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元最強聖女の保育士さんは結婚したい

作者: 交差羽

こんにちは交差羽です。気軽に読める短編を投稿させて頂きました。よろしくお願いします。


「私はお金が大好きだ!!」


結婚相手に求めるとしたらまずは経済力である。

正直、過去の冒険で何度お金に困ったことか。一番最初、王様が50ゴールドとヒノキの棒しか渡さなかったときは、マジでこんな国滅べばいいと思った。


そんな私は、現在この日本で保育士として絶賛就労中である。

保育士と聞いて皆さんはどんなことを思い浮かべるだろうか。笑顔あふれる素敵な職場?子供と一緒にキャッキャウフフと楽しい職場?


いやいや、保育園とは戦場である。


子供達は縦横無尽に駆けまわり、お昼寝の時間に泣く子が居ればあっという間に多重奏。

油断をすれば服に落書きをされ、しまいにはカマキリやセミの抜け殻なんかも付けられる。


あいつらはモンスターだ!


しかし一方で、純粋な瞳で庇護欲をそそってくるからタチが悪い。

この子達がゴブリンみたいな奴らだったら殴って終わりに出来るのに。

くそぅ。可愛いは正義か!?


だが、いかに大変な戦場であろうとも、私はそこに身を投じる。

髪を留め、頬を叩いて気合を入れる。


「よし、行きますか!」


右手に秘密兵器のおもちゃを持っていざ出陣。



夕方、最後の子供を保護者に預け終え、休憩室で一息つく。

今日は大変だった。あまりに疲れたので私は両手を投げ出して机の上に突っ伏す。


「はぁぁ~、疲れた~~」

「はい、サラさんお疲れ様」


先輩保育士の美奈さんが麦茶入りのコップを私の前に置く。キンキンに冷えてて美味しそうだ。思わずビールを想像してしまう、ゴクリ。


「せんぱ~い、私もうダメです」

「はいはい、今日も一日頑張りました」

「でしょ、褒めて褒めて」

「いい子いい子」


そう言って、美奈先輩は苦笑しながら私の頭を撫でてくれる。癒される~。


「もう私先輩と結婚します」

「はいはい、いつもありがと。でも私既婚者だから」


そう言った先輩の指には銀色に光る指輪が付けられている。いいな~。


「それでもいいです。重婚です~」


美奈先輩はさらに苦笑を深め、


「馬鹿言ってないで、まったく。それに今日は婚活パーティに参加するんでしょ?もしかしたらいい相手が見つかるかもしれないわよ」


そうだった、私は今日もう一つの戦場に赴くのだった。まったく、元聖女は大忙しだ。

私は、飛び起きると、美奈先輩にお礼を言って、園を飛び出す。最後に先輩が


「変な男の人には引っかからないようにね~」


と言って見送ってくれた。



夜、ここはおしゃれなバー。

そこには多種多様な料理が並べられ、たくさんのお酒も置かれている。

そして、始まる決戦の場。

ここが正念場。正直、魔王城前より緊張する。

倒すのは綺麗に着飾ったライバル達、掴む宝は世界平和より価値がある。いざ戦いへ。私は気合を入れて一歩を踏み出した。


一人目。物腰柔らかな30代後半。身に着けている物は高級ブランド。なかなかの優良物件。しかし、自慢話が多い。これはあれだ、ナルシスト剣士タイプ。付き合ったらマウント取ってくる奴だ。却下。


二人目。少しおどおどしている30代前半。服のセンスはいまいちか。身だしなみにあまりこだわってない感じがする。でも自分の好きな分野になると饒舌。これは魔法使いタイプだな。趣味が合えば楽しいが私とは合わないみたい。却下。


三人目。余裕がある40代。会社経営者で話も面白い。趣味は知恵の輪らしい。うーん、あり寄りのありか。でも、何か遊んでいる感じがする。あ、そうだ、この人盗賊に似てるんだ。急に怪しく見えてきた。だめだ、却下。


四人目。20代後半。年齢は私と同じぐらい。イケメンで品もいい。清潔感もあるし、仕事も上場企業だ。今日の一番当たり。でも顔にそこはかとない苦労感がある。この人はずばり勇者タイプだ。いい人だけど、結婚しても苦労をたくさん背負ってきそう。迷うが却下。


そうして何人かとお話をしたが、収穫なく婚活パーティーは終わってしまった。




帰り道、


「あ~早く私も結婚したい」


裏路地を歩きながら私は呟く。

残念ながら、今回も理想の男性と出会えなかった。

もういっそのこと、ハードルを下げるか?いや、私にも譲れないものがある。

では自分で育ててみるか?それもいいかもしれない。


最近幼稚園に来た男の子が、


「女性にモテるためにはどうすればいいですか?」


って聞いてきたから。


「男は経済力よ。お金があれば大抵のことは出来るわ。」


と力説したら、少し引いた様子を見せていた。

あれは自分でもやりすぎたと思う。ごめんなさい、先生少し迷走してるんです。

やっぱり、いい人を探そう。数撃てば当たるかもしれない。

そう決意を新たにしていると



「お前、聖女だな?」



不意に後ろから声がかかる。暗がりの中、滲み出るように現れたそいつは、異形の存在だった。

ゴテゴテした魔導士風の格好に青い肌。頭の両側からは闘牛のような角が生えている。そして何より異常なのは、額に三つ目の眼があることだ。


ああ、敵か。


私は意識を切り替える。頭の後ろのバレッタを外し、長い髪を下す。


「フハハハ、ついに見つけたぞ我が宿敵め。まさかこんな世界に逃げ延びているとは。私から逃げられると思うなよ。死ね!」


そう言って、こちらに両手を向け魔法を放とうとする。私はゆったりとそれを目で追い、


「究極魔ほ・・」

「遅い」


一瞬でそいつの懐に飛び込むと、握りこぶしで胸を貫いた。


「がはっ」


そいつは訳が分からないと言った表情でこちらを見る。その顔は驚愕と恐怖で彩られている。

最期に何か言おうとしたようだが、そいつはそのまま黒い霧になって消えていった。


私は髪を留めなおすと


「あ~あ、どっかにお金持ちでカッコ良くて優しい男の人はいないかな~」


そう言って、トートバッグをクルクルしながらビールを飲み直しに行くのだった。



まずはこの話を読んでいただいた読者の方にお礼申し上げます。よくよく考えたら聖女様の魔王を倒す旅も大変です。僕も良く某RPGで金欠になり困っていました。さて、この話は『中二病スキルで全てを救う』のスピンオフになります。同じ日に別のスピンオフ短編も投稿しますのでもしよければ読んでください。

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