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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ  作者: 沢クリム


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17/20

17.その伝説を語るもの

ドワーフたちは、一度地面に落とした盾を構え、じりじりと後退していく。先ほどまで打ち合っていた双方が、だ。

石像もじりじりと前進する。もちろん、ひとりでに動いている訳でなく、恐らく台車のように何かに乗せているのだろう。後ろから、多くのドワーフたちが押して動かしている。

やがて、石像は闘技場中心に運ばれる。後ろから押していた人たちは、右手入り口から出ていった。

後退していたドワーフたちも、ある一定区画からは下がらなくなった。盾を構えたまま、先ほどのぶつかり合いが始まる前の、盾に斧を打ち付ける威嚇のような行為を行っている。だが、その音は揃っておらず、あまりに弱々しく聞こえる。やがて、その威嚇も止まった。

そんな時だった、左手側から、7人のドワーフが入って来た。男が3人、女4人。身の丈ほどの大槌を持っている。堂々した足取りで入場してくる。

盾を構えたドワーフたちは、その7人に道を譲るように左右に分かれた。そのドワーフに一瞥もくれず、7人のドワーフは石像に前に立つ。大槌を石像に向ける。


「「「ウォォオオオオオオオオオ!!!!」」」


先ほどの野太い叫びより何倍も大きい。それもそのはず、闘技場内のドワーフ達だけではない。観客席のドワーフ、人間、獣人の区別なく、叫びを上げている。

盾を構えたドワーフたちは石像を囲む、大槌を掲げたドワーフは石像に飛びかかる。

石像の四肢に、その大槌を叩き込む。金属音が響くと同時に、その四肢がもげ飛ばされる。

飛ばされた手足は盾のドワーフに受け止められる。


「…石割くさびね」

「あらかじめ石に穴を開け、そこに楔を打ち込んでおいて石を割るあれか?」

それにしては派手に吹き飛んでいる気がする。


「そう。よく見て、一度割って、それからブッ飛ばしている」

「一目でよく分かったな」

「特撮で年間何回も採石場を見たたら、その作業にも興味が出てちょっと調べたのよ」

日アサを入り口にどこまで行ってんだ。


そんな話をしている内に、石像の解体が進む。主要な身体の部分や、大きなパーツが砕かれると歓声が上がる。

客席にも飛びそうなものだが、それは盾持ちが防いでいる。やがて、首が折れて頭が地面に転がる。

その前に七人が集合する。そして、全員で大槌掲げ、石像の黒い竜の頭を打ち付ける。

かくして竜頭は砕け、拍手と歓声が広がる。

闘技場内のドワーフ達は全員で、観覧席へ向けて一礼する。より拍手は大きくなり、退場していくドワーフたちの背に惜しみなく送られた。俺とナデシコもその拍手の一部を担うのだった。


ドワーフたちが退場した後、席に着く、俺もナデシコも一息に飲み物を飲み干した。


「…すごかったわね。生の迫力っていうか」

「ああ、周りの熱にも当てられた。しかし、何かの歴史再現、だったのか?」

闘技場全体も、今は歓談の時間のようだ。今、会場では砕かれた石の撤去作業が行われている。


「素直に解釈するなら……争う人々、そのさなか現れる黒い化け物、追い詰められる」

「そして、黒い化け物は七人の英雄に討たれました。とさ」

「でしょうね。でもって、私たちは最近、七に関連する単語を聞いたわね」

「七天将星…」


俺たちは椅子に身体を預け雑談を行っていた。そんな時、近くに人の気配を感じた。区画の外から声が聞こえる。


「失礼します。おかわりはいかがですか?」

「あ、お願いします」

「私もー」


水差しを持った長身のエルフだった。案内した人とは違う。きっちりとした服装、物腰柔らかで、表情もにこやか。エルフもこういうところで働くのか、などど検討違いのことを考えいると、水差しから果実水を注ぎ終わる。

コップを手に取る。手に冷たさを感じる、果実水が冷えていた。


「火照った身体にはこちらの方がよろしいかと、魔法は少々得意なもので。……実は先ほどのお二人の話が、聞こえてしまいました。よろしければ、先ほどの出し物について解説いたしましょうか?」


俺たちはコップを置いて、頷いた。椅子もその語り手の方へ向けた。


「では、簡潔に。

 かつて、すべての種族は互いに奪い、憎み合いの渦中にありました。

 魔物は今ほど、凶暴ではなく、人類の最大の脅威は人類だったのです。

 資源を奪い合い、土地を奪い合う。戦いは絶えず、人の命は容易く取引の材料となり、平和の祈りが届くことはありませんでした。

 その状況に追い打ちを掛けるように、黒き竜は現れました。

 大陸全土の魔物を狂乱させるその竜は、すべての種族の脅威となったのです。

 ようやく、種族を超えて手を取り合えた時には、ほとんどの主要都市は壊滅。

 そして、黒き竜を討伐すべく種族を超えた同盟軍が結成されたのです。

 人間、獣人、ドワーフ、エルフ。軍人、傭兵、義勇兵、そして神官。王族、貴族、平民。その全てが区別無く力を結集させます。

 魔物を蹴散らすその進軍は、やがて竜の膝元まで達しました。

 しかし、黒き竜の恐ろしさは、その本体こそにあったのです。

 爪を振るえば大地を割り、翼の羽ばたきで空を割る、その息吹は海の怒濤のごとく人々を押し流したのです。

 ですが、人類も無力ではありませんでした。人間の剣士が爪を割り、獣人はその翼を落とし、ドワーフの盾が、エルフの魔法が、息吹を防ぎます。

 それでも、散っていく同胞、その魂に報いんと攻勢は続いたのです。

 熾烈を極めたその戦いに、終止符を打ったのが『七天将星』。

 かくして彼らは女神の加護を得て人々の元に帰還し、それが今日の平和へと繋がったのです。

 …ご静聴ありがとうございました。」


「おお、みんなで掴んだ勝利!熱いじゃない」

「ああ、まさに伝説。そして、平和になったってのが最高だな」

優雅な一礼にナデシコと俺で拍手。淀みない語りだった。解説慣れしてるのかも知れない。


「おっと、補足を忘れておりました。『七天将星』が得た女神の加護は不老不死。お二人がお会いになった『赤のアーテナイ』。彼女こそがその七人の内の一人。まぁ、不老と言っても、たった500年程前の話ですよ」


「「…………はぁ!?」」


最後にとんでもない情報ブッ込んで来やがったコイツ!?

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