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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ ~現実帰還のためなら、異世界の一つくらい救ってやろうじゃない~  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第二節 グルメバトルと過去、アーテナイの誓い

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45.それは伝説の振るう力を受ける

『さて両者、調理場に付きました。今回の料理対決、改めて詳細をお願いします!』

『ええ、テーマは「自慢の逸品」。量は審査員と招待観客分含めて30人前。時間は1時間30分以内。先に出来上がった料理から審査致します』


俺達はそれぞれの調理場に付いた。仮面の、いやシャーロットさんもトボトボと付いてきてくれている。

俺とナデシコの料理には、時間の余裕があればあるほどいい。

野菜の、『タマネギ』のカット入る。皮むきは事前に済ませている。用意した半分はみじん切りに、半分はくし切りにしていく。

俺とナデシコは、身体強化で眼にも止まらぬ早さでみじん切りを量産、まな板まで斬らないようにするのが地味に大変。

シャーロットさんは火の通りを考えながらタマネギを正確に等分に切っていく。

俺達の絵面は地味だ。一方で、


『おおっと!早速!アーテナイ陣営に動きが!』


「さあ!来なよ!アタシの食材!『牛』まるごと一頭!血と内臓は抜き済み!」


それは、牛と言うにはあまりにも大きすぎた。大きく。分厚く。重く。そして大雑把すぎた。それはまさに肉塊だった。

昨日の黒竜の石像が乗せられた台車の上で吊されたそれは、例えロッキーでも萎縮してしまうかも知れない。


「デッカ!3m位あるぞ!」

「象の間違いじゃないの!?……え?私、これの『ミルク』を飲んだの…?」


後で聞いた話になるが、この世界の動物、とりわけ現実で家畜に分類されるものはどれも大きいらしい。

野性時代、動物でも魔物に対抗する為に大きくなったのか、動物たちも持つとされる魔力がそうさせるのか、それは不明だ。


「2人とも、手を止めない!」

「「はい!師匠!」」

「…次にそう呼んだら、帰りますからね…」


俺はみじん切りを終えた大量のタマネギを少量の油で炒める。飴色になるまで鍋底に焦げ付かないようにするのが重要だ。広い鍋底の物を工房長に頼んで良かった。効率よく熱を通す事が出来る。



「30人前?面倒臭いね!この後の宴会のつまみの分まで作ってやるよ!」


アーテナイは、斧に油を塗布し、その斧を香辛料と砕いた岩塩の混合物で山盛りになった桶に付ける。そして、飛び上がり、肉に切れ目を入れる。着地したときに、斧には何も残って居ない。

肉の下処理、下味を付けることを同時にこなしながら、パフォーマンスを行っている。

しかも、その動きは徐々に加速する。

今や、観客は、その動きに夢中だ。



一方、俺が炒めている間、もう一つの野菜『ジャガイモ』一口大に切っている3人。え?3人?


「アメリアもお手伝いするー」

「いいのかしら…?」

「アメリアちゃん、手はちゃんと洗ったの?」

「うん!」


『シェーヌ様これは…?』

『まぁ、いいでしょう。止めるのも可哀想ですし…。手もきちんと洗えて偉いですね』


審査員、調理に参戦!ゆるいぜ!お料理対決!

一般観客がアーテナイの妙技に見とれている間、女性陣は平和な時間を送っていた。


「…なにあれ、可愛すぎ…!」

「リニー…?」


一部、アメリアちゃんに見とれてる審査員もいたが割愛。



「さて、アタシの魔法のお披露目だ。ありがたく見な。『ファイアプリズン』」


巨大牛の肉塊は、今やそこら中に切れ目が入り、香辛料と油を身に纏っている。

アーテナイはそれを確認すると、片手を掲げ指を鳴らす。

すると一欠片の炎が生まれ、肉塊に飛んでいき、触れた。

その瞬間、肉塊は炎の檻に捕らわれる。しかし、焼き焦げるような匂いはしない。

香辛料の香りが会場中に広がる。観客は思わず唾をのみ、お腹を鳴らすものまでいた。


『おお!アレがアーテナイ様の魔法ですか!いきなり燃えたように見えましたが…』

『ええ。正確には指の先からの火花が出て、触れた瞬間に仕込まれた魔法が起動したのでしょう。しかも、高度な温度制御まで行っています。肉を焦がすこと無く、じっくりと火を入れて行くのでしょう。杖の補助も無く、あの規模、あの精度の魔法を使いこなすとは、流石アーテナイ様です』


そこでアーテナイは駄目押しに入る。アーテナイは、肉塊の下に巨大な桶のような物を用意しておいた。

それは、てっきり香辛料を落とさない為のものかと思ったが、違う。

熱せられた肉塊は、肉汁を垂らす。香辛料混じりのそれは、あらかじめ置かれた桶に貯まる。

そして、アーテナイは手杓で、神社の手洗いで使うようなものだ、肉汁を掬う。

それを持ったまま、再び跳躍、今度は身体強化で肉より高く飛び上からその肉汁を肉に浴びせる。

蒸気があがる。旨みと香りが循環する。

肉塊はコーティングされていく、さながらそれは鍛造だ。

繰り返しの行為で、より高みへ上り詰めるような行為だった。


そして、アーテナイはそれを宴会で観客に振る舞うことを約束していた。気付けば、誰がはじめか分からない程、会場中がよだれを垂らしていた。



一方こちらは、野菜の処理が終わり、アメリアちゃんが審査員席に戻っていた。

今はアーテナイの大跳躍に素直に拍手を送っている。

リニーの視線はアメリアちゃんに固定されているが、まあ気持ちは分かる。


飴色になったタマネギの上にジャガイモを並べ、それがひたひたになるまで水を注ぐ、その上から、くし切りにしたタマネギを乗せる、ジャガイモが隠れた頃、上から薄切りの状態で売っていた『牛』の肉を並べる。


ナデシコは、二つの瓶を取り出す。その栓を開ける。それが、俺達の切り札だ。


「…?…なにかしら、この匂い…」

比較的、俺達の調理台から近かったリニーが、俺達以外でそれに気付いた。


日本人なら、すぐさま言い当てられただろうその香りの正体。


『醤油』と『みりん』。


俺達は、『肉じゃが』でアーテナイに対抗するつもりだ。

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