが、本来の役目は芸妓達の用心棒でございます。
「銀彌か。確かに、あの人は腕が立つ。……正直、浪士組に欲しいくらいだ。前に誘ったら『ここに恩があるから』って断られたけどな」
「ふふ。銀彌は義理堅い男はんやもの。それに、連れて行かれたらうちも困りますぅ」
はんなりと笑う水菊に、永倉も困ったように笑みを返し……下に敷かれた男は、その後到着した浪士組の隊員が連れて行くまで、ずっと騒いでおったそうでございます。
*
その翌朝。
島原は再び恐怖に包まれました。
人気の少ない路地裏で、またしても「引き裂かれた亡骸」が見つかったのでございます。
群れる野次馬を押さえ込むのは浅葱色の隊服に身を包んだ者達。そして亡骸を見つめ、手を合わせる隊士の中には永倉の姿もございました。
その顔に浮かぶのは、嘆きや後悔の入り混じった苦々しい表情。
そしてそんな表情を浮かべる訳は……亡くなった女に見覚えがあったからでございました。
「昨夜の、芸妓の姉さんか……」
そう。引き裂かれたのは昨夜不逞浪士に絡まれていた娘。自分が助けた後に、斯様な目にあったのかと思うと、どうして送っていかなかったのだろうかと自責の念に囚われるのでございました。
――俺の仕事は今日の治安維持だって言うのに。守れなかった――
俯き、血が出る程きつく唇を噛み締めながら、永倉はその亡骸の向こう……見知らぬ下手人を睨み付け、思わず刀の柄に手をかけてしまうのでございます。
一瞬、捕えた不逞浪士の逆恨みと言う事も頭に過ぎりは致しましたが、昨夜はみっちりと絞っておりましたので、そのような事をする暇は無かったはず。
「永倉はん、そない唇噛んでたら、血ぃ出てしまいますえ?」
悔しがる永倉の耳に、野次馬を止める浅葱色の隊服の向こうから幼さ残る子供の声が聞こえ、それにはっと顔を上げると……隊士達の足の間から、ちょこんと顔を覗かせる禿の少女の姿と、逆に隊士達よりもぐっと背の高い銀髪の青年が並んで立っていたのでございます。
少女の方は子供特有の無邪気そうな笑みで手を振っており、青年の方は思い切り顔を顰めてそっぽを向くと言う対照的な表情ではございましたが。
「あやめちゃん。それに銀彌も」
少女は水菊付きの禿であるあやめ。そして目立つ銀色の髪を持つ青年は、彼女達の置屋に住まう男衆である銀彌でございました。
しかし、あやめはいるのにその「姐」であるはずの水菊の姿は見当たりません。きょろきょろと周囲を見回す永倉に、銀彌は口の端に皮肉っぽい笑みを浮かべ、言の葉を紡ぎだします。
「よぉ永倉のにーさん。……残念だが、水菊姐さんはいねーぞ?」
「この時間、お姉さんは舞のお稽古の最中どす。うちはお母さんに頼まれてお使いの最中なんえ」
「こんなガキのお守りとか、女将さんも人悪すぎだろ」
「百花さんも心配なんだよ。あやめちゃんも置屋の大事な『娘』なんだから」
「お母さん」とは、芸妓達の面倒を見る置屋の経営者の事を指します。水菊やあやめが身を置く置屋の「お母さん」は百花と言い、芸に厳しく人に優しい事で名の通った方でございます。
それ故なのでございましょうか。彼女の置屋に寝起きする芸妓達は、皆洗練されていると評判も高く、人気も上々。特に水菊は「末は太夫になるのでは」と人々からも期待されている程の芸妓でございます。それに付く「妹」ともなれば、これもまた将来を期待されてもおかしくはございません。
「心配しすぎなんだよ。大体、襲われてるのは芸妓だろ? 禿、特にこんな小娘を狙う物好きがいるとは思えねぇ」
銀彌がそう言った瞬間、ほんの刹那の間ではございましたが、永倉の体に、ぞわりとした寒気が駆け抜けたのでございます。
そしてその寒気の正体を、永倉は充分に存じております。死と隣り合わせ、不逞浪士などと切り結ぶ事の多い浪士組故に感じ慣れた感覚。その名は……
