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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ  作者: 沢クリム


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16/20

16.その席で見るものは

街の中心、闘技場に近づくほどに、男ドワーフの比率が高くなった。

武器を帯びた旅装の一団も目に付くようになった。


「いやぁ、しかし、あのBランクあがりたて二人組が当選とはね」

「せめて5人のフルパーティなら、見応えがあったんだが。ま、一番の運が無けりゃ、間違って死ぬかもだしな」

「若い冒険者が戦うことには意義があるぞい。アーテナイ様を語り継ぐことが出来るからの」

「お、じいさん。前回の閉山祭にも居たのか。どうだった?」

「うむ…少し喉が渇いたのう」

「このジジイ……。おーい!酒だ!こっちに一杯、いや二杯持ってきてくれ!」


闘技場前の出張酒場、現代風に言えばビアガーデンだろうか、には人だかりが出来ている。

大声で話しているものだから、話がよく聞こえてくる。


「下馬評は散々ね。でも、馬鹿にした感じがしないのは意外かも」

「誰が挑んでも一緒、と言わんばかりだな」


しかし、話の中に違和感がある。じいさんが前回の祭りを知ってるのはいい、しかし語り継ぐとはどういう意味だろう。もしかしたらドワーフは人間とかなり寿命が違うのかもしれない。


「おう!よく来たな!見物か?闘技場の中に入るにはチケットが要るぞ!」

「これでいいかしら?」

「な!こいつは!?」


アイゼンさんに声量が似たドワーフのおじさんに、『関係者特別招待券』を渡した後の反応は劇的だった。

すぐさま、案内の係の人、人間の男性、が来たと思ったら、あっという間に専用通路を使って、最前列の屋根付き観覧席へご案内だ。

そこから見える光景は、まるでコロッセオ、楕円形の闘技場に俺たちの居る一部を除いて野晒しの観覧席。広さは陸上競技場程、6m程の壁に囲われており、見物席はそこを見下ろす形だ。

他にも関係者席に案内された人が居るようが、いくつかの席ごとに布で区切られ互いに顔を合わせることはないようだ。

俺たちが案内されたのは、そんな区画の一つ。肘掛け付きの革張りの椅子が二つ、間に小さなテーブルがある。映画館のプレミアムシートも使ったことが無い俺は恐縮しっぱなしだ。


「飲み物はいかがいたしますか?無論、無料ですのでご安心を」

「ミルクでも貰おうかしら」

「承知しました」

「あるの!?」


居るんだ牛、いや山羊とかかもしれないが。反射的にネタにはしったナデシコも驚いていた。俺も聞かれたので、無難にお酒以外のおすすめを注文した。

他の関係者席にも飲み物が届けられているようだ。サービスに対する謝礼、チップはないようで安心した。そんな他の席の気配を探っていると、飲み物が来た。


「こちら、『柑橘の果実水』と『ミルク』になります。なにか有りましたら通路に居ますのでお声かけください」

「……なんのミルクかしら?これ」

「色は白だな」

「青とか緑だったらさすがに手が出せなかったわ」


先ほどの案内人が、飲み物を置いて離れてから、ナデシコは杯をとって観察し始めた。

コップ一つ取っても、細かな装飾が入っている。これ壊したら、手持ちじゃ足りないんじゃないか?

そう言えば、俺のも柑橘とは言われたが、みかんもレモンもライムも含まれる言葉だ。

一口飲む、酸味もあるが甘くて飲みやすい。口の中に広がる香りが爽やかだ。柚が近いかもしれない。

さすが、おすすめの一品。

一方、ナデシコは一口飲んで一言。その眉間にはしわ。


「…慣れない味ね。不味くはないわ、不味くわ」

「交換するか?これ結構いけるぞ」

「ううん。次はそれにする」


旅先で微妙なものを味わう。ある意味、旅の醍醐味を満喫しているのかもしれない。

ナデシコが牛乳を飲み干し、2杯目の飲み物が届いた頃、他の屋外観覧席も埋まったことに気付いた。


「お、何か始まるみたいだぞ」

「そうね。ん?人数が多いわね…」


男ドワーフたちだ。左右それぞれの門から十数人、金属鎧に身を包んで円形の盾と片手斧を手にしている。

そして、それぞれ一列に並び相対する。その整列が終わる頃、会場は静寂に包まれていた。


「「ウォオオオオオオオオ!!」」


双方から、野太い叫び声が上がる。そして、同時に始まる足踏み、威嚇するように盾に斧を打ち付ける。

ラグビーで見られるハカを、より凶悪にしたようなそれは、次の展開を想起させる。

双方同時に走り出し盾を構えて激突する。先ほどの打ち付けが、威嚇に過ぎないことがよく分かった。

音の重みが違う、ドワーフの重い身体を盾ごと打ち付けるそれは、同時多発的な交通事故にも似ている。

その正面衝突が終わってから間を置かず、今度は片方が斧を構え、もう片方が盾を構える。

魔力を感じた。双方、打ち付ける斧に、受ける盾に、魔力が籠もっている。

再びの激突、鈍い音が響く、盾を持った側は数メートルの後退。立場逆転、盾を持った側が斧を構え、斧を構えた側が盾を構える。そのやりとりが、数度。

そこでやっと気付いた。これは演目であると。合戦など見たことがない、だが先ほどまで俺はまるで戦場に来たような錯覚さえしていた。

そして、双方、盾を地面に落として斧を構えた。いけない、反射的に叫びそうになっていた。俺とナデシコは、気付くと椅子から立ち上がっている。

だがそんな時、右手入り口から何かが闘技場に入ってきた。


石像だ。高さは入場口ギリギリで5m程、全長は10m、大きく黒い異形、四足で長い首、何かを模して作られたそれは、不気味な存在感を放っていた。

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