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異世界快進劇 破顔一蹴 ヤマトナデシコ  作者: 沢クリム


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11/20

11.その力をどう使うのか

予想通り、ナデシコの服選びは時間が掛かっている。

自明の理だ。母と姉が、ちょっと服を物色してくる、と言った後は、携帯端末の充電残量の戦いになることをよく知っている。


俺は着替えを済ませ、木刀を持って裏庭へ来ていた。カレブさんに一言掛けたが、聞いていたかどうか怪しい。ベージュのボタンTシャツに黒いズボン、茶色のベストが今の装備だ。ボタンや留め具がプラスチックではなく、金属製なのがよく知る服との違いだった。


木刀を構えて静かに思考に没頭する。熊との対峙の感覚を思い出す。

この世界に来たときからあった空気に関する違和感、熊が纏っていた靄、熊の素材に対してドワーフたちの言っていた単語。

この世界には、魔力がある。

もちろん、抗えない魅力、という意味ではなくて、魔法の力という意味での魔力だ。

魔法、今までそれはフィクションの中の単語だった。

確かにナデシコの怪力、それに近い俺にもある力、それについて考える機会はあった。

もし、それに元の世界で名前がついていないだけで、確かにある力であり、この世界ではごく一般的なものだとしたら。


「……魔力よ」


昨日、いや文字通りの意味で朝飯前の俺でも、今の俺、木刀を構えてこんなことを呟く俺を笑っただろう。

身体の中央、心臓の辺りから熱さをを感じる。それは、胴体に行き渡り、脳天、手足の末端まで満ちた。


「…いや、まだだ」

木刀へ意識を伸ばす。目を瞑れば知覚できるのは手のひら押し返す堅さだけ。


否、武器は自分の一部である。


魔力を、木刀の切っ先まで伸ばす。目を開けるとそこには、靄のように曖昧なものではない、薄い膜のようなものが全身と木刀を覆っている。

今までより、ふと視界の端で木から葉が落ちるのが見えた、目算3m先。

出来ると思った。葉の前に移動する、葉を見据え、木刀で薙ぐ。一瞬でそれらは完了した。

そして、足下には二つに分かれた木の葉が落ちていた。


息を吐き、力を抜いた、魔力の膜は熊を倒した時のように霧散はせず、俺の体内へ納められた。

新たな力に目覚めた、という訳ではなかった。

これまで無意識的に使っていたものを自覚して出来るようになった、というだけ。

しかし、仕組み理屈が理解出来たなら、応用発展も出来るはずだ。


この世界は安全ではない。魔物という脅威、今まで出会った人は皆いい人ばかりだったが、人の悪意もあるだろう。

守りたい。ナデシコのことを思うと、自然とその単語が出てくる。瞼の裏にはこれまでの日々がある。

泣き顔は見たくない、笑顔を見るのが好きだ。そのために、そのためなら…。

木刀を握る手に力が籠もる。


「あ!おにーちゃん居たよ!」

「まぁ、ここに居たのね。ほら、ナデシコちゃん、こっちこっち」

「う、うん。ヤマト、どう?この格好…」

アメリアちゃんとシャーロットさんに手をひかれ、ナデシコがやってくる。

珍しく、自信の無い様子だ。


「そうだな…。控えめにフリルのついた白いシャツに、それを引き締める赤い留め紐の黒いボディス、ベージュのロングスカート。構成としては以上だが、スカートは短めにしてブーツを見せるようにアレンジしているな。おそらく、ボディスの紐の色もリボンに合わせて変えたとみる。既存のリボンやブーツのデザインを生かした、いい組み合わせだ」

「……よく分かってるじゃない。見たままの情報をどうも」

周囲の温度が下がった気がした。

後ろで、シャーロットさんは片手を頭に手を当て、天を仰いでいる。


「あー、その…俺の感想は、だな。その服、よく似合ってる。かわいいと、思うぞ。服がじゃなくて、その服を着た、ナデシコが…」

「そ、そう?ま、その感想は分かっていたけどねむしろ最初に言わなかったとこは減点だし今後ますますの健闘をお祈りもうしあげるわ」

何を言ってるか、よく分からないほどの早口でまくし立てられたが、好評なようでよかった。

後ろで、シャーロットさんはアメリアちゃんとハイタッチをしていた。



俺は知るよしもないことだが、女児母女子の3人でこんな会話があったらしい。


「おねーちゃん!かわいいー!いーなー!」

「ありがとう、アメリアちゃん。でも良かったのかしら、この服、肌触りもいいし、いい服でしょう」

「ウチで一番の質の生地よ!…まぁ、作ったはいいものの、客層にかすりもしなかったから、今日まであったんだけど…」

「いや、なんで作ったのよ」

「いい感じの生地があって、針子の血が騒いじゃったの。私が着るにはかわい過ぎるし、アメリアには少し早かったしね。きっとナデシコちゃんのためにこの服はあったのね。うん、よく似合ってるわ」

「うん!ばっちり!にあってるよ、おねぇちゃん」

「二人ともありがとうね。……あいつもこれくらい素直に褒めてくれれば、いいんだけど」

「えーっ、ぜったいおにぃちゃんも、かわいーっていうよ?」

「きっとそうね。もう、本当にかわいいわね!ナデシコちゃん!」

「……シャーロットさん、それ服のこと言ってないでしょ?」

「…さぁ、ヤマトくんのところに行きましょー」

「いこー!」

「ちょ、引っ張らないでよ!?」

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