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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ ~現実帰還のためなら、異世界の一つくらい救ってやろうじゃない~  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第二節 グルメバトルと過去、アーテナイの誓い

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42.かの世界への二つの手掛かり

「…申し訳ありませんが、私からもお話が一つ」

高ぶった俺達を窘めるように、落ち着いた声でシェーヌは話を始めた。


「ここは一つ、この世界の魔法の専門家へ話を聞いてみるのはどうでしょうか?つまり…」

その後の言葉は、アーテナイが引き継いだ。


七天将星(しちてんしょうせい)、緑のユディット、だね」


アーテナイはそこで、上を見上げ、遠い眼をした。

「アイツかー…、あいつねー……。確かに、魔法関連の情報持ってるのはアイツだね……」

「どうしたの?アーテナイ?」

「昨日もいざという時は、他の七天将星を紹介するって言ってたよな?」

アーテナイはため息を一つ。そして、俺達の方へ目線をやる。


「アイツがアタシよりマイペースって言えば、伝わるかい?」


「…………………」

「…………………それで、ダンジョンへはどうやったら入れるんだ?」

長い沈黙の後、俺はそうやって話題を変えようとした。


「いや、アンタらはユディット会うべきだよ。アイツは魔法の知識・技術に関しちゃ世界一と言っていい。その魔法の腕も。大したエルフさ」

「「……えー」」

アーテナイは覚悟を決めたように話始める。俺達は、難色を示すのみだ。

「そして、なんなら戦後の功績も一番だね。上下水道、浄水施設、街灯はアイツ主導で各都市に設置されたし、家庭にある魔法道具も原型はアイツさ」

盛りすぎでは?エジソンとニコラ・テスラ足して2で割り忘れたのか?一人で文明進め過ぎだ。


「まぁ、その代わりに、各都市の法には『ユディットの自由を妨げない』って一文が加わったけどね」

「善人であったことが人類の救いね…」

ナデシコは呆れ気味だ。敵に回ったら詰む人材ともいう。


「王都、アイツのお膝元での人気も凄まじいよ。写し絵や本は年中売ってるし、劇までやってる。その中じゃ、アタシは『元』は暴れん坊でアイツに諭されて仲間に加わった話まであるそうだよ」

「ああ、『元』は暴れん坊じゃなくて『元々』の間違いだな」

「そうそう、暴れん坊は生まれつきってね!よく言った!……いい度胸だ、コラ」

頭をガシガシと乱暴に撫でられた。ゲームパットのスティックの気分だ。


「とにかく、紹介状は書いてやるから、アイツに会いな。会いさえすれば、異世界の知識と取引で情報を集めるも良し、アイツから魔法を習うもよし。……ただ、契約書を出して来たら、裏面までしっかり見るんだよ?」

「仲間を紹介する時の注意じゃないわね。……ねぇ、アーテナイ、さっきの私にもやってよ」

「…はいよ」

キャー、と言いながらナデシコは嬉しそうに撫でられている。


「……知らぬとは恐ろしいことだな」

「……ユディットへの紹介を嫌がるなんて、全ての魔法使いを敵に回しますね」

「…アーテナイ様に撫でろと言えるか?」

「…言えませんねぇ」

ドワーフの工房長とエルフは遠い眼でお茶を飲んでいた。


「というか、シェーヌ。これはアンタの思惑だろ?」

「ええ、いきなりダンジョンに挑むより、魔法を身につけた方が安全ですから。お二人の魔法の才は、私から見ても見逃すべきではありません。立地的にも王都の方が近いので」

今日はシェーヌの手の平でよく転がる日だ。全て俺達の利益に繋がってるので、感謝すべきだろう。


「三人ともありがとう、お陰で希望が出てきたわ」

「ああ、本当にありがとう、何かで返せればいいんだが……」


なにも無かった俺達にの手には、今二つの手掛かりがある。

一つは、ダンジョンの奥にあるという『別世界』。

もう一つは、この世界の魔法の生き字引、アーテナイと同格のエルフのユディット。


「ハン!なに言ってんだい、これはアンタらが勝ち取ったもんだろう?」

アーテナイは鼻で笑った。だが、その目元は優しい。

「ガハハ!では祭り後にでも工房に来るが良い!お主らが付与を使いこなす事は、よーく知っておる!気に入ったものがあれば、贈らせて貰おう!」

豪快に笑うクプファさん。なにか返したいというのに、これでは恩の上乗せだ。

「では、私からはこれを…」

シェーヌは、一枚の紙を俺達に向ける。その顔は、今日一番の笑顔だ。どれどれ…。


『闘技場修復費用:大硬貨20枚』


……………………………どうしよう。身に覚えしかない。概算200万はあまりにも重い。

俺とナデシコは固まった。アーテナイは、横から覗き込んで、ため息一つ。


「……いや、アタシが払うよ。それでいいだろ?」

アーテナイ様!流石っす!

心の中で、思わず三下になっていると。シェーヌは和やかなままで、語り出す。


「昨日、私始め、多くの事務官が駆け回りました。

 その対応内容は、『アーテナイ様が勝負を申し込んだ二人との対決はいつ見られるのか』ということでした。

 主に、私のアナウンスに従って退場して頂いた、貴賓席の各都市の招待客の方々です。

 もちろん、それはアーテナイ様の悪ふざけということで片づける予定でした。

 ですが、今は町中に噂が飛び交っています。

 あの後、勝負が行われ、ヤマトとナデシコという人間が勝った、と。

 目撃者も大勢。おやおや、これは困りましたね。見れるはずの勝負は見れない。

 どころか、もう終わってる。

 このことを招待客の皆様に説明するとなると、祭りの後には事務官一同おやすみをいだたきそうです。

 一番、書類の増える時期なのに、です」


今度はアーテナイが固まった。


「というわけで、お三方には、一つ。お仕事を頼みたいのですが、よろしいでしょうか?」

「「……はい」」 「……はいよ」


「それでは、『大宴会新名物、お料理対決』の概要を説明致します」


「「「お、お料理対決?」」」


こうして、先ほどまで、日本刀やダンジョンや新たな七天将星について話していた部屋で、今日の催しについての説明が始まった。


「報酬は大硬貨23枚。経費はこちらで負担致しますのでご安心を。工房長も用意して頂きたい機材があるので、ご同席ください。」

「うむ、工房に伝わる。『事務方の人間を怒らせるな。マジで』は金言だったな。ハハハ…」

クプファさんも冷や汗を流している。その金言、もっと早く聞きたかったな。


されることも、『ざまあ』に含んでいいのだろうか?

昨日に負けず劣らずの怒濤の展開に、胸焼けをする思いだった。まだ料理作ってないのに。

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