――殺気、だと? けど、どこから?――
瞬間的に発せられたその殺気の元を辿ろうと気をめぐらせますが、あまりにも短い時間であったが故にその出所が分りません。
そもそも、何故今、斯様な殺気を感じ取ったのかすらも不明でございましたので、軽く首を傾げるだけになってしまうのでございました。
「銀彌はんはいけずや。うちもいつかは水菊姉さんみたいな綺麗な芸妓になりますえ」
「そんな風に頬膨らませている時点でガキだっつーの」
「ははは。そこも、あやめちゃんらしい所って事じゃないか? 大丈夫。あやめちゃんならきっと水菊さんに引けをとらない芸妓になれるって」
永倉のその励ましの言葉に、あやめはそれまでの子供のような表情を消し、泣きそうな……そして同時に、どこか諦めたような、何とも言えない表情になったのでございます。
どこか老成した大人のようにも見えるその表情に、永倉はびくりとその体を震わせ……
「おい、がむしん! いつまで遊んでるんだ?」
唐突に挙がった仲間の呼び声に、永倉ははっと息を呑み……そしてあやめの顔に浮かぶ表情が、いつもの無邪気な子供の物であった事に安堵致しました。
――さっきのは、きっと見間違いだ。きっと疲れてるんだな、俺――
軽く頭を振り、自身を鼓舞させると、ぽんとあやめのつややかな黒髪を撫でて笑い……
「おっと、仕事中だった。それじゃあ、気をつけて帰るんだ。それから、夜は人の多いところを歩く事。良いか?」
「へぇ。永倉はんも……お気をつけなんし」
永倉の言葉にあやめはぺこりと頭を下げ……直後、上げたその顔に浮かんでいたのは、やはり子供の物とは思えない不敵な笑みでございました。
しかしその笑みを見たのは一瞬。彼女はくるりと永倉に背を向けると、すたすたと野次馬の中を抜けるように歩き出し……
「今宵は美しき天満月。それ故影も色濃く落ちる。……君も、人気のないところへ巡察に出て、巻き込まれんようにな」
聞こえたその声は、果たしてあやめの物であったのでございましょうか。妙に大人びたその言葉と声に、永倉はまたも呆然とするのでございました。
*
「あんな事があったってのに、呼んだりして……悪いな」
日もすっかり落ち、代わる様に浮かぶ美しい円形の月を見つめ、三味線の音を聞きながら、永倉はそれを奏でる水菊に向って詫びの言葉を紡ぎます。
彼は今宵も、この縁屋で件の下手人を張り込んでいるのでございました。それもまた、1人で。
浪士組は残念な事に、人数と言う物が然程充実してはおりません。掛け合いはした物の、人数は割けられないと突っぱねられてしまったのでございます。
今宵こそ捉えねばならぬと言う意気込みはある物の、昨夜のような不逞の輩がいないとも限りません。そうなった時、やはり1人では心許ない……そう思うと、深い溜息が意図せず口から漏れてしまうのでございました。
「あら、お酒、美味しなかったですか? それとも、三味がおきに召しまへんどしたやろか?」
「ああいや、そうじゃないんだ水菊さん。ただ……今回の件の下手人の事を考えると、無意識の内に、さ」
言って、また1つ大きな溜息。
そんな永倉に、水菊もどこか悲しげに眦を下げながら、彼の杯に酒を満たすのでございます。
「今日見つかったあの子。実は旦那はんもついて、もうすぐ落籍が決まってたんよ。……お姉ちゃん、それに落ち込んで……」
落ち込んでいる「お姉ちゃん」の事を思っているのでございましょうか。水菊もまた、深く深く落ち込んでいるように見えます。
一方で永倉も、注がれた酒を一気に呷ると、酒が回り始めたのかほんのりと目元を赤く染め、不思議そうに首を傾げて問いました。
「お姉ちゃん? それって水菊さんの姉さん芸妓さんの事か? けど、普通は『姉さん』って呼ぶんだろ?」
