第45話「名古屋司令部 驚愕の戦果報告」
1945年3月12日 午前1時――
名古屋陸軍防空司令部 作戦室
「撃墜報告続々上昇中!!」
通信室内は熱気と緊張に包まれていた。
「第8高射群、目視撃墜11機!」
「第2対空機銃陣地、機銃射撃による撃墜確認2機!」
「南区桜通り、さらに墜落地点2件発生!」
参謀長・藤崎大佐が地図盤上に次々と印を打っていく。
「合計撃墜15機…いや、16機に到達!」
だが、その戦果に陶酔しきる者はほとんどいなかった。
むしろ異様な緊張感が幕僚全体を支配していた。
「敵は――自ら高度を下げた。」
副官が静かに分析する。
「明らかに命中精度を極限まで高め、破壊範囲を最大化せんとした意図と存じます。」
藤崎は重々しく頷いた。
「そうだ。狙いは、帝都に果たせなかった市街地壊滅だ。」
その時、現地各部隊から次々と続報が入った。
「市内延焼報告――該当例ごく少数、局地的に小規模出火のみ!」
「消火隊による鎮火完了との報も多し!」
「市民負傷者報告――墜落機炎上による負傷数件、自軍高射砲・機銃弾落下破片による流血多数!」
藤崎は眉をひそめた。
「……つまり、敵の爆撃そのものによる破壊・炎上は依然確認できず、と?」
「はっ。墜落機体による直接被害を除き、市街地への実害は極めて限定的です。」
幕僚の一人が低く唸った。
「高射弾の破片落下が、むしろ民間負傷を増やしているとは……皮肉なことですな。」
作戦室内に妙な重苦しさが満ちていく。
昨日の東京と同じ現象――いや、それ以上に説明のつかぬ奇妙さが、またも目前に現れつつあった。
藤崎は長く沈黙したのち、低く呟いた。
「敵は我らを滅ぼそうと高度を落とした。……だが、破壊はなされず、奇妙な物質だけが撒かれ続けている。」
「これは一体――何なのだ?」
誰も答えを出せないまま、
不気味な戦争の夜が更けていった。




