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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ  作者: 沢クリム


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8/21

08.その祭りの理由

馬車、いやトカゲ車に乗っている間は、御者席アレクさんの隣に座っていた。

走行速度は自転車ほどは出ていると思う。

アメリアちゃんとナデシコは相変わらずぽんちゃんと一緒だ。


そこで聞いた話によると二人が、早朝の林道を走行していたのは、新調した車体のならし運転で、アメリアちゃんはその付き添いだったそうだ。街の開場時刻と同時にスタートダッシュを決めたらしい。男が新車を乗り回したいのは、どこの世界でも同じらしい。

俺がうっかり車体を褒めたら、怒濤の最近の馬車事情と、ここ数年のメーカー動向などの話が始まった。この知識は使うことないんだろうなぁ。


「うむ、もうそろそろ街が見えてくるぞ」


林道を抜けると目に入ったのは、土色の都市だった。

数キロに渡る荒野の先に高く石壁が見える。その内側からいくつかの白煙が立ち上ってるのが分かった。

しかし、より目を引くのが街の先にそびえる断崖のような山だ。

岩肌をむき出しにそびえるそれは、通常の山より、巨岩のような印象を受ける。


「へぇ、なかなか壮観な光景じゃない」


ナデシコも俺の肩に手を乗せて、顔を覗かせ目の前の光景をみる。


「うむ、あれが鍛冶と鉱山の都市ラケル。そして背にそびえるは…」

「ちりゅうの背びれ!だよね。おじいちゃん」

「うむ、よく勉強しておるのう、アメリア」


地竜背びれ。曰く、再生する鉱山。

坑道を数年がかりで掘っても、数十年に一度、地殻変動が起こりその坑道が閉じる。その後、全く同じところを掘っても別の鉱石がとれたり、採掘量が変わる。お陰で常に鉱員は募集状態、主要都市のなかでも、通行料を取っていない珍しい都市だそうだ。


「そう言えば、ずっと他の馬車とすれ違わないけど、なんで?」

「ん?おぬしら祭りに来たと思っとったが、違ったかの?昨日の夜から始まり、早朝からも催しがあるから、行商人も昨日の昼には入門を終えとるわい。街のものも、外行きの用は別の日に回すわい」

「あー、俺たちはちょっと、日程を間違えたみたいだな。ナデシコ」

「…そうね。ま、結果良ければすべてよし」

ごまかした俺に続き、アメリアちゃんの頭を撫でながら、ナデシコは笑う。


「ところでアメリア。お祭りの名前、言える?」

「へぇざんさい、だよね、おねえちゃん!」

閉山祭、なるほどさっきの地竜背びれの話に繋がるのか。たしかに、街に取っては大きなイベントだし、鉱員たちも祭りの働き手として、収入が減るのを防げる。逆に稼ぎが良ければ、祭りを遊び歩くわけか。


「そんなお祭り、服屋のアレクさんは稼ぎ時じゃないのか?」

「逆じゃよ。わしの店は鉱員相手の作業着が主じゃから、暇なんじゃ。いくつか普段着も扱っておるが、祭りの日も営業するより、息抜きに使うのが、わしのじいさんからの代の伝統じゃ。息子夫婦もいい息抜きになるじゃろ」

結構長い歴史の店らしい。

当たり前のことだが、異世界の独自の生活風習があることに関心していた。


門扉が近づくと、アレクさんは速度を落とした。

「おーい!戻ったぞーい!」

「おう!アレクのじいさん!新車の乗り回しにしちゃ遅かったな!孫にかっこつけれたかよ!ん?朝には居なかった奴らがいるが、知り合いでも拾ったか?」

近くまで来た、威勢のいい男が親しげに話しかけてくる。背が低い140cmほどだろうか。蓄えられた髭を触りながら首をかしげているが、その腕は太い。身につけているのは鉄の兜に革の鎧だろうか、腰にはカバーを付けた柄の短い斧を吊り下げている。


「…どうした、兄ちゃん?ジロジロと見て」

その眉間にしわが寄る。なのでとっさに

「いや、実に鍛えられた身体。さすがラケルの街の門番だなと」

「ん~?ガハハ!よくわかっとる!門番と言えば街の顔!まさにドワーフ戦士の花形よ!俺はアイゼン!よろしくな兄弟!」

腰に手を当て豪快に笑う。門番がこんなにすぐ人を信用して大丈夫だろうか、この町。

しかし、ドワーフ。ファンタジー人種の代表格の登場だった。


「よろしくお願いします。俺はヤマト、閉山祭の観光に来ました」

「そうか、ヤマトか!そっちの美人さんはお前のツレか?やるじゃねぇか!うん!通ってヨシ!」

いいわけないだろ。ナデシコなんて名乗ってすらいない。ザルを超えてもはや枠。通り抜けられるフープだ。


「いやアイゼンや、わしの話を聞けい。実はの…」

アレクさんは、ことのあらましを語る。

「なにぃ!?」

アイゼンさんは、すぐに門の中に飛び込んで行き、数人の仲間を連れてきた。

よかった。もしこの街の門番がこの人だけだったらと思うと、安心して出歩けない。


荷台に積んできた熊の皮、収納場面を見られたくないので木刀は頭部に刺さったままのそれを下ろし、詳しい状況説明が始まるのだった。

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