第135話「跳弾する」
昭和20年4月6日 午後2時51分
沖縄沖・大和艦橋
「敵斉射接近――左舷側面へ命中コース多数!」
測距員の叫びが艦橋を突き抜けた。
砲撃線を維持しながら、損傷した右舷主機を考慮し伊藤は艦を左へ僅かに回頭させていた。
その回頭角に対して、米戦艦群の16インチ砲弾群が唸りを上げて突入してきた。
ズバァァァァァン――!!
連続して左舷装甲帯へ命中する6発の衝撃。
巨大な水柱と共に砲弾は装甲帯を叩き、鋼板に斜角をつけて跳ね返された。
ゴオォォォン――ンッ!!
艦内に衝撃波が響き渡り、振動が艦橋を揺らす。
だが――爆発音はない。
観測士が叫ぶ。
「全弾跳弾! 貫通なし! 被害軽微!」
艦橋内の士官たちが驚愕しながらも安堵の息を吐いた。
永井参謀長が低く唸った。
「さすがは大和……水平装甲、弾性傾斜充分に活きております。」
その間も砲術科は冷静に照準を続けていた。
「照準修正完了――ニュージャージー級、第一砲塔狙点捕捉!」
伊藤は迷わず命じる。
「撃て。」
ズオォォォォン――――!!!
46サンチ砲9門が再び海面を震わせた。
咆哮と閃光が春空を裂き、砲弾は鋭く一直線に走っていった。
同時刻
米戦艦群・ニュージャージー艦橋
「弾着接近――!」
観測員が叫んだ瞬間、第一砲塔正面を巨大な光球が襲った。
ズガァァァァン――!!!
爆炎が砲塔上部を包み、巨大な金属塊が宙を舞う。
「第一砲塔直撃!!」
艦橋内が激震に包まれ、機械科より続報が飛ぶ。
「砲塔旋回機構損壊、砲身ごと破断! 爆風により周辺構造破損!」
副官マクリーが絶句した。
「――なんという威力だ………!」
リー提督は低く呻いた。
「怪物だ。だが――なお接近を続ける。撃ち続けろ!」
米戦艦群は損傷しながらも、なおも前進を続けた。
砲撃線は極限まで詰められ、史上空前の戦艦死闘はさらに苛烈さを増していく――。




