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2.5話 メイドの仕事

 私はメイドでございます。でも、最近は――正直に申し上げると、辞めたいなぁと思ってしまうことが多いのです。自分で言うのもなんですが、私はけっこう優秀なほうだと信じております。


 生まれはもう没落したとはいえ子爵家。礼儀作法も一通り仕込まれましたし、学問もそれなりに。魔法に関しても、通えていたころは成績上位を保っていたのです。


 お仕えしている伯爵家は、給金も十分で、仕事量以上に恵まれています。正直、超がつく優良なお屋敷です。


 仕事内容といえば――文句ひとつ言わない、静かで聞き分けのよろしいセイラス様のお世話と、旦那様へのご報告、それから一応の警備。警備といっても、寝るときに魔力を垂れ流しておけば済む程度。伯爵家にはちゃんと専門の護衛もいらっしゃいますから。


 なのにどうして辞めたいと思ってしまうのか……理由はただひとつ。勤務中が、地獄みたいに寂しいからです。お声を出せないセイラス様のお世話をするのは覚悟のうえでしたけれど、館内の静けさはやっぱり胸に堪えます。


 お顔を合わせるのは、厳格な伯爵様と無表情なセイラス様だけ。そんな環境で三年も……正直、辛すぎます!


 もちろん私は、セイラス様を笑わせたいとずっと努力してきました。でも、返ってくるのは「母に会いたい」という願いばかり。あとはずっと、悲しみを抱えたままの沈んだお顔。


 そんなある夏の日。あまりの暑さに、溶けてしまいそうになりました。ふと「冷たい水を浴びたら、セイラス様のお顔も変わるのでは?」と思いついてしまったのです。思い立ったらすぐ行動――それが私の信条。


 すぐさま水を汲み、庭で遠くを眺めていらしたセイラス様へ、えいっとかけてみました。すると……あのセイラス様が、気持ちよさそうに表情をゆるめられたのです!びっくりして、でも嬉しくて。あぁ、こんなに簡単に笑ってくださるなら、辞めたいなんて口にすべきじゃなかったって思いました。


「もっと」と言わんばかりの顔をされたので、調子に乗ってさらに水をかけてしまいました。……可愛い、可愛いすぎます!


 やがて疲れてうとうとし始められたので、急いでお着替えを済ませてベッドへ。可愛らしく眠るその姿を見つめながら、私は思いました。


 ――そういえば、ずっと弟が欲しかったんだっけ。だったら、セイラス様にとって私は、しっかり頼れるお姉ちゃんにならなくちゃ。


 そっと微笑んで、眠るセイラス様にそう誓いました。

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