22.その伝説に挑む
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「…ベン、二人の魔力、どう思った?」
「リニー、分かってて、聞いてるだろ?…底が見えなかったよ。アーテナイ様の魔力が見上げる程に積み上がられている武器の山だとしたら、二人のは何が潜んでいるか分からない自然林って感じかな?魔力量が倍以上違うと計れないっていうけど、一日で2回も体験するとはね」
「そうね。波長も似てたわ。兄弟なんて二人には言ったけど、まるで双子よ。多少の違いがあるのは、性格の違いかしら?」
「だからもったいないよね。もし二人が、魔法を習得して、完全に波長を同期させて、ありったけの魔力を込めた一撃が直撃したら……」
「伝説を超えうる。……私たちも天才なんて言われてたけど」
「霞んじゃうよね。本物の前だと」
「その割には笑顔じゃない。嫌なことがあったときの貼り付けた笑顔でもないし」
「そりゃ笑うさ。キミがあんなに楽しそうに友達と話すのは初めてみたからね。以外と教師に向いてるじゃない?」
「はぁ!?楽しんでないし…!教師なんてまっぴら!あんな手の掛かるの一回で十分!」
「…友達は、否定しないんだね」
「……バカ!ニヤニヤすんな!」
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準備は整った。俺たちは入場口に向けて歩いている。
俺とナデシコの防具は装備は手甲、足甲、胴体は鎖帷子だ。二人ともベストは置いてきた。
金属鎧や革鎧もあったが、慣れていない上に動きづらいから止めた。兜も視界が狭まるので却下。実は、頭防具を着けないことで、致命傷を与えられないアーテナイの縛りを利用するという打算もある。手甲、足甲に付与が出来るのは確認済み。いざとなれば武器になる。
そして武器、俺は刃引きされた状態の片手剣を腰に下げている。多少重いが許容範囲だ。金属製の物を下げても、カレブさんの吊り具はびくともしない。60cmほどの短めの杖。片手剣と同じくらいのサイズだ。
ナデシコは、2本の杖を持っている。どちらも1m程で木製。一本は予備だという。
闘技場に入場した。観客も歓声も実況もない。出迎えるは、挑発的な笑みで腕組みをしたアーテナイ。
俺たちの居た観覧席にいる笑顔のベンと何故か不機嫌顔のリニー。
「ベン!リニー!これよろしく!」
二人のいる観客席に向けて『取り寄せバックパック』を投げる。
「おっと…!」
「いきなり何すんのよ!」
二人はそれをなんなく受け止めた。
「それ、めちゃくちゃ大事なものだから、もっておいてくれ!」
「…仕方ないなぁ、わかったよ!ヤマト!」
「荷物持ちに使うなんてホント失礼なヤツ!一つ貸しだからね!ナデシコ!」
二人はこちらに拳を向けた、俺たちはそれに頷きを返した。
「ヤマトが剣士も兼ねていたとは意外だねぇ。ま、その辺はこれからのお楽しみにしとくよ。……準備は万全?」
やはり、俺たちは魔法使いに見えるらしい。ま、確かに使うのだが。ちなみに、ナデシコの予測通り、俺は生成することが出来た。ナデシコは上手く行かなかった。
「もちろんだ。いつでも」
「どこでも、ってね」
「じゃ、合図を出すヤツもいないし。最初の一撃は譲ってやるよ。それが、アタシに届いたら、開始の合図だ。魔力を練り上げな!なんなら初撃で決めちまってもいいだよ?さあ…来なよ!」
こちらどこまでも挑発してくる。すでに木槌に魔力を付与し、こちらを手招き。
ナデシコは片方の杖を地面に置いた。そして、二人で向かい合い、片手を合わせる。
ベンとリニーは言った、波長を合わせれば魔法を合わせて使えるらしい。故に、ナデシコの魔力を意識する。意識し認識する、自然と合わせることが出来た。二人で頷きを交わした。
「ははっ…!コイツは予想以上…!」
その日、初めてアーテナイは焦りの表情をした。木槌を持つ手に力が籠もっている。
そのことが、すぐに分かった。認知出来る範囲が広がったような感覚。観覧席で、息を飲むベンとリニーの気配さえ感じた。
集中状態、その状態を維持しながらナデシコの前に跪き、短い杖を地面に突き立てる。
ナデシコは、一歩下がり肩幅より少し広めに足を開き、付与を施した杖は両手持ち指の付け根でしっかりと握り、上半身下半身の脱力は完璧に出来ている。
「『ストーンボール』」
杖の先に7cm程の魔力の結晶、いやボールが現れる。中心は密度が高く、周辺は低いイメージ。
「「「………はぁ?」」」
別々の場所から三つの声が重なった。
「行くわよ!バッター大きく振りかぶって………プレイボォール!」
「「「はぁああああ!?!?」」」
ナデシコのフルスイング。理想的なフォームだ。杖はボールの真芯を正確に捉え、鈍い音とともに飛翔する。打球は困惑顔のアーテナイに迫る。とっさのことだったが、そこはさすがのアーテナイ、柄による防御が間に合った。
そして、もともとベンとリニーの連携でヒビの入ってた、柄の下部は砕けた。




