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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ  作者: 沢クリム


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14/19

14.赤熱との出会い

先ほどの猫と分かれた後、二人で大通りに出た。左胸に先ほどのピンバッチを付けている。

通りの交通量は、思ったほどではない。ドワーフの街と聞いて居たが、通りには人間が多い。ドワーフがちらほら、女性ドワーフが多い気がする。身長は男ドワーフと同じくらいだが髭は生えてない。さらに少なく獣人、猫型は見当たらない。というか、先ほどの猫は獣に近い外観だったが、道を歩くのは獣の耳が生えた人間といった感じだ。ナデシコは、何やら「…ケモ度1」と小さく呟いていた。

それから、一人の旅装の男が目に付いた。大きな背嚢を背負い、体型の隠れるローブ、木製の杖をついている。白に近い金髪、緑の眼に顔には薄くしわが刻まれている。今は土産物を売るドワーフの店主と話している。その初老の男性に目に付いた理由は耳だ。その耳は大きく、尖っている。これまでも各種族のイメージから外れなかったことから、エルフに間違いないだろう。典型的なイメージでは、ドワーフと仲が悪いイメージがあったが、終始にこやかだ。さすがに会話の内容までは分からないが。

ジロジロ見るのも失礼なので、そうそうに目を外して、辺りを見回す。

ナデシコも同様に周りを見回していた。先ほど猫からお上りさんなんてからかわれたが、今の俺たちこそまさにそれだろう。


「大通りを一周りしたら、いつものように街の外れから脇道しらみつぶしで、取り逃しないように全部回るってことでいい?」

「宝箱や採集ポイントはないぞ?」


まるでRPG的な町歩きだ。実は中学時代、周辺の駅の街は一通り制覇している。俺もナデシコも方向感覚はいい方なので、今まで迷子になった経験はない。むしろ、行く先々で迷子を助けていた。


「さっきみたいな面白い猫が居るかもでしょ?」

「かもな。俺の返答はいつも通りだよ。存分に連れ回してくれ。まぁ、いきなり走り出すのは止めてくれよな?」

「だったらしっかり握ってなさいよね」


ナデシコは笑って俺の手を握ろうとして…止まった。

どうした?と問いかけようとして、俺も気付く。何か、来る。


二人で街の中央の方へ身体を向ける。その直後、その方向から小さなざわめきが広がる。

人々は道を端により、ドワーフ達は姿勢を正す。海を割るモーゼのごとく道が二つに割れる。

その中心から歩いてくるのは、かなりのくせ毛の赤髪金眼の女性だ。

身長は2mほどだろうか、かなりの大柄だがそれより存在感の方が強い。革製の上下を身につけ、胸元は大胆に露出している。

人間かとも思ったが、腕の太さや足の太さ、筋肉の付き方がドワーフに似通ってる。

炎が歩いてきた。直感的にそう思った。

その女性が、乱暴に片手をあげた。


「気にすんじゃないよ。祭りを楽しみな、野郎共」


大きくないのに通る声だ。周りはその声を合図にしたように祭りの喧噪を取り戻した。

俺たちだけは、未だ動けずにいた。その女性が近くまで来る。そのまま通り過ぎるのをただ待っていた。


「ん?……ほう、杖を持った男。そして、その魔力……」

「……なによ」


金色の眼が俺たちを捉える。ナデシコはその目を見返す。その手は握りしめていた。


「くくっ、いやぁ…いい度胸だねぇ。お陰で楽しくなりそうだ」

「どういう意味だ?」


俺はナデシコの前に出た。その嗜虐的で楽しげな視線を受け止めた。手は平手、まだ木刀に手は掛けない。


「楽しまんきゃ損さ。そうだろ?ベンジャミン、ブルックリン」

「「いや、誰だよ」」


一気に力が抜けた。人違いかよ。


「ん?ベンジャミン?」

「違う」

「ブルックリン?」

「違うわ」

「……ブルックリン、ベンジャミン?」

「「逆でもない」」

「私はナデシコ!ただの祭りの見物客よ!」

「同じくヤマト。二人そろって今日初めて街に来たんだ」

「……あー、すまん。勘違いだ」


炎の様だ、と例えたが今の様子は残り火だった。つまり意気消沈。


「なんかないかねぇ。財布は置いて来ちまったし、酒は人間、あんま喜ばないし……お、これでいいか」


なにやらガサゴソとポケットや上着の内側を探していたが、一枚の紙を出して、差し出してきた。


「こいつをやるよ、情けないとこ見せちまった詫びさ」

「なによこれ」

「『関係者特別招待券』?」


何気なく読み上げたが知らない文字だ。そう言えば、出店の看板の意味も分かることに今更気付いた。


「もうそろそろ時間だからアタシは行くよ」

「ちょっと!アンタは結局誰よ!」


来た道を帰ろうとした女性にナデシコが声を掛ける。その声を掛けかれた当人は目を見開く、驚きは一瞬、再び楽しげにその口元は弧を描く。


七天将星しちてんしょうせい、赤のアーテナイ」


たじろいでしまいそうな熱は幻覚。幻視したのは、燃えさかる炉の中のような赤熱。

ナデシコは拳を握り、俺は木刀の柄を握りしめていた。


「いい反応だねぇ。……またな、ヤマトとナデシコ。覚といてやるよ」


アーテナイは去って行く。その背が人混みで見えなくなるまで力を抜くことが出来なかった。


これが、俺達にとって初めての七天将星しちてんしょうせいとの出会いだった。

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