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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ ~現実帰還のためなら、異世界の一つくらい救ってやろうじゃない~  作者: 沢クリム
『赤ノ章 祝祭のラケル』 第二節 グルメバトルと過去、アーテナイの誓い

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38.そのドワーフ達の宴への誘い

「……先ほどは失礼致しました。便利な品だったので、つい…」

「いや、別にいい…」

「そうね…」

申し訳なさそうに、シェーヌは謝るが、俺たちは上の空だ。御者の人にお礼を言って、シェーヌが先導する形で歩いているが、視線は斜め上。そう、アーテナイの屋敷は見上げるほどに大きい。

規模と装飾で俺の知識で近い物を上げるとすれば、国会議事堂だ。高さ20m程の石作の建物、庭からだと首を左右に振らないと全貌が見えない。昨日言った公衆浴場など目じゃない大きさだ。闘技場でギリ比較対象に出来る。


「ねぇ、アーテナイって思ったより凄い人だったの?」

「昨日は串焼きを旨そうに食ったよな」

「お風呂では先に身体を洗ってから浴槽に浸かってたわよ」

「シャーロットさん、アメリアちゃん、実はとんでもないことになってるんじゃないか?」

ナデシコと二人でこそこそと話す。街の人気者で気のいい姉さんの凄い版、くらいの認識だったのだが、もっととんでもない人物だったことを家を見て実感している。今度から敬語使ったほうがいいかな?


「あちらが、アーテナイ様の居住区です」

「……家が区分けされてるの?」

「ええ、政務区画に、アーテナイ様専用の工房区画、親衛隊の方々の住居区画」

「親衛隊!?」

「昨日の演舞をされた方々ですよ。普段は文官としても働いています。もちろん、訓練区画での鍛錬も欠かしませんが。祭りの日で無ければ、訓練区画は一般開放されます。他にも、催事道具の保管区画に…」

「自宅と言うか公共施設ね。朝から、お腹いっぱいだわ…」

「だな。……ん?あれってその親衛隊じゃないか?」

見れば、門らしきところに複数のドワーフがたむろしている。あちらもこちらに気付いたのか、こちらに駆けてくる。気付けば、すっかり取り囲まれてしまった。俺たちより身長が低いが、髭もじゃの筋肉の塊に取り囲まれるのは中々威圧感がある。


「ええっと……」

「おい、あんたら、ヤマトとナデシコ、だろ?」

「そ、そうだが……」

一歩詰めるドワーフ達に俺たちは思わずたじろぐ。親衛隊ドワーフ達は、お互いに頷きあった。

どうしたのだろうか、まさか昨日のお礼参りか?

「そうか…ところで、あんたら酒は何を飲む?」

「「…………はい?」」

なんでいきなり?と思った次の瞬間、他の親衛隊ドワーフ達も口々に話し始める。


「やはり火酒か!」「バカ!人間には強すぎる!麦酒にしろ!」「人間は甘い酒が好きだろ、蜂蜜酒はだどうだ!」「珍しい酒はどうだ!俺の実家の近所に穀物なら片っ端から酒にするジジイが居るぞ!」「つまみはどうする?」「肉だ!」「肉だ!」「人間は野菜が好きじゃなかったか?」「だったら塩漬けだ!いくらでも酒が進むぞ!」「豆だ!」「葉物だ!」「根菜だ!」「いや、祭りの時期なら魚が食えるぞ!」「焼きか!」「煮物か!」「干物をそのままでも旨いぞ!」「とにかく…!」


「「「俺たちに一杯奢らせろ!」」」


ものすごい圧だった。だが、そこにあったのは間違いなく好意と善意。

シェーヌは苦笑しつつも、いつのまにか数歩下がってる。

ナデシコと眼をを見合わせる。どう断ったらいいかと頭を悩ませていると…。


「そいつらはまだ飲める歳じゃないよ、そこまでにしな。」

内側から門が開けられ、アーテナイが出てきた。

その瞬間、親衛隊の皆さんはすぐさまその場に跪き、一人が代表して顔を上げた。


「そりゃないぜ、アーテナイ様。俺たちすっかり、この二人の喧嘩に惚れちまった。ドワーフの流儀で健闘を称えなきゃ、気が済まねぇや」

態度と違い、めちゃめちゃフランクな言葉だった。そんな親衛隊へ、アーテナイはため息を一つ。

「飯を奢るぐらいにしときな。今日の大宴会には招待する予定さね。ほら、分かったら散った!散った!今日も見回りに、万が一の時には頼んだよ!野郎共!」

「「「応!」」」


ドワーフ達は駆け出す。俺とナデシコに、口々に「またな」「絶対来いよ!」などと声を掛けていく、あと俺は10発以上は背中を叩かれた。腫れてないだろうか。嵐の様な集団だった。


「「…おはようごさいます?アーテナイ様…」」

とりあえず、二人で敬語を使ってみた。

「……あん?なんだい?新手の嫌がらせかい?全く、定期的に巫山戯ないと呼吸が出来ない奇病かなんかなのかね?…バカ言ってないで入りな」

鳥肌まで作って不気味がるアーテナイは、やはり俺たちの知るアーテナイだ。

いや、でも奇病は酷くない?

そもそも、定期的にふざけてなど居ない。こんなに真面目な学生に対して、風評被害も甚だしい。

いや、流行に乗っかり『不適切にも程がある』と言った方がいいか?え、もう古い?


「あと、おはようさん、二人とも。……シェーヌもご苦労、ご苦労ついでに茶を煎れてくれ」

「かしこまりました、アーテナイ様」

柔らかに微笑んだアーテナイはこちらに背を向け、門の中に入っていく。シェーヌもそれに続く。


「「お邪魔しまーす」」

「邪魔するなら帰りなー」


このやりとり、異世界にもあるんだ。そんな事を考えながら、俺たちは、アーテナイ様屋敷に入った。


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