「ふふ。お姉ちゃんは、正確には芸妓やないんどす。でも……そうやね。うちの芸は、お姉ちゃん仕込みやからある意味間違うてまへんえ」
――芸妓じゃないが、芸を仕込む? なら水菊さんの言う「お姉ちゃん」って、彼女の芸事の師匠か――
はんなりと笑う彼女に、永倉は思わず考え込んでしまいます。
とは言え、花柳界は呼び方にも厳しい世界。お師匠を果たして「お姉ちゃん」などと呼んで良いのかどうかは不明でございます。
――その辺りは、男の俺にはわからないな――
口の端に苦笑を浮かべながらも、永倉は再度注がれた酒を呷り、月を見上げるのでございます。
「『今宵は美しき天満月』か……」
「まあ、永倉はん。詩人どすなぁ」
まさかその言葉をあやめから聞いたとは言えず、永倉はただ薄く笑うだけでございました。
そしてやおら立ち上がると、水菊にばつの悪そうな表情を向け……
「悪い水菊さん。やっぱり今日はもう帰るわ。あんまり遅くまで水菊さんや外で待つあやめちゃんを置いておく訳にも行かないし」
それだけ言うと、永倉はそそくさと縁屋から出て行くのでございました。
その胸の内に、今宵こそ下手人を捕えると心に決めて。
*
そして、草木も眠る丑三つ時。人の疎らになった島原を、1人浅葱色の隊服を羽織った永倉が提灯片手に歩いておりました。
月の淡く白い光で地は照らされており、夜の闇と相まって地に落ちる自身の影は闇よりもなお暗い色となって永倉の後をつけ、猛者と名高い永倉の心に妙な予感を植えつけていくのでございます。
今宵の巡察は別の隊の者が行っておりますが、大勢でぞろぞろと歩いても不埒者に気付かれて逃げられるだけ。なれば、少数……1人で回るが得策と考えたのでございましょう。
とは言え、やはり単独でよい闇の中を歩くのは生理的な嫌悪を抱いているのでしょうか。文月、しかも蒸し暑さに定評のある京の夜であるにもかかわらず、永倉の体には鳥肌が立ち、ゾクゾクと絶え間ない悪寒が走っていたのでありました。
そしてその悪寒に呼応するように、永倉の頭の中ではしきりに「引き返せ」と本能が叫んでおります。その本能をねじ伏せながら、永倉は極力人気の少ない方、闇の濃くなる方へ……己の本能が拒絶する方へと歩みを進めていくのです。
歩めば歩む程、闇その物が永倉の体に纏わりつき、足元からは這い上がるような冷気が昇ってくるのを感じながらも、己の職務……「京の治安維持」の為と奮い立たせておりました。
どれ程歩いた頃か。唐突に、自身の背後からカランコロンと下駄の鳴る音がついて来たのでございます。
――こんな時間に、下駄の音だと?――
訝しく思い、歩調を速めると下駄の音も合わせて鳴り響くではございませんか。
いよいよ後をつけてきているのだと確信すると同時に、永倉はすいと角を曲がり相手が追ってくるのを待ち伏せる事に致しました。
カラン、コロン、カラン、コロン。
鳴り響く音に煩いくらい鳴り響く己の動悸を無理矢理押さえつけながら、永倉は刀の柄に手をかけ……そして相手が角を曲がって眼前に現れた刹那。
彼は「相手」を見て呆然とし、相手は永倉の顔を見てたおやかに笑んだのでございます。
「あら、永倉はん。こないな所で何してはりますのん?」
現れたのは三枚歯の高下駄を履いた芸妓、それも見知った顔……水菊でございました。
その事実にほっと安堵の溜息を吐きながらも、次の刹那には永倉は少しだけ怒ったような顔をして彼女を見やり、言葉をかけました。
「水菊さん!? 何やってんだ、こんな時間に?」
「うちは、夜の散歩どす」
怒鳴るような永倉の声に平然と返しつつ、水菊は自身が持つ手元の提灯を軽く持ち上げます。
とは言え、このような時間……それも件の辻斬りが多発している中、平然と「夜の散歩」を行うとはどう言う事か、と怒ろうとした瞬間。
