第1話 学校での不可解な出来事
今日は、2025年5月15日火曜日、世界にとって忘れられない大事件が起きてから5年が経過した日である。テレビやインターネットではその時起こってしまった惨状やそれに対抗するべく発足された世界侵略防衛機構(WIPO)の最新情報などを報道している。
それは俺山石達にとっても忘れられない大事件だ。なんせその大事件の5日後に両親を亡くしてしまったのだから。俺はいつも通り早起きし、毎日欠かさず継続しているトレーニングを行った後朝食を済ませ学校の支度を終えた後玄関にやってきた。
「行ってきます」
もう誰もいない家に向かって挨拶をした後学校へ向かった。やはり今日は大事件から5年経った日であるので街中は騒がしい。そうして10分ほど歩き学校へと到着した。
「おはよう」
俺はいつも通り教室の後ろから入ると友達である清宮近重が挨拶をしてきた。
「おはよう”ちか”昨日は気遣いありかとな」
「それは”たつる”の体調を心配したからであって…」
「いや、心配してくれたからだいぶ心が軽くなった」
それは俺にとっても本当の話であった。あのままずっとトレーニングをしていたら体が持たなかった可能性もある。そして俺は自分の席に着席すると前からもう一人の友達が話してきた。
「本当に大丈夫?顔色悪いよ」
「大丈夫だよ。顔色悪いのは朝少しあの大事件の事を考えていたからだ」
「ならいいけど」
俺の体について心配してきたのは黒銀舞。高校の同級生で中学の頃からの友達だ。
「そうだ”たつる”最近謎の光や物体の目撃情報がインターネット上に出回っているけど知ってる?」
「うーん 聞いたことはあるかな」
舞にはそう言ったけど本当は知っている。俺はこの目撃情報を聞いてから、暇を見つけては調査をしているからだ。もしかしたら侵略者の仕業ではないかということを疑って。ただそれを舞に知られるわけにはいかないのだ。舞にはこっちの世界に来てほしくない。そう願っている。
「何の仕業かな?もしかしてエイリアン?」
「それはないと思うけどな」
二人で他愛のない雑談をしていたら教室の前の扉から担任の先生が入ってきた。
「静かにしろ~。HR始めるぞ~」
そうしてまたいつも通りの毎日がやってくる。少なくともこの時まではそう思っていた。
今日の体育の時間はソフトボールの時間だ。俺たち高校2年生は3グループに分かれて体育の授業をしている。俺は昔から野球をやっていてさらに今は毎日トレーニングをしているためソフトボールはかなり得意のほうだ。
「すげ~近重と達」
「そりゃすげぇだろ。だってあのWIPOに所属している生徒だからよぉ」
ベンチに入っている生徒からも称賛の声が聞こえてくる。俺は打順は1番で守備はショートを守っている。試合中何球かごろの打球は飛んできたが、ようやくフライの打球が飛んできた。ボールを捕るために空を見上げ、落下地点に入りボールを捕ろうとした瞬間俺の目には黒い何かが見えた。それは不気味な塊だった。そしてそれは俺にとって絶対に見たくないものであった。たぶんその時の俺は茫然していたと思う。
「おい山石!大丈夫か!頭にボールが当たっているぞ!」
先生が心配するのも当然の話だ。なんせ俺は頭にボールが当たったまま何もせず茫然としていたのだから。そして当然同じクラスの生徒も大騒ぎしていた。
「おい山石を保健室に連れてけ」
「はい!」
「体育の授業は中断だ。みんな片付けの支度をしてくれ」
体育の先生が何かを指示していた。しかし俺は周りの声が全く聞こえないほど茫然としていた。徐々に正気に戻った瞬間体中警報が鳴り響くような焦燥感に覆われた。そして叫んだ
「侵略者の侵攻だぁぁぁー!今すぐ全員校舎に避難してくれ。そして、全員し終えたら規定通りに保護プログラムを起動してくれ」
俺は侵略者が襲来してきたら発動しなければならない警告ブザーを鳴らしながら無我夢中に叫んだ。そしてその達の叫びにこの場にいる全員に衝撃が走った。そしてその数秒後多くの悲鳴に変わった。
「ぎゃぁー!!」
「やだやだやだぁ!」
「死にたくない死にたくない…」
生徒たちが様々な悲鳴をあげながら校舎に向かって全力疾走する。
「先生俺達はWIPOの一等兵です緊急事態に限っては戦闘することを許可されています。今この場で学校の皆を守れるのは俺たち二人しかいません」
「先生僕らはここに残ります。ですので学校の皆は先生に任せます」
「ああ分かった。くれぐれも無理をするんじゃないよ」
