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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ ~現実帰還のためなら、異世界の一つくらい救ってやろうじゃない~  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第二節 グルメバトルと過去、アーテナイの誓い

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39.このエルフの真意とは

二人に案内され、たどり着いたのは応接間と見られる場所、大型の執務机はアーテナイのものだろう。

部屋には背もたれ付きの革張りの5~6人がけの長椅子が一対、その間に長机。

今はシェーヌはお茶を煎れる為に一時離脱した。その部屋には先客がいた。

ドワーフだ。浅黒い肌に黒髪黒目、蓄えられた口髭は親衛隊達と同じくらい。

「お初にお目に掛かる!ワシはクプファ!工房長をしておる!昨日は実にいい喧嘩だったな!ガッハハ!」

そして、その身に付けた筋肉は親衛隊を越えるだろう。丸太の様な腕は腰に当てられ、白い歯を見せ豪快に笑っている。

「よろしく、私はナデシコよ」

「俺はヤマト。よろしく工房長殿」

うん、アイゼンさんタイプの人か。つまり元気いっぱいのドワーフのおっさん。アーテナイにタメ口なので、必然クプファさんにもタメ口に。


「うむ、好きに呼ぶと良い。……ところで、あんたら酒は何を飲む?」

デジャビュ?

この後、少し疲れたようなアーテナイと似たようなやりとりがあったとだけ言っておこう。


「実に残念だ。そうか…まだ子供であったか。つまり、まだまだ強くなる余地があるという事だな!よし、ワシの工房に行こう!お主らに武器を贈ろう!昨日は剣と棍棒だったが、斧と槌はどうだ?」

ナデシコが棍棒使いになってる。これにはナデシコも苦笑い。杖だったのだが、魔法使いっぽく無かったし、仕方ないのか。

「……クプファさん?今日の要件をお忘れですか?」

「おお、そうだ。なんでも、二人の願いにワシら二人の協力がいるかも知れぬ、とアーテナイ様から連絡を貰っておったわ。子細は二人から聞くようにと」

つまり、『異世界』の件は話してないわけだ。

シェーヌも戻ってきて、各員の前にはお茶がある。そして紅茶だった。あるのか、茶の木。

席はアーテナイが指定した。俺達とアーテナイ、反対側にクプファさんと、最初は座ることを遠慮したシェーヌも座っている。知る側と知らない側に別れている。


「どうする?アタシが二人に信じるように、言ってもいいんだよ?」

アーテナイは俺達を試すように言う。確かにアーテナイの言葉なら、簡単に信用を得られるだろう。

だが、そのやり方は俺達向きじゃないな。

「いいえ、私達は信じて『もらって』協力が欲しいいんじゃないわ」

「信じ『させて』協力してもらう、黙って見てろ」

「…相変わらずの減らず口だねぇ、じゃあ見せてみな」

アーテナイは、どこか嬉しそうに笑い、自分のお茶を取って大きな執務机に座った。

その様子を黙って見ていた。対面の二人。

そして、俺達は異世界に来てからのあれこれを話し始めた。



「なるほど、信じましょう」

これはシェーヌの言葉、それを言った後には優雅にお茶を一口。

「「………あれ?」」

もっと、色々質問が飛んでくると思っていたのだが…。

「どうしたのですか?…ああ、信じる理由ですね。それは三つ」

シェーヌは三本の指を立てた。

「第一にお二人の人柄を知っている事、第二にその魔力の特異性に知識の偏り。この二つについては、馬車の中で話した魔力の淀みがないのもそれを裏付ける一因でしょう」

次々指は折られ、残る指は人指し指のみだ。

「第三はさきほどの『そろばん』でしょうか。手に取った瞬間に違和感がありました。病的なまでに均一な部品に、一切の魔力の痕跡がありませんでした。職人にも見てもらおうと思って、慌てて馬車の行き先を変更しようしたが、アーテナイ様との約束が優先でしたので、あの時は止めてもらって助かりました」

「じゃあ、『便利な品だったので』っていうのは嘘だったのか?」

先ほどのやりとりを思い出し、シェーヌに訪ねる。

「いえ、実際に便利な品だとは思います。しかし、ああ言えば、後から貸してくれるかも知れない、という計算があったのは事実です」

淡々とシェーヌは語る。

「魔力を一切使わず作られた物好きの作品であれば良し、魔力の隠蔽技術ならなんらかの危険な品かも知れないので要注意、といったところでしょうか。…ですが、魔力が一般的ではない世界の日用品、納得のいく答えです」

語り終えたシェーヌは最後の指を折り、再び紅茶を嗜む。

「…シェーヌ、あんまり細かい事ばっかり考えてると、胃を痛めるよ?」

「…ゴッフ!げほっ……げほっ」

シェーヌは、紅茶を噴いた。

胃痛の第一因、アーテナイの、一言は見事な不意打ちとなってシェーヌを襲った。

それでは皆様、ご唱和ください、せーの、お前が言うな。



「…………そうか、シェーヌの旦那が信じるのか」

先ほどのやりとりの間も腕を組んで、思案にふけっていたのはクプファさん。やっとその口を開いた。

「アーテナイ様も信じられている様子。だが…すまん!ワシはお主らを疑わねばならん!」

腕を解いて膝に置くと、クプファさんは頭を下げだ。

「ワシは一人の男として、ドワーフとしてお主らの喧嘩が好きだ。ただ、工房長としては、まだ納得出来ぬ!あまりにもワシの知る常識と違っているからな…」

その言葉で気付いた。クプファさんは判断と自分の好意を別に扱えるのだ。

「シェーヌの旦那に見せたもののように、何か、ないか…?」

だが、その上で信じたいと思ってくれている。嘘のつけない人だ。


「………わかった。だったら、あえてこう言うわ…」

その言葉を受けた。ナデシコは、眼を瞑って深呼吸。


「『ドワーフでも作れない』ものを見せてあげる」


不敵に笑う。その言葉を最大の禁句と知った上で。

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