永倉の視界の端、水菊の後ろに何やらおかしな人影を見た気がしたのでございます。
「危ない!」
咄嗟の判断で水菊の体を抱き寄せると、そのまま大きく後ろへと跳び退ります。
その直後、今まで彼女の体があった位置には闇を練り固めたような、黒くて巨大な「腕」が伸びていたのでございます。その「腕」の先には、蒼白い顔をした男の姿もまた、存在しておりました。
「こいつが件の下手人か!」
すらりと刀を抜き、水菊を自身の背後に追いやりながら、永倉は男を観察します。
こけた頬に浮いた肋骨、目からは絶え間なく赤い血の涙を流し、口からはひたすらに怨嗟の言葉が漏れ出ております。
見た目は酷くやつれていると言うのに、腕だけは大きく伸び、すぐにでも水菊を引きちぎりたいのか、ワキワキと指を戦慄かせている。更には、その指の一本一本が永倉の腕ほどの太さを持つと言う不自然さ。
斯様な姿を持った者など、永倉は生まれてこの方目にした事はございません。
『女なんて……芸妓なんて……』
くぐもった声はそれだけで永倉の心臓が止まりそうになる程の怨念を撒き散らし、血涙流す窪んだ目は真っ直ぐに水菊を捉えております。
一方で水菊の方はと申しますと、自身に向けられた怨嗟など気に留める様子も見せず、それどころかどこか嬉しそうな……いつものたおやかな笑みとは異なる、子供のような笑みを浮かべておりました。
「あらまぁ。巧い具合に引っかかってくれはりましたわぁ。うちが夜道を歩いたら、絶対来ると思うとったんどす。お姉ちゃん考案の囮作戦、成功やわぁ」
「それで殺されたらどうするつもりだったんだ!?」
「それは心配してまへんえ」
にっこりと無邪気な笑みを返されてしまい、永倉は思わず舌打ちを鳴らしてしまいます。
彼女が囮になったからこそ、恐らく目の前の男は現れたのでございましょう。
ですが、流石に永倉にも理解できます。
……目の前の存在は、ヒトではないと言う事を。
体に見合わぬ不釣合いな腕、人間を引きちぎると言う暴挙。そして何より……
――満月とは言え、闇の中だぞ。月明かりだけではっきりと見えるなんて事がある訳ないだろう――
「逃げろ水菊さん。やはり危険だ! 相手は人間じゃない!」
「わかってます。闇の者ですやろ? でも大丈夫。うちはお姉ちゃんを信じてますんえ」
「こんな非常時に何を言って……」
水菊を守りながらも、相手の腕を刀で弾きながら彼女の呑気とも取れる言葉に返した刹那。
シャン、と清らかな鈴の音が永倉の耳朶を打ったのでございます。直後、下駄を擦った時特有の乾いた音が混じり、終いには永倉の視界は緋に染まったのでございます。
緋の正体が、宙を舞う見知らぬ華の花弁であると気付いたのは、その緋を手にとった時。
その緋がまるで緋毛氈のように道を埋めつくし、向こう側……異形の背後からこちらに向かって伸びているではございませんか。
異形もまた、この異様な空気に気付いたのでございましょう、背後を振り返り、これから来る「何者か」を警戒しているような仕草をとり始めたのでございます。
「何だ、これは……」
「大丈夫。心配いりまへんえ。これは、もうすぐお姉ちゃんが通られる言う合図。お姉ちゃん……宵闇太夫の島原道中どすえ」
「宵闇、太夫?」
聞いた事のないその名に、永倉が首を傾げたのとほぼ同時。異形の向こう側、闇から滲み出るようにして現れたのは、闇と同じ黒き着物を纏った童女と、それに付き従うように立つ銀の髪の長身の男性の姿でございました。
見目こそ童女でございますが、着ている物、そして結われた髪型などは襟替えの済んだ芸妓のそれであり、浮かべる表情や纏う雰囲気は、世を達観した者のそれ。
一瞬、永倉にはその童女が何者なのか理解できずに呆然と眺め……そして、恐る恐ると言った風に彼女を指してその名を口にしたのでございます。
「あ、あやめ……ちゃん!?」
