第131話「戦艘決戦第一斉射 」
昭和20年4月6日 午後2時38分
沖縄沖・大和艦橋
「着弾観測開始!」
測距員の叫びが響く。
海面を這うように飛翔していった両軍の巨砲弾は、ついに互いの頭上へと到達し始めた。
まずは米戦艦群の36門一斉射弾。
遠方、濃紺の海面が盛り上がり、巨大な水柱が次々に立ち昇る。
ズバァァァァァン――――!!
「右舷千三百ヤード、左舷八百ヤード、次弾接近中!」
観測員が次々報告する。
その瞬間、前方三番砲塔脇の海面が爆ぜた。
ズゴォォォォン――!!!
艦橋が大きく揺れる。
飛沫が霧のように吹き込んできた。
「至近弾! 100ヤード以内!」
永井参謀長が怒鳴る。
伊藤は眉一つ動かさず冷静に叫んだ。
「補正完了! 第二斉射、撃て!」
ドォォォォン――!!!
大和46サンチ前部6門が再び火を噴く。
巨砲の咆哮は甲板上の乗員たちの肺を振動させ、海面へ新たな衝撃波を叩きつけた。
続けて長門、榛名も次々に発砲。
連合艦隊の3隻が全門斉射を繰り返していく。
一方、米戦艦群でも次弾が迫る。
「敵第二斉射来ます!」
「全艦、回避運動継続!」
アイオワ、ニュージャージー、サウスダコタ――
6隻は砲撃姿勢を保ちつつ、わずかな針路修正を重ねる。
ズガァァァァン――!!!
その時、大和右舷中央部の甲板で巨大な衝撃が走った。
「命中! だが……」
砲術長が驚愕する。
砲弾は爆発せず、そのまま巨大な飴色の塊となって甲板を転がっていた。
まるで褐色に光る巨大キャラメルの塊――
轟音と共に船体をえぐるが、炸裂しない異様さが乗員を混乱させた。
「爆発せんぞ……!」
「な、何だこれは――」
転がりながら木製甲板の一部を削り、跳ねた。砲弾はその質量で、ついには三番副砲塔脇の高角砲座を粉砕。
機銃座の兵員が飛ばされ、火花が散った。
「機銃座損壊! 高角砲一基破壊!」
整備科将校が叫ぶ。
「被害班、急行せよ!」
永井が指示を飛ばす。
同時に――
後方の長門が水柱に包まれる。艦中央の高角砲座を直撃、砲身が僅かに異音を発した。
曲がった砲身を確認した士官が叫ぶ。
「引き金にてをかけるな!」
しかし、
一瞬遅く、高角砲弾は発射され、直後――
**バァンッ!!**と砲身内部で炸裂。
砲身が破断し、上空に向けて裂け飛ぶ。
「左舷高角砲座に直弾と思われる!!損害知らせ―!!」
大和艦橋には刻一刻情報がまいこんでくる。
「指令、長門が被弾したようです。」
伊藤は苦々しく呻く。
「長門、榛名ではいかん…我が大和をもっと前面に押し出せ、撃ち負けるぞ!!」
しかし、艦隊は止まらぬ。
砲術科将校が続く。
「各砲塔、残余砲門照準修正済み――続射可能!」
伊藤は静かに命じた。
「撃て。」
ズオオォォォン――!!!
再び46サンチが火を噴く。
連合艦隊は圧倒的不利な砲数のまま、なおも巨砲を撃ち返していた。
海を七色に染め、水柱が荒れ狂っていた。




