番外編短編・お妃選びの後
王は星羅を妃として迎える事に決めた。その直後のこと。
「星羅姫は、どんどん美しくなっています。元々素材も良いですが、化粧を施すとまるで別人ですね。星のような輝きです」
王は宦官一人からここ数日の星羅の状況を報告を受けていた。婚儀の日程も決まったが、その前に星羅にはたくさんの化粧品やご馳走を送り、準備をさせることに決めた。
宦官の報告によると、星羅は化粧品やご馳走には全く興味を示さないようだが、素朴な田舎の巫女から、かなり美しくなっているという事で、今から会うのが楽しみで仕方がない。もっとも婚儀を終えるまでは何回も対面できる訳でもないが。
「また、王様。星羅姫の出生も調べました」
「は? 何だと?」
「実はですね……」
宦官が耳打ちしてきた。星羅は「神の民」の血を引く娘で、影でその神を信仰していたと言う。星羅の侍女の桃子も同じ民族では無いかという事だった。
「どうしますか、王様。後宮内ではあの民族が影で世界を操っているという陰謀説が絶えません。あの娘を後宮入りさせていいんですか?」
「そうか」
しばらく考える。昔、「神の民」がこの陽翔国に辿りつき、迫害されながらも、何とか生き延びているという歴史は知っていたが。
そうは言っても彼らの持つ技術は高く、この大きく豪華な後宮も、「神の民」の血を引く男たちに作らせたとも祖父から聞いていた。噂は酷いものも多いが、実際のところは、何の害もない。むしろその技術についてはこの国の発展の為に欲しいぐらいだった。
「まあ、いいだろう」
「いいんですかー?」
「浜野には言うな。あいつに言うと面倒だ。自分の事を有能で俺の右腕だと勘違いしてるんだよ、あいつ」
「どうしましょうか。浜野は無能ですし、隣国と戦争を企んでいる噂も」
「そうか。厄介なものだ。まあ、引き続き浜野の監視も頼む」
「承知いたしました」
厄介な浜野の事を考えると、王の胃が痛むが、星羅の背景などどうでも良くなってきた。
「王様。こんなご馳走は食べられません。化粧品もちょっとでいいんです」
そして星羅の様子を見に行くと、明らかに豪華な後宮の生活に戸惑っていた。そんな所が可愛いらしく、星羅の背景などはもっとどうでも良くなってしまった。