「ん? 菊の隣にいるのは永倉君か。……今朝方は忠告したつもりだったのだが、君も物好きだな。その正義感も浪士組の強さも賞賛に値するが、闇の者相手に君では無謀と言う物だろう」
いつもの廓言葉ではなく、どこか偉そうな口調で言う彼女に、永倉はやはり呆然。
あれは、本当にいつも水菊について回る禿の子であろうか。全く別の存在なのではなかろうか。
月明かりと星明りのみが瞬く闇の中、同じ色の着物を纏った彼女は妙に大人びて見えてしまうのは、満月の見せる錯覚なのではなかろうかとさえ思えるほどに。
「お嬢、奴さん、お嬢に気付いたようですぜ?」
「ん?」
『……女なんて。男女の仲なんて……俺を裏切ったお前達を、引き裂いてズタズタにしてこの世から消してやる!』
あやめに目を留めたのか、異形はその小さな体を捕らえんと真っ直ぐにその腕を振り下ろしたのでございます。ですが、それはあやめの脇に佇んでいた銀髪の男、銀彌の蹴りによって弾かれ、細い体はぐらりと傾ぐではありませんか。
それを見やりながら、あやめはすっと目を細め……哀れむように言葉を吐き出したのでございます。
「ほう。芸妓に裏切られたと嘆く男が、闇の者へと堕したか」
「男に裏切られて鬼と堕した女はよく見るが、その逆ってのは、はじめて見る『たいぷ』だな、お嬢」
「近年は女々しい男が多い。こういう男は後の世で『草食系男子』などと呼ばれる事になりそうだ」
そう言いながらも、2人はまるで羽根でも生えているかのような軽やかな動きで男の腕をかわし、いつの間にか永倉と水菊の前に降り立っておりました。
獣のような銀彌と、ひらひらと蝙蝠のように舞うあやめ。そのどちらにも無駄はなく、思わず永倉は異形を翻弄する彼女達の姿をぼんやりと見つめておりました。
「銀。菊と永倉君を守れ。この程度なら私1人で充分だ」
「ええ!? オレ、暴れてぇですよ、お嬢!」
「お前が暴れると島原の被害が大きくなる。却下だ馬鹿者」
「酷ぇ」
あやめの言葉に落ち込みながらも、それを忠実に守ろうとしているのでございましょう。銀彌は時折あやめをすり抜けて襲い掛かる「闇の腕」を、時に蹴り飛ばし、そして時に殴り飛ばしていくのです。
その一方で、あやめはふわりと宙を舞い……
「今日は私達におあつらえ向きの天満月だ。……貴様の業は私が破壊する」
そう言の葉を紡ぐと同時に、あやめの小さな体が月と綺麗に重なり、その光を一身に纏ったまさにその瞬間。彼女の姿が、変わったのでございます。
齢10前後であったはずの見目は銀彌と同じ17、8の妙齢の女性。瞳の色は普段の黒ではなく血色。何よりも大きな違いは、口から覗く鋭い牙でございましょう。
ですが牙が見えている事を差し引いても、今のあやめは立派な芸妓、太夫と呼ばれるに相応しい雰囲気を纏っておりました。
「成長、した……?」
「いやいや、背丈だけ。胸は相変わらずのつるぺったんですぜ、永倉のにーさん」
「あ、本当だ」
「喧しいぞ貴様ら! こいつと共に断たれたいか!?」
「遠慮しまーす」
「お姉ちゃん、格好良い……」
ひらりひらりと腕の動きから逃れながらも、あやめは銀彌の軽口に牙を剥いて怒声を返すのでございます。
それを永倉は驚いたよう、そして水菊は嬉しそうに見つめるのですから、男女の価値観と言う物は大きく異なるのでございましょう。
そんな中で聞こえてくる異形の怨嗟は、完全にあやめに向けられた物でございました。
『恨んでやる、呪ってやる、殺してやる、滅してやる、消してやるぅぅぅ』
「…………血涙流す程に好いていながら、動こうとせなんだ貴様が悪いのだろう」
『何……』
溜息混じりに放たれた言葉に、「闇の腕」の動きが一瞬止まります。
こけた男の顔は、心底不思議そうに歪み、穴のような目は涙を流しながらもきょとんと見開かれておりました。
