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甘味戦線 -SWEET FRONT-  作者: トシユキ
新たなる局面
83/133

第85話「ルメイの自信 —」

昭和20年(1945年)3月31日 サイパン島・第21爆撃集団司令部


サイパン司令部の作戦室。

ルメイ少将の前に、最新の航空偵察写真が並べられていた。


「──こちらが宮崎飛行場直後の撮影分であります」


偵察班のフォスター大尉が報告する。

写真には、滑走路中央付近から複数の煙柱が立ち上がっているのが鮮明に映っていた。


「爆煙確認。中心線及び誘導路上に複数の火災地点──炎上機体3〜4機を確認」


ルメイは写真に目を細めた。


「滑走路自体の破砕は?」


「それは……現時点では確認されておりません。ただし、敵航空機群への着弾効果は明瞭と判断いたします」


パーカー中佐が補足する。


「敵の戦闘機が誘導路上に集中駐機中であった模様。その複数が着弾により炎上。火煙は十分高高度からも視認できたはずです」


さらに、爆撃手からの任務報告記録も読み上げられた。


「投下後、煙柱視認。爆発音確認済み──」


ルメイの口元がわずかに歪んだ。

だが、以前のような苛立ちではなく、久々の安堵が滲んでいた。


「──つまりだ」


低く、ゆっくりと言葉を置いた。


「新型爆弾は作動し、敵の航空兵力を直接破壊した──そういうことだな」


参謀たちが一斉に頷く。


「まさにその通りであります」


パーカー中佐が続けた。


「他の九州各地目標でも、熊本・鹿児島方面で同様の爆撃後に炎上箇所を確認。全体として爆弾は予定通り炸裂、戦果ありと総括できます」


「被撃墜は?」


「全出撃機中、宮崎方面で2機失墜。その他は地域は無事帰還」


ルメイは椅子をゆっくりと揺らし、深く背を預けた。


「……やっと──爆弾が爆発し始めた。結構だ。これで空軍も胸を張って報告できる」


しばし沈黙の後、静かに付け加えた。


「火が出れば、それが破壊だ。」


参謀たちも黙って頷いた。

だが、この確信こそが──

「認識の深い齟齬」を決定的に固め始めていた。

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