渇きを癒す赤を求めて
喉の渇きが気になってしょうがない。
俺は、生き物の姿をとにかく探して歩いていた。
今までは定期的に小さな生き物を見つけられたのに、ここ最近はめっきり姿を見せない。
俺は今、どこかの草原を延々と歩いているようだが、何日もずっと。
街にも村にもどこにもつかないままだ。
だが、何者かが俺を監視している事だけはわかった。
たまに、水のはいった瓶が落ちていることがあるからだ。
それは何度か忘れてしまったが、一桁の数ではなかった。
誰かが落としたにしては、多すぎる落とし物だ。
だから、何者かは必ず周囲に存在しているはず。
一体何の理由で、と思うがそんな疑問はすぐに、脳裏にちらついた赤に流されて消えた。
吸血鬼族は、疲れたり精神に負荷がかかると、血を欲する気持ちが高くなる。
衝動的な行動が多くなる。
それは、本能が「血をのまないと死ぬぞ」と全身全霊で訴えかけているから。
体のすみからすみまでが、すべて血を欲する気持ちでいっぱいになるのだ。
それまで考えていたことをすべて放り出すくらいの、強い気持ちに。
もし、その血に対する渇望が、欲望が満たされなければどうなるのか。
吸血鬼は干からびて、渇きの地獄の中で、苦痛に苛まれながら死ぬだろう。
渇きは肉体だけでなく心もおかしくさせる。
精神が狂いながら命が終わっていくのを哀れと捉えるか、救いとみるかは人次第。
吸血鬼とはそういうものだ。
誰かを探して、血を求めて、一体何日たっただろう。
いまだ誰も見つからない事実を頭の片隅で考えながら、心の9割は狂気で満たされている。
血が欲しい。
血を得るためなら、何だってする。
どんな事だって、してみせる。
血が欲しい、早く欲しい、血が、血が、血が、ち、ちちちtiga.
どうしてこうなったのかわからないが、どうやら俺はもうここまでのようだ。
俺は狂気に支配されていく中、血を求めながら、渇きの中に溺れながら、死んでいくのだろう。
そんな俺の近くに、生き物の気配。
「なんだ、まだ生きていたのか」
誰だ。
生き物だ。
なんでもいい。
血が欲しい。
相手の顔を見るよりも先に、衝動的に、手を伸ばして食らいつこうとした。
けれど弱ったからだだから、相手に簡単に制圧されてしまう。
「空腹になったら簡単に犯罪を犯す種族なんて、生きていてはいけないのだよ。本能に、欲望に負けて、そうも容易く理性を手放すなど、心ある種族として認められない」
血をよこせ。
渇きを満たさせろ。
血だ。
「結局、お前は負けるんだな。ともに互いの種族の汚名をすすごうと、種族共存会議の議員に立候補したってのに」
眼の前にいる生き物は、なにか黒い鉄の細長い、とにかく、なにか血ではないものをこちらに向けた。
「試練は不合格だ。おめでとう。お前のおかげで私ら憑依族は孤軍奮闘を強いられることになったよ」