その顔を見て、再度あやめは深い溜息を吐き出すと、睨むようにその血色の瞳を「闇の腕」へ向け、更に言葉を吐き出したのでございます。
「良いか? ここは島原。ここの女は金で売られ、金でのみ自由を得る事の出来る身分。唯一の例外は男が力ずくで奪った時のみ。だが貴様は何をした? 女の為に死に物狂いで金を稼いだか? 女の為に全てを捨て、逃げると言う選択を1度でも思い浮かべたか?」
追い詰めるようなあやめの言葉に、「闇の腕」はびくりとその身を震わせます。
振るっていた腕は完全にその動きを止め、1歩彼女が前に踏み出す度に、同じだけ相手はその身を後ろへ下げる。そしてまた1歩近付いては下がるを繰り返し、いつの間にか「闇の腕」の背は道を囲む塀にぶつかっておりました。
そして、彼女の言葉を向けられていないはずの永倉もまた。
あやめの放つ圧倒的な威圧感に気圧され、何も言えずにその場で釘付けとなっていたのでございます。
――怒っている――
思考できる単語はそれだけ。後は何を思っても彼女の威圧感によって単語を為さなくなる程。
「それもせず、『裏切られた』など笑止千万。まして無関係の芸妓まで殺した事、万死に値する」
冷たく彼女が宣言した刹那、その身に纏っていた着物から、「腕」とは比較にならぬ量の闇が放たれ、周囲を覆い隠したのでございます。
一寸先どころか、本当に、自分がここに存在しているかすら疑いたくなるような闇。それは徐々に彼女の掌に収束し、やがては漆黒の刀へと姿を変えたのでございます。
「この島原の道に、血の絨毯を敷きし愚か者。花街にあるは見目麗しき華のみと思うな」
言うと同時に、作り上げた闇の刀で相手の腕を切り裂きます。
軽く振ったようにしか見えぬその一撃の下、相手の左腕は完全に断たれ、その場に落ちて夜の闇へと溶けて往きます。
刀を振るっているはずのその様は、まるで扇を持って舞っているかのような艶やかさを伴い、彼女が刻む度に溶け落ちる闇は、彼女自身が放った闇と一体化し、やがては着物を飾る紋様へと変化していくではございませんか。
「人から堕した闇の者よ。貴様の止まった時間は、死を持って再び動かすと良い」
『やめろ……やメろヤメろヤメロォ!!』
そして放たれた最後の一振りは。
ザンと言う嫌な音と共に異形の首を刎ね、異形のその身を全て闇へと還したのでございました。
*
「私は吸血鬼と呼ばれる、人にあらざる者だ。生まれてから400年は経っているか」
十六夜の月を見上げながら、縁屋にて。
非番故、「今日はゆっくりと呑む」と決めた永倉が逢状を出したのは、やはり水菊でございました。ただ、今日はいつもとは異なり、お座敷には禿姿のあやめがちょこんと、水菊の膝の上に座り、ずずっと茶を嗜んでいる事と、お座敷の出入り口の前に銀彌が睨みを利かせている事でございましょうか。
通常禿がお座敷に上がるような事はございませんが、そこは永倉が呼んだからとしか言い様がございません。
彼としても、昨夜の事を不思議に思っていたのでございましょう。
最初に問うたのは彼女の「正体」。そして返って来た答えは先の言葉でございました。
「きゅうけつき……?」
「読んで字の如くだ永倉君。私は人の血を吸う事でしか生きていけぬ『闇の者』だ」
「血を吸うって……蚊みたいな物、なのか?」
「痒みを与えない分、蚊よりも害はないぞ。それに、頂く量も余程の事がない限り1日に1滴程度だ」
クスクスと、今まで知っていた彼女からは想像もつかない程楽しげに笑う彼女に、永倉はきょとんと目を見開いてしまいます。
何もかもがあまりにも突飛過ぎて、信じ難いと言うのが正直な感想でございましょう。
――それでも、昨日の事は夢じゃなかったと言う事、だよな――
「400年も生きているって、有り得るのか?」
