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太陽系の外側  作者: 檀敬
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人類の発展

 人類は二十五世紀を数えていた。二十五世紀の人類の勢力範囲は、木星まで辿り着いていた。

 木星の軌道上には、千人以上が暮らす数キロメートルの大きさの国際宇宙ステーションベース(ISSB)が建設され、木星の大気を採掘するに至っていた。木星の大気はエネルギー源として利用していた。だが、それは核融合や燃焼の原料としてではなく、エネルギーの素そのものとしての利用である。そのエネルギーの素は『プラズマバーストシステム』という機構を利用することで、飛躍的なエネルギー効率をもたらしたのだった。

 西暦二三六四年に、プラズマの物質励起効果による物質分解を応用して、物質そのものを電気エネルギーに変換する機構が発明された。それを契機にさまざまなエネルギーへと変換することに、この機構が利用されるようになった。この機構を『プラズマバーストシステム』と呼んだ。

 理論上は、物質質量の六十四パーセント以上をエネルギーに変換できるのだが、高効率な触媒が見つかっていないことと、完全密閉化を実現する装置が未だに開発出来ていないため、その変換効率は三十二パーセントに止まっていた。それでも今までの人類の動力機関から考えると、夢のようなエネルギー効率であった。

 この「プラズマバーストシステム」を運動エネルギーへと変換することで、宇宙船の推進に応用された。それが「プラズマバーストエンジン」と呼ばれている推進装置で、今までのイオンエンジンに比べると効率が良いのはもちろんだが、推進力、持続力でも性能をはるかに凌いでいた。このプラズマバーストエンジンを基にして、人類は太陽系の各惑星に進出した。

 宇宙空間の加速は今までのエンジンとは格段に違っていた。正噴射による加速制御と逆噴射による制動技術が考案され、その恩恵はホーマン軌道を無視した軌道計算を可能としたのだった。それは、航行時間を一気に半分以下にしてしまったことに表されている。

 地球から月への往復はたったの五十時間となり、火星を越えたメイン・アステロイドベルトの任意の小惑星にでも、たった半年で辿り着くことが出来るようになった。

 宇宙開発も飛躍的に進歩を遂げて、月は太陽系宇宙への玄関口となり、プラズマバーストエンジンを搭載した宇宙船の発着港として栄えている。

 また、火星と金星はテラフォーミングを開始して一昨年に百年を迎えた。火星は七十年で居住可能になったが、金星はまだまだその途上であり、もう五十年程の時間が掛かるだろうといわれている。

 そして、メイン・アステロイドベルトの小惑星からの資源を素に、地球周辺のラグランジュポイントにスペース・コロニーも建設が始まっていた。

 更に人類は、木星のISSBを拠点に、外惑星の開発にも着手しようとしていた。天王星、海王星の探査には余念が無く、数十年後にはISSBも建設されるプロジェクトが進行中であった。

 そんな人類の発展に、一つだけ影を落としているものがあった。

 それが『太陽系の外側』だったのだ。

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