そう言い残し先生は恐怖で気絶している生徒たちを引き上げて校舎に避難していった。
「ねぇ”たつる”あれは本当に侵略者なの?」
「ああ、間違いない。あれは俺が5年前に見た黒い塊とほとんど一致している」
正確には少し小さくなったようだが黒い塊は5年前の侵略に使われていたものと同じだ。
「でもなんで攻撃して来ない?」
「おそらく調査用だ。俺たちが攻撃態勢に入るまでは攻撃して来ないと思う」
あくまであの塊は調査用だ。誰かが刺激を与えない限りは発動しない。しかしあの塊は俺の記憶だと高い攻撃力を持っているはずだ。
(だとすると何で攻撃して来ないんだ。何か様子がおかしい。)
「どう?全員避難完了した?」
「ああ、このレーダーによると俺達二人を除いて保護プログラム専用のシェルターに入ったみたいだ」
この特殊なレーダーはシェルターにどのくらいの人が避難を完了したかを示すものである。
「ひとまずはよかったぁ。これでようやく戦えるね」
「だな」
WIPOの規定には二等兵以上の隊員は、侵略者が攻撃して来ない限りは周りの住民の避難が完了して本部から戦闘許可が下りたら戦える仕組みだ。
「それで本部からの許可は下りたのか?」
「うん、そして他の地域でも同じ現象が起きているみたい。その地域ではもう隊員が戦闘を始めているみたいだよ」
ということは黒い塊は何か所にも散らばっていることになる。
(どういうことだ…侵略者は何をしようとしている?いや、今はどうでもいいことだ)
「”ちか”戦えるか?」
「うん、もちろん」
そして常に緊急時のために左ポケットに収納しているWIPO専用の装着装置を取り出す。これは戦闘特別装着装置(BASD)と呼ばれるもので大きさはスマートフォンぐらいの大きさである。この装置を起動すると全身は特別な戦闘服に包まれる。またこの装置に登録した自分専用の武器や防具を取り出すことができる。この装置の一番左上のボタンを押すことでこの装置は起動する。そして二人がボタンを押すと自分専用の戦闘服に包まれていく。達は全体的に軽い服装で防御は手薄く見えるが急所だけはしっかり防具で固められている。一方近重は全身きっちりとした防具で固められていて重そうだ。そして達は専用の片手剣、近重は硬くて大きな盾を所持している。
「まずは、敵がどう動くか見極める。俺が一発攻撃を仕掛けてみるから、そこでもし敵が攻撃を仕掛けてくるようだったら敵に向かって”アレ”を使ってヘイトを溜めといてくれ。その隙に俺が別の場所から攻撃を仕掛ける」
「わかった、僕に防御は任せていいから思い切って戦って」
そうして二人は黒い塊に対して動き出した。
世界侵略防衛機構(WIPO)日本支部の支部長である坂下治正は頭を悩ませていた。数分前数々の部隊から侵略者の仕業と見られる黒い塊の目撃情報そしてそれに伴って周辺住民の避難の完了が相続いていたからだ。すると支部長室に隊員との連絡を目的とするチームの役員がやってきた。
「支部長、戦闘の許可が欲しいとの要請があるようですがどうしましょう」
それはとても悩ましい問題だった。戦闘の許可を出し実際に交戦してしまうとメディアへの対応、世界各支部や世界各国への報告、その他いろいろな問題が発生するからだ。そして黒い塊は攻撃して来ないためこちらから攻撃すると何か大きな問題が発生するかもしれない。かといってもしかしたら黒い塊のほうから攻撃を仕掛けてくる可能性もある。何より早く倒さないと一般住民が危ない目に合うかもしれないと判断し決断した。
「二等兵以上の隊員は地域住民の避難が全員完了次第戦闘を許可すると伝えろ。そしてその黒い塊の討伐が完了次第本部に連絡するように伝えてくれ。残りの指示は黒い塊の討伐が完了次第行う。それと、もし黒い塊の報告が新しくみつかるようであったら付近の二等兵以上の隊員を向かわせるように手配してくれ」
「は!」
部屋にやってきた役人は支部長の命令に返事をした後即時に移動を開始した。
(それにしても黒い塊かぁ…今回出現している黒い塊は5年前の大事件で出てきた黒い塊とものすごく似ているんだよなぁ。侵略者どもがまた侵略して来るというのかぁ…研究チームに調査させて万全の対策をするとしますか。)
そうして坂下は専用のモニターから目を離し、席から立ち上がり支部長室を出ていった。まだまだ坂下の忙しい日々は始まったばかりである。
文法表現のミスがあったらすいません。
次回初戦闘です。