「生まれついての闇の者は、ある程度成長すれば己の時間が止まる。……私とて例外ではない」
「でも、満月の夜は昨日のように大人、宵闇太夫になる事が出来るんですえ」
宵闇太夫。昨夜見た、あやめのもう1つの姿の事でございます。
鋭い牙、血色の瞳、そして妙齢に成長した太夫姿の彼女は、確かに「宵闇」と呼ぶに相応しい雰囲気を持っておりました。
……妙齢に成長しても、少々胸元が心許ないのは悲しい所ではございましたが、それは本人も気にしているようなので口には出さず。
「宵闇は、私のもう1つの名だ。島原の誇る闇の華……と言えば聞こえは良いが、実際の所は単なる妖怪退治人にすぎん」
「妖怪退治人……」
「島原は花街だ。花街は愛憎渦巻く闇の街でもある。……昔から闇の者が生まれやすい土地なのだよ」
疲れたような溜息と共に吐き出された言葉は、恐らく誰もがわかっていて目を背けている事実。
男と女……まして金で自由を縛られた女がいる花街では、昨夜のように「女に裏切られた」と思う男も居れば、逆に「男に捨てられた」と思う女もいる。ただ、それが日常であり、目を背けて忘れようとしているだけであるが故に、行き場のない感情が闇と化すのでございましょう。
まして彼女の言う事が本当ならば、その様子を400年もの長きに渡り見ているのです。たかが二十数年程度の人生しか歩んでいない永倉とて、そんな中で生活していれば疲れると思うのに、400年。
……彼女の疲労は、永倉が思うよりも大きいのかもしれない。
「ちなみに、私の正体を知るのはモモ……『お母さん』である百花と、ここにいる水菊、そしてそこで睨んでいる駄犬……んんっもとい銀彌だけだ。ああ、あと昨日からは君もいるか」
「ちょっ、お嬢!? 今駄犬って!?」
「……口封じとか、考えているのか?」
「まさか。そんな事をするつもりなど微塵もない。言った所でどうせ誰も信じたりはせん。だが、黙っていてくれたら助かるのは事実だ。黙っていてくれる保証が無ければ、私は何をするか分らん。ひょっとすると明日君が起きたら、昨夜と今日の事を忘れているかもしれんな」
背後でギャンギャン吠える銀彌を軽く流し、あやめは永倉に最上級の……脅しを含んだ笑顔を向けて言い放ったのでございます。
決して子供が浮かべるはずもないその笑みに、永倉はゾクゾクと……悪寒や恐怖とは全く別種の感覚に身を震わせ、彼女を真っ直ぐに見つめ返し……
「言うならとっくに言っている。誰にも言わないから……俺も仲間に入れてくれないか? 楽しそうだ」
永倉の言葉に、一同はぽかんと目を見開き……
「ふ……はははっ! 永倉君、やはり面白い男だな、君は!」
沈黙を破ったのは、あやめの豪快な笑いでございました。
その日を境に。
永倉の人生は大きく変わっていくのでございますが……それはまた、別の物語故、宵闇太夫とその仲間の物語は、これにて一旦の幕引きとさせて頂きましょう。
ここまでお付き合い頂けました皆様方。
この度は誠にありがとうございます。
当作品を執筆させて頂きました、辰巳でございます。
……どれだけ吸血鬼が好きなのか分りません。
また吸血鬼ネタかよ、と自分で突っ込んでおきます。
一応、主人公は「永倉さん」なのかしら? ちょいとよく分りません。
「壬生浪士組」と言ってはおりますが、まあ後に「新撰組」と名前を変える方々の事でございます。
浅葱色に「誠」の隊服ってだけで、まあお分かり頂けるとは思いますが。
あと、廓言葉も適当です。
「生粋の廓言葉は、こんなんじゃねぇよ!」
と仰る方は、お手数ですがお知らせ頂けますと大変ありがたく存じます。
それでは、最後に。
改めて、ここまでお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
また、いつかどこかで。