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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ ~現実帰還のためなら、異世界の一つくらい救ってやろうじゃない~  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第二節 グルメバトルと過去、アーテナイの誓い

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46.その連携は届くのか

俺とナデシコは、料理対決が決まった後、2人のドワーフの親衛隊を探した。

その2人とは、


『珍しい酒はどうだ!俺の実家の近所に穀物なら片っ端から酒にするジジイが居るぞ!』

「人間は野菜が好きじゃなかったか?」「だったら塩漬けだ!いくらでも酒が進むぞ!」『豆だ!』


そう、この発言をした2人だった。

穀物の酒、それは俺達が慣れ親しんだ、米があるかも知れないという淡い期待。

豆の塩付け、それは味噌であり、その課程で出来る醤油の起源、ひしお

家庭科の先生の雑談には助けられた。


親衛隊の警備巡回ルートを聞いた俺達は、この2人が偶然にも同じ班であった事を知り、料理対決の事情を話し、情報を仕入れたた後、2人の商人の元を訪ねたのだった。


「なに?水田で育つ穀物、『米』?ああ、王都の外れの農業研究をやっとる所のじゃろ。まあ、仕入れるのはウチくらいじゃな。全部酒にしたわい。……どうしたんじゃ、膝などついて」


異世界二日目にして、2人で米が恋しくなってることに気付いた今日の出来事だった。

しかし、アーテナイの肉を米の上に乗せられたら、俺達は降参していたかも知れないので良かった。

と無理矢理納得しておこう。肉丼…食いたい…。

甘い酒はドワーフの舌には合わなかったらしい。それでも、酒屋の爺さんが独自に改造を施したそれは、日本酒からは遠いものの、俺達の知る調味料にそっくりになっていた。

そう、『本みりん』、日本でも戦国時代から原型があったそれが、異世界にもあったのだった。

それを適正価格と闘技場の入場券で譲って貰った。


「なに?ウチの豆の塩漬けの汁?飲めたもんじゃないし、捨ててるけど…。は?樽ごと買う?あんたら、ヤマトとナデシコだろ?いいよ、汁くらいタダで持っていきな!……は?嫌?上等だ!だったら腕相撲で勝負だよ!」


こうしてドワーフの肝っ玉母ちゃんに腕相撲で勝った俺達は、その汁を瓶詰めにして、樽の値段分の硬貨と闘技場の入場券を渡して取引した。豆の方は、一部を貰った後、闘技場勤めの職員に差し入れとして渡した。なかでもドワーフは、

「今は飲めないのに…!」

などと苦悩していた。

かくして、『醤油』もどきを手に入れた。


手に入らなかったものもある。まずは『にんじん』、この地域では取れないとの事だ。それから、『砂糖』はあったが、高額だった為、採用を諦めた。シェーヌは食材は経費として落ちると行っていたが、高額商品は使いたくなかったのだ。


こうして入手した、『醤油』と『みりん』、これで味付けをしていく。


勝負の前に、少量で試作と試食をした。

シャーロットさんは、おいしいと言ってくれたが、俺達は納得いかなかった。

砂糖のない分甘みが、短時間で作る為染み込み、コクが足りなかった。

甘みはタマネギの増量で対応した。


「さあ、行きなさい。あなた達コンビの『異世界』デビューよ」


肉に火が通り、アクを取り終えたところで、ナデシコが調味料を混ぜたうえで、鍋に流し込む。

比率はあらかじめ計算済み。

辺りに立ち上る、醤油とみりんの合わさった食欲を誘う匂い。

嗅ぎ慣れないその香りに、近くの観客がこちらをちらほらと見る。


「これも忘れずに、な」


調味料が全体に行き渡ったのを確認して、後は混ぜる、がその前に一工夫。

すりおろしたジャガイモを加える。

カレーにコクを与える為に使われる技法だが、肉じゃがにも応用できる。

所謂、一晩寝かせた状態の疑似再現だ。

全体の火の通り優先したため、鍋は大きい。ここからはナデシコと一緒に混ぜる。


『ヤマトとナデシコ陣営、なにやら不思議な、ですがいい香りがしますね』

『詳細は控えますが、お二人の「故郷」の一品を作ると伺っています。それにしても、アーテナイ様とは対照的に、下準備以外では未だ魔力を使っていないのが気になりますね』


『おっと!その間にもアーテナイ様はすでに、調理を完了している!現在、見事に焼き上がった肉を下ろすところ!これから取り分け作業を行っていくようです!ここからは助手の皆様も、よろしくお願いします!』

『まだ、40分ほどですね。量が多いですが、1時間時点で完了でしょうか?1時間30分時点で完成していれば大丈夫なのですが。全く、せっかちといいますか……』


なるほど、だったらちょうどいい。


「ナデシコ、ここからは弱火でじっくりだ」

「あいよー、ってね」


鍋に蓋をして、火を弱める。あとは、時間いっぱい染み混ませる。まずは、アーテナイの実力を拝見。


『さあ!審査員席、招待観覧席にも行き渡りました!実食致しましょう!アーテナイ様!料理名を!』

『決まってるだろ?「ラケル焼き」さね。アタシの自慢、それはこの都市!……文句あるかい?』


その言葉にも、観客は大盛り上がりだ。

現在、審査員席とアーテナイは、拡声器の魔法道具を持っている。


各審査員と招待観覧席には切り取られた肉達が乗った皿が、その香気を放っている。

調理中の俺達に届くほどだ。眼の前にあったらどうなるか、想像に難くない。

おのおの、祈り終えて食べ始める。


『このお肉、おいしー!』

アメリアちゃんの素直な感想。もぐもぐと元気よく咀嚼する。


『ええ、様々な部位もあり、一口ごとに異なる味わいがいたします。まさに、ラケルに住む様々な民との調和、それをまとめ上げる香辛料と岩塩はアーテナイ様自身といったところでしょうか』

シェーヌはそつなくコメントを残しながら、品良く食べていく。


『ええ、私もとても美味しいとおもいます。そうよね、ベン』

『そうだね、リニー。ここ数日、ボクらはラケルに滞在していますが、その中でも一番、美味しいお肉ですね。塩味のバランスも香りも素晴らしい』

双杖の二人は、無難なコメントだ。リニーは多分、言葉を選んでいる内にシンプルなコメントになったみたいだ。なんせ、アーテナイの料理だ。緊張もするだろう。


『では、私コーレンも頂きます!うーん!酒が欲しい!今すぐに!………あ、シェーヌの旦那、分かってますって』

実況のコーレンも実にドワーフらしい素直なコメントだった。ちょっと、その発言がシェーヌの眼が厳しくしてしまい、後半は実況のノリではなくなっていたが。


非の打ち所のない完全無欠であり、超パワープレイ。アーテナイらしい料理だ。



時刻は制限時間20分前、つまり弱火で煮込んで30分、ナデシコから目配せが来る。頷きを返す。


俺達の最後の一工夫にはちょうどいい時間だ。


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