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甘味戦線 -SWEET FRONT-  作者: トシユキ
新たなる局面
84/133

第86話「海軍の攻撃 —」

昭和20年(1945年)4月1日 朝・南九州沖 米機動部隊


太平洋上を進む米第58任務部隊。

通信士が朗報を届けた。


「第21爆撃集団より戦果報告到着!──宮崎滑走路上に爆煙、炎上機体確認。爆弾作動良好」


ミッチャー中将は無言で頷いた。


「──よし。空軍は仕事を終えたらしい。次は我々の出番だ」


すぐさま命令が発せられた。


「全艦、攻撃隊発艦用意!」


午前0800時・発艦


甲板上の艦載機群が次々とカタパルト射出されていく。

F6Fヘルキャット、SB2Cヘルダイバー、TBFアヴェンジャー──総計120機余の大編隊が九州へ向かった。



宮崎飛行場上空


梶山少将は司令所屋上で双眼鏡を構えた。

今度は低空に現れた艦載機群を睨み上げる。


「海軍機……いよいよ本格的な戦闘行動だな…」


司令部は緊張に包まれる。

応急整備班が必死の報告を上げてくる。


「滑走路復旧、未完了! 迎撃不可能!」


滑走路は依然として綿あめに埋もれ、発進不能状態が続いていた。



低空投弾開始


F6F編隊は高度200〜300mで接近し、TBF爆撃機が次々に爆弾を投下していく。


だが日本側から見えたのは、異様な光景だった。


「爆弾が……転がっている!?」


投下された爆弾は、空中で爆発せず、着地と同時にバウンドし、そのまま滑走路を回転しながら突進していく。

まるで巨大な鉄球が転がるように、滑走路上を横切っていった。


「避けろッ!」


整備兵たちが駆け込んで退避する中、転がった爆弾のいくつかが誘導路端の駐機中の戦闘機群に突入。

一式戦・零戦が弾き飛ばされ、格納庫前で爆発ではなく押し潰されるように破壊されていく。


結果的に複数の傷ついた機体が火炎に包まれた。


「なんだこれは……!?」


副官が叫ぶが、梶山少将は冷静に見続けた。


(なぜ爆発させないんだ!?)



艦隊通信室


上空の偵察機から打電が届く。


「──滑走路上、敵航空機複数炎上。火煙多数。迎撃反応なし」


ミッチャー中将は満足げに頷いた。


「命中良好。我々は順調だ」


参謀が低く付け加える。


「敵航空戦力は既に消耗著しき状態と推測されます」


ミッチャーは短く応じた。


「ならば──次も同様に叩く」


だが、転がりながら滑走路を這う異様な爆弾群の挙動など、艦上の誰も知る由はなかった。

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