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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ  作者: 沢クリム


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15/19

15.この世界の二人

「やあ、災難だったね、キミたち」

「ま、お陰で私たちは助かったのだけど」


後ろから声を掛けられた。視線を寄越せば、後ろに立って居たのはどちらも暗い茶髪の男と明るい茶髪の女。年の頃は顔立ちから俺たちと同じか少し上、身長は俺たちの方が高い、二人とも旅装といった格好だ。目に付くのは男が手にした身長ほどの杖、金属の装飾がされていて、言うなれば魔法の杖のように見える。


「もしかしてベンジャリン?」「ブルックミン?」

「ベンジャ『ミン』だ」「ブルック『リン』よ。わざとでしょ、あなた達」


ノリがいい二人でよかった。ブルックリンは嘆息して言葉を続けた。


「ホント、あのアーテナイ様にわざわざ名乗らせるわ、いきなりケンカを売るような真似をするわ。とんだクソ度胸ね。ナデシ『ト』?」

「あら、ごめんなさい。厄介なのに眼を付けられた原因が目の前にあったものだから、ついね。ナデシコよ」

「君もその口か?ヤマ『コ』」

「さてな。アンタらが想像できないような場所から来たから、礼儀がなってないのさ。ヤマトだ」

「社交界ならいざ知らず、祭りの日に無作法を咎める無粋者ではない。改めて、ボクはBランク冒険者のベンジャミンさ。ベンで構わない」

「…同じく、ブルックリンよ。ま、リニーでいいわ」


社交界ねぇ。もしかして、お貴族様だったりするのだろうか。Bランク冒険者という単語も気になる。


「いったい何をすれば、あんなのと因縁が出来るのよ。もしかして、アンタらも誰かと間違えられたとか?」

「…あなた達、本当に想像できない様な場所から来たみたいね。いいわ、教えてあげる」

渋々と言った感じだったが、リニーは解説始めた。時々ベンの補足も入った。


赤のアーテナイ。ドワーフの町、鍛冶と鉱山の都市リオスの代表。

異常に発達した肉体で男ばかりのドワーフの戦士の長を勤め、手にした槌にて大地を割る。

その槌は戦いのみで無く、鍛冶場で振るえば剣は魔剣変わり、あらゆる武器を生み出す。

曰くドワーフの炉の化身、故に『赤』、その力を疑う者は居ないが、本人は惜しみなく力を振るう。

数十年に一度の閉山祭、祭りの初日に厳正なる抽選によって戦う相手を決め、街の中央の闘技場で戦う。

条件はBランク以上の1パーティ。今回は幸運にも2人組のBランクペアが見事当選。その名はベンとリニー。

戦えること自体が栄誉だが、勝利すれば……


「願いが叶う?」

「それは、勝利するくらいの力と信念があれば願いも叶っちゃう、みたいな?」

「最後まで聞きなさいな。その財力、人脈で叶えられることを何でも一つ、ってことよ」

「過去に勝利した人間のAランクパーティは、全員に武器を作って貰ったそうだよ。しかもその武器は、Sランクに上がって引退するまで、壊れることはなかったとか」

「それは凄まじいな。……で、俺たちに何の用だったんだ?」

「間違えられた二人をほっとけなかった、とは考えないのね」

「そりゃね。『お陰で私たちは助かった』んでしょ?」


リニーは苦い表情。ベンは苦笑しながら話を続ける。


「アーテナイ様は戦う前に一度相手に顔見せするらしい。…あれ程の人だ。もし、顔を合わせれば力加減を間違えることはない。だから、初見で侮られること、それが欲しかった。だから助かったよ。その上で、彼女に気に入られたキミたちに聞きたい。キミたちだったらどう戦う?」


答える義理はない、と答えるにはいろいろと話を聞きすぎた。ナデシコはこちらを見て頷いた。ヤマトナデシコ作戦参謀としての意見を言え、ってことね。


「初撃に後先考えず全力全開。長期戦は自力の差が出るし、最初に様子を見るには相手の経歴も気質も凶暴すぎる」

「私も同意見。というか、アンタ達もそれしかないって思ってたんじゃない?」

「その通りよ。ただ、違う視点も欲しかったのよ」

「話せてよかった。ちなみにその『関係者特別招待券』、闘技場の最前列のペア券だから、大硬貨1枚分の価値はある。闘技場の周りで裕福そうな商人にでも話しかけるのがおすすめさ。ヤマト」

「やめとく、人の挑戦を見るのは嫌いじゃないんだ。ベン」

「アンタ達と話す前なら、間違いなく売ってたけどね。派手にやりなさい。リニー」

「言われるまでもないわ。じゃあね。ナデシコ」


二人はアーテナイと同じ方向へ歩いて行った。


「何を願うのか聞きそびれたわね」

「あの二人が勝てば分かるだろ。けどまぁ…」


勝てないだろう。とは思ったが、言葉には出さなかった。


「そう言えば、『シチテンショウセイ』だっけ?その解説がなかったわね」

「七天将星。言葉通り解釈するなら、七人の将軍。説明しなかったのか、説明するまでもないことだったのか。この世界の前提知識みたいなもの、なのかね?」

「あの名乗り、自分の名前よりむしろ『七天将星』の部分に重さがあったわ。ま、勘なんだけど」


ナデシコの直感だからこそ、なにかありそうな気がした。


「…さて、ヤマトくん、ここで問題です。私が宝箱や採集ポイントより優先することは、何でしょうか?」

「面白そうな時限イベント」

「正解。正解者に闘技場への道案内の権利をあげましょう」


ナデシコは俺に手を差し出している。俺はその手を取り、握って隣に並んだ。


「これは豪華景品だな。行こうぜ。正直、最強ドワーフさんからは逃げ一択だが、さすがに興味が勝つ」

「見てやろうじゃない。挑戦者も含めてね」


ナデシコは握り返してくる。歩調は若干早い。案内の権利とはなんだったのか。

だから俺は、その手をしっかり握るのだった。


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