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甘味戦線 -SWEET FRONT-  作者: トシユキ
雌雄を決する
129/133

第134話「惰性進撃 ―」

昭和20年4月6日 午後2時47分

沖縄沖・日本連合艦隊 旗艦 大和 艦橋


轟音は止まることなく続いていた。

互いの戦艦群が延々と巨弾を叩き付け合い、海面はまるで水柱の森のように荒れ狂っていた。


「右舷機関系統より異常信号!」

「三番主軸、振動急上昇! オイル圧低下!」


整備科士官の絶叫が艦橋に響く。


「被弾の水中衝撃が軸線を歪ませたか……」


永井参謀長が呻くように呟く。


「三番主軸停止せよ!」

「機関速力低下――惰性進撃維持!」


伊藤は即座に指示を飛ばす。


「速力現在20ノット……なお減速傾向。」


しかし艦首はまだ敵戦艦群へまっすぐ向けられていた。

このまま敵砲列まで距離を詰める。


「距離――25,000ヤード!」


観測員が叫ぶ。


永井が息を詰めた。


「司令、ここが限界です! 最大射撃効率距離!です。やりましょう」


伊藤は静かに頷く。


「全艦一斉回答!全砲門での射撃体勢へ移行する!」


「……全門、集中照準。一斉射撃用意。」


測距盤・方位盤が一斉に作動を始める。


急速な左舷への回頭により、艦全体に激しい横揺れが発生する。


射撃指揮所では幾人もの砲術士官が秒刻みで諸元を詰め続けた。


「方位固定、揺動収束良好!」

「主砲全門、装填完了!いま!」


永井が振り返る。


「全砲門、目標敵先頭艦、照準よーしっ!」


伊藤は短く命じた。


「撃て――」


ズオォォォォォン――――!!!


大和の46サンチ9門が一斉に火を噴いた。


主砲塔全てが前方最大仰角で火焔を噴き上げ、衝撃波が甲板上を走り抜ける。

艦体は巨大な咆哮の余波で船体ごと震えた。


――史上最大、全門同時斉射。


観測員が叫ぶ。


「弾道良好! 砲身健全!」


46サンチ徹甲弾9発が空を裂き、5隻の米戦艦群へと放たれていった――


日本海海戦以来、初にして最後となる艦隊砲戦の極限射撃が、いま世界の海を震わせた。

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